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目次
書籍情報
世界は経営でできている
発刊 2024年1月20日
ISBN 978-4-06-534644-0
総ページ数 216p
岩尾俊兵
慶應義塾大学商学部准教授。東京大学博士(経営学)。
KODANSHA
- はじめに:日常は経営でできている
- きみの〇〇を食べたい:日常に潜む悲喜劇
- そして誰もいなくなる:不都合で笑えない、ありふれた話
- 経営の耐えられない軽さ:誤った経営概念が不条理と不合理をもたらす
- やがて悲しき外来語:本書の使用法と注意点
- 祖にして野だが偽ではない:塗りつぶされる運命の熱血文
- 1 貧乏は経営でできている
- コーヒーを飲んだ蜘蛛の糸:均衡と調和の崩壊が貧乏をもたらす
- ライ麦ばかりでつまらない:不明確な目的がもたらす「貧乏の罠」
- 脱・堕落論:退屈しのぎは自分で創る
- 2 家庭は経営でできている
- 夫は判ってくれない:夫婦に母子関係を求める過ち
- 哀愁の彼方に:家制度崩壊後だからこそ必要な家庭経営
- 温情の海:価値創造で幸せな家庭を作る思考法
- 3 恋愛は経営でできている
- 魔の谷:理想の恋愛不可能性定理
- 恋愛胸算用:マッチングとクリエイティブの恋愛論
- 智人の愛:理想の相手ではなく理想の関係を求める
- 4 勉強は経営でできている
- 誰がために紙を貼る:注意喚起におけるグレシャムの法則
- 純粋勉強批判:理解一辺倒の罠、暗記一辺倒の罠
- 当世真面目気質:勉強における「つながり」と「ばらつき」の経営
- 5 虚栄は経営でできている
- 真猿的な、あまりに真猿的な:猿本能が生み出す虚勢合戦
- 大いなる誤算:マウンティングには敗北しかない確率論的理由
- 人間適格:尊敬の奪取から尊敬の創造へ
- 6 心労は経営でできている
- 五重の苦労:過干渉と心労の切っても切れない関係
- 緋文字い:現実世界に最適解は存在しない
- 耳栓と平和:心労回避のための刺激制限環境の構築
- 7 就活は経営でできている
- 俺たちに明日はない?:何のためのランキング、何のための就職
- 放蕩記:遅れてやってくる就活の悲劇
- 冷酷:就活業者がもたらす不条理
- 8 仕事は経営でできている
- J.T.C.:顧客不在の仕事は「運動」にすぎない
- 裸の王様組織:「制度的無能状態」という落とし穴
- 日はまた暮れる:すべての人が、知らず知らずのうちに無意味な仕事を作る
- 9 憤怒は経営でできている
- 癇癪大夫:怒りの裏にある感情を探る
- 百年の誤読:自分の勝手な想像が怒りの着火させる
- 一、二人の怒れる男:これからの時代はパワハラではなくロジハラ
- 10 健康は経営でできている
- 高血圧と偏見:欲しいのは塩分か、それとも味か
- 最期の喫煙者:健康格差と経済格差の連鎖を乗り越える
- 胃の名残り:健康をめぐる「過ぎたるは猶及ばざるが如し」
- 11 孤独は経営でできている
- 鬼電と共に去りぬ:孤独と不興の悪循環
- 若きノット・ウェル・テールの悩み:理解されたくないのに理解されたい矛盾
- いずこ独り子:他人を支配しても孤独は癒えない
- 12 老後は経営でできている
- D+1坂の殺人事件:相互尊敬の欠如が老後に悲劇をもたらす
- 注文の多い小料理店:「ゆとりある老後」を阻害する「目的と手段の転倒」
- 失われた敬老を求めて:思いやりの強制という発想を抜け出す視点
- 13 芸術は経営でできている
- 推敲伝:自分という第一の観客と拡大
- バイオレート:規則に従うか従わないか、それが問題だ
- 塑像の神様:芸術ネットワークの機能と逆機能
- 14 科学は経営でできている
- 嘔吐(寝不足):目的は研究成果か管理書類か
- 仮面の告発:科学者が陥るランキング至上主義の病
- 人間好奇心起源論:科学研究の近視眼が発生する合理的な理由
- 15 歴史は経営でできている
- 亡国志:本来の目的を忘れた国は亡びる
- 悪法の栄え:社会制度には耐用年数がある
- 古器:歴史の中の価値創造
- おわりに:人生は経営でできている
- 果たしていくべき約束:奪い合いから創り合いへの経営概念の再転換
