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目次
書籍情報
転換の時代を生き抜く
投資の教科書
発刊 2024年1月29日
ISBN 978-4-296-00153-8
総ページ数 333p
後藤達也
経営ジャーナリスト
2022年に日本経済新聞社の記者をやめ、独立。
SNSを軸に活躍中。経済ニュースをわかりやすく発信している
日経BP
- はじめに
- 第1章 投資が欠かせない時代に入った
- 日本株のイメージが変わった
- iPhoneが揺さぶる国民の意識
- ディズニーランドも円安インフレ
- 「人生100年時代」の「2000万円問題」
- 若いころからの投資経験は生涯の資産形成の武器になる
- 投資の意義はおカネを増やすことだけではない
- 私が株をはじめた理由
- 投資先に思いを巡らせることは経営の疑似体験
- Column 9.11のときに株を持っていた
- 投資とは、確実なことはないガチンコの世界
- 投資はビジネスパーソンのマインドセットを磨く「リスキリング」
- Column リスクってなんだろう
- 投資は社会とどうつながり、貢献するのか
- 銀行預金と株式投資の違い
- 変化の時代を生き抜く投資
- 第2章 株・会社・決算……そもそもから考え直してみよう
- 株ってなんだろう
- 株主には大きくふたつの利権がある
- 2022年、株式会社をつくりました
- 売上が立っていなくても、成長ストーリーで資本を集める
- 出資を受けるとプレッシャーと窮屈さも生まれる
- 株式上場はヤフオクへの出品に似ている
- 上場すれば、追加の資本調達の道がグッと広がる
- Column 創業者にとってのIPOとは何か
- 会社の価値、レストランで考えてみよう
- 株価は「現在より未来」を見て決まる
- 「決算書」はビジネスパーソンに欠かせない武器
- いろいろある「利益」、まずは「営業利益」が大事
- 業種の特性や企業の努力は営業利益率に表れる
- 株主に直結するのが純利益
- 利益のうち、いくら配当にまわすのか
- バランスシートもレストラン経営で学ぼう
- お店を拡張した場合
- ここでバランスシートをざっくり整理してみよう
- 自己資本比率は高ければいいわけでもない
- バランスシート、トヨタと任天堂を比べてみよう
- Column バランスシートにのらない「人的資本」
- Column フォロワーも「資本」
- 損益決算書はフロー、バランスシートはストック
- ROE(自己資本利益率)の重要性はますます高まる
- 第3章 株価はなにで動くのか
- 株価を見る「虫の目」「鳥の目」「魚の目」
- 「虫の目」:スタジオジブリの価値を考えてみよう
- 「虫の目」:妥当な株価を探る3つの指標
- 「虫の目」:日本人が好きな配当利回り
- 「虫の目」:高配当にはワケがある
- 「虫の目」:高配当株、低配当株、特徴は?
- Column それでも「配当利回り」には威力がある
- 「虫の目」:最も使われるモノサシ、PER
- Column 赤字でも「期待」が高ければ株価は巨大になる
- 「虫の目」:PBR、「帳簿の価値」と「市場における価値」
- 「虫の目」:低PBR企業は「無駄づかい」が多い
- Column PBR1倍割れ=「解散せよ」?
- Column 東証の「PBR1倍割れ」改善要請
- 「虫の目」:時価総額ランキングは世界の勢力図
- 「虫の目」:株価はガチンコ綱引きの結果
- 「虫の目」:いろんなモノサシが重要。モノサシ以外も重要
- 「鳥の目」で見てみよう
- 「鳥の目」:大きなおカネはマクロで動く
- 「鳥の目」:「見ておくべき指標」は移り変わる
- 「鳥の目」:重要な米経済指標①米雇用統計
- 「鳥の目」:重要な米経営指標②CPI
- 「鳥の目」:重要な米経済指標③ISM
- Column 市場予想ってなに?
- 「鳥の目」:オルタナティブデータで経済予測の制度が高まる可能性がある
- 「虫の目」から「鳥の目」に。ささいなニュースを俯瞰でとらえる
- 「魚の目」:株価は需要で決まる
- 「魚の目」:買いたい人が多いって?
