日本の気象観測と予想技術史/著者:古川武彦

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書籍情報

タイトル

日本の気象観測と予想技術史

発刊 2024年6月30日

ISBN 978-4-621-30922-3

総ページ数 152p

著者

古川武彦

出版

丸善出版

もくじ

  • 序章
  • 第1章 赤坂葵町・代官町時代(1875〜1923) ―気象観測の始まり
    • 1.1 「東京気象台」赤坂葵町に創立、気象観測の開始
    • 1.2  皇居北の丸 代官町に移転 —天気予報の開始
    • 1.3 「天気晴朗ナレドモ波高シ」
    • 1.4  測候技術官養成所の創立  ―「気象大学校」の前身
    • コラム① 日露戦争の頃の通信インフラ
  • 第2章 竹平町時代(1923〜1964) ―新しい観測技術と数値予報の幕開
    • 2.1 竹平町にて新しい観測技術と数値予報を開始
    • 2.2 ジェット気流の発見
    • 2.3 中央気象台、戦時体制へ
    • 2.4 国際社会への復帰と気象業務法の制定
    • 2.5  高層気象観測(ラジオゾンデ)の導入
    • 2.6  気象レーダーの開発と全国展開
    • 2.7 東洋初の電子計算機導入
    • 2.8 数値予報の幕開け
    • 2.9 「アメダス」の運用開始
    • コラム② 風船爆弾
    • コラム③ 岡田台長、軍部の要請を拒否(中央気象台の独立)
    • コラム④ 「第1回数値予報国際シンポジウム」と椿事
  • 第3章 気象観測の高度化と数値予報の進化(1964〜2021)
    • 3.1 気象庁大手町へ移転 ―「地上気象観測装置」の展開
    • 3.2 新しい数値予報の開始、ガイダンス
    • 3.3 富士山気象レーダーの建設
    • 3.4 気象衛星「ひまわり」の打ち上げ
    • 3.5 ウィンドプロファイラ ―空の「アメダス」の導入
    • 3.6 「雷監視システム(LIDEN)」の導入
    • 3.7 気象予報士の誕生
    • 3.8 アンサンブル予報の開始
    • 3.9 コンセンサス台風進路予報
    • 3.10 気象予測から見た海洋観測
    • コラム⑤ 「天気野郎」の面目躍如
    • コラム⑥ 「NCAR」留学
    • コラム⑦ アメリカ太平洋第7艦隊旗艦 ―大阪港へ
    • コラム⑧ 乙部道路
    • コラム⑨ 「ひまわり」と命名
  • 第4章 虎ノ門時代(2021〜) —新たな時代のはじまり
    • 4.1 「ひまわり」後継機
    • 4.3 「線状降水帯」の予測
    • コラム⑩ 気象予測における「AI」
  • 第5章 地球温暖化
    • 5.1 地球温暖化の状況としくみ
    • 5.2 温室効果ガスの状況
    • コラム⑪ 「プリンストン高等研究所」訪問

書籍紹介

 日本のような四季があり、台風や梅雨など気象変動が多い国においては、正確な気象予測が人々の安全と生活の質に直結します。そんな気象観測と予報の技術の進化を、歴史的視点から詳細に紐解く一冊が、古川武彦著「日本の気象観測と予想技術史」です。

著者について

 著者の古川武彦氏は、長年にわたり気象研究に従事し、その経験と知識を活かして本書を執筆しました。彼の専門的な視点と深い洞察力が、本書の随所に反映されています。

書籍の概要

 「日本の気象観測と予想技術史」は、古代から現代に至るまでの日本の気象観測と予報技術の発展を詳細に描いています。気象観測の初期段階から、近代的な予報技術の導入、さらには現在の最先端技術まで、幅広い時代をカバーしています。

主な内容

1. 明治時代以降の近代化

 明治時代に入り、欧米の技術が導入され、気象観測は大きく進化しました。特に、気象台の設立や気象観測ネットワークの拡充が詳細に述べられています。また、この時期に日本独自の気象予報技術がどのように発展していったかも興味深いポイントです。

2. 戦後の高度経済成長期

 戦後の復興とともに、気象観測技術も飛躍的に進歩しました。人工衛星の導入やスーパーコンピュータの活用など、現代の気象予報の基礎が築かれた時期です。本書では、これらの技術革新がどのようにして行われたかが詳述されています。

3. 現代と未来の展望

 現代の気象観測技術と予報技術の最先端についても触れられています。AIやビッグデータ解析など、新たな技術が気象予報にどのように活用されているか、そして未来の展望についても考察されています。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

国際社会への復帰

 太平洋戦争が終結すると同時に、日本の気象業務はすべて連合軍の監督・指示の下に置かれました。しかし、昭和27年(1952年)のサンフランシスコ平和条約の締結に伴い、中央気象台も国際社会に復帰しました。

 復帰に合わせて国内法が整備され、気象業務の基本が定められました。今日に至るまで、「気象予報士制度」や「特別警報」などの改正が行われていますが、基本的な枠組みはほぼ変わっていません。

 また、気象業務法には、気象庁長官の許可を得ないで予報を行った場合には50万円以下の罰金を課すといった規定もあります。

 気象庁は「国家行政組織法」に基づいており、「国土交通省」の外局として設置されています。国土交通省の外局には、気象庁のほか、観光庁、海上保安庁、運輸安全委員会があります。

気象衛星「ひまわり」

 昭和52年(1977年)7月14日、気象衛星「ひまわり1号」がアメリカのケネディ宇宙センターでデルタロケットを使って打ち上げられました。国産のH-IIAロケットを使って種子島から打ち上げられたのは「ひまわり8号」で、平成26年(2014年)10月7日のことです。

 ひまわりの当初の目的は気象観測でしたが、後に運輸省が行う航空管制のミッションも取り入れた「運輸多目的衛星」へと進化しました。

 気象衛星が打ち上げられる前は、台風の位置を把握するのが困難で、予測も不十分でした。そのため、台風が急に襲来して大きな災害を引き起こすことがよくありました。

 昭和39年(1964年)に設置された父島レーダーは800kmの探知距離を持っていましたが、西太平洋の監視はできませんでした。そこで登場したのが「気象衛星」です。気象衛星の登場により、台風の不意打ちがなくなり、台風の進路予報の精度も飛躍的に向上しました。

「ひまわり」後継機

 現行の気象衛星ひまわり8号および9号は、令和11年度(2029年)までに設計寿命を迎える予定です。そのため、次期ひまわり衛星は、市町村単位で危険度を把握できる分布情報を提供し、台風の進路を正確に予測することを目指しています。これにより、鉄道や空港の運用を的確に行い、広域避難などにも役立てることを目的としています。

  • 次期ひまわりの特徴
    • 蒸気の水蒸気の3次元観測機能「赤外サウンダー」
    • 電子機器の不具合や通信障害などを引き起こす「太陽フレア:太陽プロトン現象・銀河宇宙線」を観測する「宇宙環境センサー」です。

 現在、次期衛星の予算が認められた場合に必要な調達作業を進めています。

気象予測における「AI」

 気象庁は昭和52年(1977年)から「天気」や「湿度」を予測するために「ニューラルネット」というAIを使用しています。そういった意味では、気象庁は日本で最も早くAIを導入した機関といえるでしょう。

 生成AIは、ユーザーが入力した質問に対して対話形式で答えるシステムです。たとえば、明日の天気を質問すると、ほとんど誤差なく回答してくれます。

 今後の気象予報におけるAIの役割を検討するにあたって、情報の出所である気象庁の数値予報モデルを用いたGPVデータの重要性は変わりません。

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