- 経営・この劇的なるもの:人類史における無限の価値創造
- さらば経営嫌いのオトナ:日本社会を蝕む自己責任論の欺瞞
- 人本論:人間の本質は価値創造にある
紹介
経営学の概念を日常生活のさまざまな面に応用することで、新しい視点からの洞察を提供しています。私たちが日々直面する問題が、実は経営の問題であることを示唆し、それぞれの章で異なるテーマを探求しています。家庭、恋愛、勉強、仕事、健康、老後、芸術、科学、歴史など、生活のあらゆる側面を分析しています。
企業の利益追求や組織運営の枠を超えて広く解釈しています。彼にとって、経営は個人の生活選択、家庭の運営、社会的関係の構築、さらには自己実現の過程においても中心的な役割を果たします。この視点から、読者は自身の生活を「経営」というレンズを通して見直し、より良い意思決定を行うためのヒントを得ることができます。
経営学の枠を越えて、人生と社会を豊かにするための洞察を提供する一冊です。岩尾俊兵の鋭い分析とユニークな視点は、日常生活の中で遭遇するさまざまな問題への新たな解決策を見出すきっかけとなり得ます。読者はこの書籍を通じて、経営の原則を日常生活に応用することで、より充実した人生を送るための道を見つけることができるでしょう。
退屈しのぎは自分で創る
とある組織の末端構成員だった時、私は「どうやったら自分を心底嫌っている上司と仲良くなれるか」というテーマで、自分なりの問題解決ゲームを楽しんでいました。
このような工夫により、働かないことから始まる退屈と浪費による貧乏への螺旋階段を軌道修正できるかもしれません。お金、時間、知識、信頼の収支バランスを是正すれば、さらなる悲劇を避けることができるでしょう。
多くの人が、株の上がり下がりを的中させることができるという謎の先生の話を信じがちです。しかし、お金に困っておらず、情報を精査する時間があり、信頼できる人から知識を借りられる人たちは、洗脳状態から脱出することができるでしょう。
マッチングとクリエイティブの恋愛論
恋愛を始める際、私たちはよく相手に求める条件をリストアップします。しかし、条件を増やすほど、理想の相手を見つけることは難しくなります。
そこで、自分が絶対に譲れない点を明確にしたら、それと同じ数だけ、普通なら敬遠しそうな欠点も受け入れてみる、という方法があります。例えば、相手が外見も性格も理想的で、浮気の心配がないなら、働かない、体重が多め、足が臭いという点くらいは妥協する、というわけです。
重要なのは、相手を変えようとするのではなく、自分の理想を見直すことです。これにより、競争の激しい恋愛市場から離れ、もっと実現可能な幸せを見つけることができるでしょう。
重要なのは、相手を変えようとするのではなく、自分の理想を見直すことです。これにより、競争の激しい恋愛市場から離れ、もっと実現可能な幸せを見つけることができるでしょう。
知らず知らず無意味な仕事を作る
最安値での外注を追求することは、時に節約した経費よりも検索に費やした時間の給料が高くつくことがあります。
即座にマニュアルを作成することも一考の余地ありです。ワークフローの確認が完了し、仕事が終わったと早合点しやすいですが、改訂されたマニュアルにも関わらず実際の業務が創業当初から変わらない職場も少なくありません。
さらに、本来の業務に必要な時間が、増加する打ち合わせなどに取られてしまうこともあります。
このようにして、全速力で赤信号を無視し事故に遭遇するような悲喜劇は数えきれないほど存在します。
仕事に関わる全員が経営の成功や失敗に直接関与しており、この事実に気付くことで、多くの不条理や不合理を避けることができるでしょう。
ランキング至上主義の病
各研究分野の一流とされる国際学術雑誌は、その評価にふさわしい実績を有しています。これらの雑誌に研究が掲載されることは、世界中の研究者間での議論を促し、科学的発見を共有する上で非常に効果的です。
しかし、学術雑誌のランキングに過度に重きを置く現象は、大学受験の再現のようです。研究内容よりも、よりランキングが高い雑誌への掲載を目指し、掲載された雑誌のランキングを日々確認することに重点を置いてしまいます。
このような傾向は、科学行政が短期的な利益を追求し、化学の発展という本来の長期的な目標を犠牲にしている現れです。