- 「魚の目」:全体のマネーの総量が多くなれば、投資市場に向かう
- 「魚の目」:センチメントが市場を左右する
- 「魚の目」:「強気相場は悲観のなかで生まれる」
- 「魚の目」:恐怖のバロメーター「VIX」
- 「魚の目」:投資家にはいろいろなタイプがいる
- 「魚の目」:日本株のメインプレーヤー「外国人投資家」
- 「魚の目」:個人マネーにも要注意 新NISAの威力
- Column 個人マネー どれほど動くのか 身の回りに意外なヒント
- 「虫の目」「鳥の目」「魚の目」「3つの目」を重ねる
- 第4章 中央銀行は金融市場の心臓
- 中央銀行が一般市民の関心事になった
- 「お礼の発行」がわかりやすい仕事だけど
- 「物価の安定」のために金融政策はある
- 中央銀行は利上げ・利下げで景気と物価を操作する
- 利上げすることは、景気にブレーキをかけるということ
- 金利は経済の体温
- 世界の中央銀行は「2%」を物価上昇の目標にしている
- 日銀が2%物価目標を導入したのは2013年
- 2%物価、遠かった10年間
- イールドカーブ・コントロールは国債の長期金利まで操作する異例の策
- 円安の理由は、アメリカの金利上昇とイールドカーブ・コントロール
- Column 日本はいまや貿易赤字国 構造的な円安要因に
- 植田日銀について知ろう
- わかりにく金融政策をわかりやすく
- どうなる日本の物価
- 値上げの力学が変わってきた
- 賃上げの力学にも構造変化
- 従業員が会社を選ぶ時代になった
- 米FRBは世界の金融の中心
- コロナ後のアメリカ金融政策をハイライトで知ろう
- 景気を優先するか、物価を優先するか
- 金融システムは血管のように社会に張り巡らされている
- 第5章 投資をはじめよう
- 投資をする際に、まず一番大切なこと
- 株をはじめたいときの基本的な流れ
- Column 日本株の取引手数料がゼロ 消耗戦の裏にSNS
- 後藤自身の投資
- 「短期」は個人が勝つのは難しい
- 「長期」は個人で投資する人のほうが有利
- 分散投資が王道、集中投資は高リスク
- 国・通貨も分散しよう
- 「投資信託」これだけ知っておこう
- 迷ったらS&P500
- 手数料の高い投信が、いい投信とは限らない
- 「時間」も分散
- 海外に投資をするなら為替にも意識を持とう
- SNS情報を鵜呑みにせず、自分で判断する
- Column 大切なのは「目先の注目」より「長期の信頼」
- 個別株への投資は、投信にはない学びやおもしろさがある
- おわりに
紹介
現代における投資の重要性と方法を解説した一冊です。株式投資の基本、中央銀行の役割、そして実際に投資を始めるための具体的なステップまで、幅広い内容を網羅しています。
第1章では、人生100年時代を生きるための資産形成の重要性を説いており、投資を通じて経済や社会とどう関わり、貢献できるかを考察しています。特に、投資の意義をお金を増やすことだけに限らず、経営の疑似体験やリスキリングとしての側面を強調しています。
第2章では、株や会社の基本概念に立ち返り、決算書の読み方や企業価値の考え方を解説。投資家としての基礎知識を固めることの大切さを説いています。
第3章は、株価の動きに焦点を当て、その理解を深めるための「虫の目」「鳥の目」「魚の目」という三つの視点を提案しています。これにより、個別の株式だけでなく、市場全体や経済の動向を読み解く力を養います。
第4章では、中央銀行が金融市場においてどのような役割を果たし、金融政策が経済にどう影響するかを解説。特に、現代の金融政策が直面する課題や、それが個人投資家にとって何を意味するのかを掘り下げています。
第5章では、具体的に投資を始めるためのアドバイスを提供。投資信託の選び方、分散投資の重要性、SNS情報の扱い方など、実践的なノウハウが満載です。
投資初心者から経験者まで、あらゆるレベルの読者に有益な情報を提供します。後藤氏は、不確実性の高い時代においても、知識と洞察に基づいた投資がいかに人生にプラスの影響をもたらすかを説得力ある言葉で語りかけています。
株式上場はヤフオクに似てる
