※※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
はじめに
台湾戦争は、朝鮮戦争の比ではありません。北朝鮮は核武装こそしていますが、米韓同盟がしっかり押さえているのです。中国は世界第2位の経済大国になります。人民解放軍は質量ともに域内随一です。
中国軍が台湾に進行すれば、台湾の真横にある日本は間違いなく巻き込まれるでしょう。
本書は、日本戦略研究フォーラムにおいて2022年8月に行われた「台湾有事シミュレーション」の成果をもとに、自衛隊最高幹部の岩田清文元陸上幕僚長、武居智久元海上幕僚長、尾上定正元航空自衛隊補給本部長、兼原信克元国家安全保障局が忌憚なく語りつくしたものになります。
書籍情報
君たち、中国に勝てるのか
自衛隊最高幹部が語る日米同盟VS.中国
第1刷 2023年1月15日
発行者 皆川豪志
発行 (株)産経新聞出版
発売 日本興業新聞社
帯写真 共同通信社
印刷・製本 (株)シナノ
ISBN 978-4-8191-1421-9
総ページ数 281p
岩田清文
元陸将、陸上幕僚長。
米陸軍指揮幕僚大学にて学び、2013年に第34代陸上幕僚長に就任した人物です。2016年に退官しています。
武居智久
元海将、航空自衛隊補給本部長。現在、三波工業株式会社特別顧問。
2014年に第32代海上幕僚長に就任、2016年に退官しました。2017年には、米国海軍大学教授兼米国海軍作戦部長特別インターナショナルフェローを担っています。
尾上定正
元空将、航空自衛隊補給本部長。現在APIシニアフェロー。
ハーバード大学ケネディ行政大学院修士、米国防総合大学・国家戦略修士。
航空自衛隊での役職や航空自衛隊幹部学校長などを歴任し、2017年に退官しました。2019年7月~2021年6月までバーバード大学アジアセンター上席フェロー。
兼原信克
81年に外務省に入省。フランス国立行政学院(ENA)で研修、ブリュッセル、ニューヨーク、ワシントン、ソウルなどで在外勤務。2012年から外政担当に展示、2014年~2019年に国家安全保障局次長を務めました。
産経セレクト
アメリカの優先課題は中国
バイデン政権の国家防衛戦略もトランプ前政権と同じ流れにあり、国益上、一番の優先課題は中国だということです。
アメリカの国民6割以上が「米軍をウクライナに派兵するべきでない」という世論にも、対処する必要がありました。
また、米軍の基礎的国益や安全保障戦略に沿った形をとるために、中国正面の防衛力は確保しておかなければなりません。
日本にとっては結果的に良い方向へ進みました。中国が台湾を占領すれば、日本は戦争に巻き込まれます。アメリカも対中抑止に積極的に働かなくてはならなくなるでしょう。
2022年4月16日の時点でアメリカは国内備蓄の1/3に当たる約7000発の対戦車ミサイル「ジャベリン」をウクライナに送っています。この数生産には、米国内の防衛産業基盤の制約から時間がかかると見積もられているのです。ウクライナで戦争が続くうちは、各国の兵器備蓄の提供は続くでしょう。
台湾有事に仕える装備品は、ウクライナに提供する分だけ、少なくなる意味を持ちます。
シーレーンの重要性
シーレーン上から見ても、台湾を取られると日本の国益は大きく影響します。
日本は生存と繁栄を海に依存している典型的な海洋国家になります。海上通路(シーレーン)が安全に使用できることは死活的に重要なのです。
台湾を支配下に置くことができれば、南シナ海の北のエントランス(バシー海峡)を自由に開け閉めできるようになります。当然、南側のマラッカ・シンガポール海峡のエントランスを使うにも不便になるのです。
南シナ海は世界のハブ海峡となっており、世界の成長センターです。そして将来、世界の人口の5割以上がインド太平洋から生まれ、その中心となるのが南シナ海となります。
この海域の安全が脅かされると、世界中が不便になるのです。
