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目次
書籍情報
世代とは何か
ティム・インゴルド
1948年イギリス・バークシャー州レディング生まれの人類学者。
亜紀書房
- まえがき
- 第1章 世代と生の再生
- 親子の関係
- 系譜学的モデル
- 相続と持続性
- 第2章 人の生涯をモデル化する
- 年を取り、子をなす
- 歴史の天使
- 釣鐘曲線
- 生と死
- 第3章 道を覚えていること
- 薄層で覆われた地面
- 過去からの通り道
- アーカイブからアナーカイブへ
- 憧れること
- 第4章 不確実性と可能性
- 呪いを解く
- くぐり抜けながらおこなう
- 注意の構造
- 驚愕と感嘆
- 第5章 喪失と絶滅
- 種のカタログ
- 子をなすことの系譜
- 人種と世代
- 保全と、ともに生きること
- 第6章 人類を再中心化する
- 人間を超えて、人間する
- 例外主義の告訴
- 進歩と持続可能性
- 群れとタービンについて
- 第7章 教育のやり方
- 学究的な姿勢
- 理性と応答可能性
- 新しい人々、古いやり方
- 知恵と好奇心
- 第8章 科学技術の後に
- STEMからSTEAMへ
- 科学とアーツ
- デジタル化と手先仕事
- 結び
書籍紹介
現代社会における「世代」という概念を深く掘り下げています。インゴルドは、人類学者として知られ、その独特な視点から私たちが直面する地球規模の問題に対する解決策を探っています。
古いやり方を見習う
現在進行中の環境危機や社会的な課題に対する新たな視点を提供します。インゴルドは、私たちが直面している巨大な危機を乗り越えるために、「古いやり方」に立ち戻るべきだと主張しています。ここで言う「古いやり方」とは、古代から受け継がれてきた知恵や価値観のことです。彼は、これらの知識が、科学や技術だけでは解決できない現代の問題に対する答えを提供する可能性を持っていると考えています。
未来を見据えた再定義
具体的な事例を通じて、世代間の関係性や継承されるべき知恵について考察しています。インゴルドは、親子関係や系譜学的モデルを通じて、世代という概念を再定義し、現代の教育や科学技術の進歩がもたらす影響についても議論します。
この本を読むと、未来を確かなものにするためには、過去の教訓を活用し、複数の世代が共に生き、共に働くことの重要性が理解されます。インゴルドは、私たちが祖先の道に沿って生きることで、子孫たちのための未来を築くことができると説いています。
人類学の視点から見た新しい希望の書であり、読者に次の世代への責任を問いかけます。現代の危機を前にして、私たちがどのように行動すべきか、そしてどのように学び続けるべきかについて深く考えさせられる一冊です。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
古いやり方
全ての人間は世界の中に産み落とされます。それは、この世界のやり方に親しんでいる者たちにとって、この新しい存在に世界を紹介することを意味します。
複数の世代が共存するおかげで、若者たちは年長者の物語を聞いて、彼らの技能を実践し、それらを水から人生の中で伝え、今度は来るべき世代のための模範的な実践者や語り手となる機会を十分に得ています。古老たちは、古いやり方に情愛深くよりかかることによって、若者が再生の道を歩み始めるための条件を作り出します。
しかし、今日ではこの連続性は破裂してしまっているのです。
若者を古い世界に引き入れる代わりに、新しい世界に向けて若者を準備させようとします。その準備は国家に移管されており、若者を引き入れるどころか洗脳することであるとも考えられます。
次世代が現役世代に今の優位性を奪うぞと脅かしているのを見て、教育の代理人たちは新しい秩序に従うよう若者たちに求めます。代理人たちは、門番として立ちはだかり、中に入るための条件を管理します。新しい世代としては、自分の足跡を残すための唯一の希望は、彼らのためにあらかじめ設計された未来を否定し、その代わりに別の未来を投影することにあります。
このような主張をするアーレントは、破滅だけを見ています。古い世代のあこがれが、次の世代に背負える場合にのみ、伝統的な希望を持てると考えているからです。