「上場」とは、株式が東京証券取引所など、多くの投資家が集まる取引所で売買されるようになることを指します。ただし、上場していなくても、株の売買は可能です。
私の会社の株を買いたい人がいれば、その人に対して売ることもできます。その株をいくらで売るかは、双方の話し合いで決まります。しかし、実際に売ろうと思ったときに、買い手を見つけて納得のいく株価で売るのは大変です。
そこで、上場が役立ちます。上場すれば、売る人は買ってくれる人を把握できなくなりますが、「1株500円なら売ってもいい」という人が東証などの取引所に注文を出し、逆に「500円なら買いたい」という人がいれば売買が成立します。
単純化すると、ヤフオクに出品するのに似ているかもしれません。私物を売りたいときに、街でいろいろな人に声をかけて買い手を探すのは大変です。ヤフオクであれば、遠く離れた場所に住む人にも、その商品を一番高く評価してくれる人が買ってくれます。
株では、基本的に一番高い買い値を提示した人が購入できます。「高くても買いたい人」「安くても売りたい人」たちが競り合い、刻々と価格が決まっていきます。
虫の目 高配当にはワケがある
株価が2000円で年間配当が100円の株の配当利回りは5%です。この高配当株が多くの人の目に留まり、この株を買う人がたくさん出てきたとします。
株価が2500円になって配当が100円のままだとすると、利回りは4%になります。
配当利回りが高いのには理由があります。配当利回りが高いのが魅力的で投資家が殺到すれば、株価は上がって配当利回りは下がるわけです。配当利回りが高いままというのは、あまり買い注文が入らないということでもあります。
つまり、誰から見てもお得な銘柄は存在しないのです。
配当利回りが高い理由は、長年にわたって現在の利益や規模を維持しづらい成熟期であったり、何らかのショックで株価が著しく下がっている場合があります。
それでも「配当利回り」には威力があります。つまり、「ワケあり」商品なのです。そこに魅力を感じる、お得感を感じる人がいます。
いろいろなタイプの投資家
デイトレードとは、1日のうちの非常に短い時間帯の価格変動を収益のチャンスと捉え、売買を繰り返すことです。この手法が好きな人もいます。
スイングトレードとも呼ばれる手法では、数日間の市場の流れを読んで売買することが一般的です。一方で、数週間や数か月程度で投資先を調整する人もいれば、一度買ったら何十年も持ち続ける人もいます。
投資家によって、年齢や資産規模、家族構成などが異なり、それに伴って将来必要となる資金も変わります。
このような背景から言える重要なことは、市場が常に一方向に偏ることはないということです。
何かショックが起きた場合、短期的に利益を得ようとしていた人が慌てて株を売ることもあります。一方で、長期的な投資を考えている人は売らないこともあります。また、株価が下がったことを見て、長期的に利益が期待できると判断して買う人もいるでしょう。
株価が高騰している時も、低迷している時も、市場が過剰反応することがあります。しかし、多くの人が「これは行き過ぎだ」と考えて、市場の流れに逆らって取引することで、トレンドが変わることがあります。
SNS情報を鵜呑みするな
SNSやYouTubeには、人々の関心を集めてフォロワー数や再生数を増やそうとする人がたくさんいます。関心を高めるために、「必勝の株」「株暴落」など、刺激的な表現や画像を使う人が多いのは自然な流れです。
マーケットというのは、長く付き合えば付き合うほど、断定が難しくなるものです。「今が株価の底」「これから上昇する銘柄は〇〇」などと断定している人は、マーケット経験が浅いか、自分自身の見通しが当たるかわからないにもかかわらず大げさに演じているケースがほとんどです。
本当に自分の投資に自信があるなら、わざわざその方法をSNSやYouTubeで公開しません。むしろ、投資に自信がある人は自身の相場観を人に見せたがらないものです。
そして、本当に投資で巨額の利益を得ているのであれば、YouTubeの広告収入も必要ないでしょう。
SNSは便利なツールではありますが、決して鵜呑みにせず、企業の発信や専門家の書籍、報道、証券会社の投資情報など幅広い情報源に触れ、バランス感を持って、自分の頭で経済や市場の状況を把握することが大切です。