つまり、台湾は知性戦略上の要となります。
日本への戦術核攻撃にアメリカは動くのか
「非戦略核戦力のギャップを埋めるため、米海軍は核トマホークを持つべきではないか」とワシントンDCのシンクタンクに尋ねてみました。
回答は、業務と費用を増やすわけにはいかないことと、戦術核ミサイルの開発と同時に拡大核抑止力の再保証を日米で機会がある度に行って欲しいとのことです。
事実、ドイツでは「アメリカは勝手に核兵器を撃つのではないか」「撃つべきときに撃たないのではないか」と国民の間で不安視する声があります。
日本では核の保証について問題が起きなかったのは、被爆国という背景があるからでしょう。しかし、台湾有事が現実味を帯びて考え始める人もいます。
アメリカは、まず戦術核で反撃することはありません。通常兵器で対応することになるでしょう。日本が中国に核を使用された場合、やられ損になる可能性があります。
今回のウクライナ戦争でも、ロシア側に対し「戦術核を使った場合、通常戦力で、ウクライナ国内のロシア軍と黒海艦隊を撲滅する」とけん制しているのです。
2027年7月、南シナ海危機発生シナリオ
2027年、習近平は台湾総統選挙を国内の政権基盤を安定させる好機と捉え、政治、経済、軍事などあらゆる分野で台湾に対する圧力を強め始めました。
2027年7月、中国は南シナ海のスプラトリー諸島パローラ島の北東沖合約100キロの国際水域に海警法に基づく海上臨時警戒区を設定します。統合軍事演習とミサイル実写試験をするようになるのです。
フィリピン領を侵害するため国際仲裁判所の裁定違反にあたると、中国に要請するも演習を強行し続けます。中国海軍の船舶に変わり、中国海警の公船と中国漁船になりすました船が付近の海域で操業されるでしょう。
2022年7月22日、中国漁船の漁民になりすました武装兵がフィリピンのパグアサ島に上陸し、駐留している比沿岸警備隊が武器を使用して、これを排除。海上では比海軍の哨戒艦と中国海警船舶との間で銃撃戦が勃発しました。
そして、中国漁民に偽装した兵士がフィリピンの警察隊から発砲され死傷する様子を、YoutubeなどのSNSで流されて、世論が操作されるようになります。
中国側は、自国の安全保持のためと理由をつけ、海軍を海域に浮かべるようになり、その後の事態は膠着しているようです。
2027年台湾有事シナリオ(想定)
感想
サイト管理人
アメリカがウクライナに提供したミサイル兵器は、ウクライナ国内を射程距離範囲内を想定したものになっています。アメリカにとっては威力の高い兵器ではありませんが、対ロシアにはキーウ周辺まで進軍していた軍を壊滅・撤退を余儀なくされるほどの技術で出来ています。アメリカ軍の兵士を使わず、それでいて国防費も少ししか出していないことに本書では触れられていません。なぜなら、この本は中国の脅威について書かなければならないからです。
台湾と中国を繋ぐトンネル作りなども気になるところですが、海峡の風が強そうな場所で150kmの橋やトンネルが本当に造れるのか疑問です。たしかに、橋梁は技術的にも理論的にも建設は不可能ではありません。橋がつくれるほどの土台を持ってこれるか、維持できるかにかかってくるでしょう。大砲1つで壊れたら意味がありません。ここにお金と人をかけられるかどうかも微妙です。
中国の内陸事情にもあまり踏込んでいません。内陸の重要な拠点を制しながら、海域を占領していくのは厳しいはずです。事実、近隣国の内戦事情でシルクロードなるものを築けなかったりします。
あくまで、ネガティブシナリオに進んだ場合の、重要な視点について、警戒する点について、思慮を深めるといった本書になります。
けれども、起こるかもしれない不測の事態に備えておけば、最悪の事態を回避できることもあると思うのです。
台湾有事にピンとこない人などは、読んで1つの参考にしてみてはいかがでしょうか。
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