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目次
書籍情報
元祖・敏腕プロデューサーの生涯と江戸のアーティストたちの謎を解き明かす
これ1冊でわかる! 蔦屋重三郎と江戸文化
伊藤賀一
オンライン予備校「スタディサプリ」で高校日本史・歴史総合・倫理・政治経済・現代社会・公共・中学地理・中学歴史・中学公民の9科目を担当。
日本一生徒数の多い社会科講師と評判。
Gakken
- 蔦屋重三郎がプロデュースした世界に誇る日本の浮世絵師
- 東洲斎写楽
- 喜多川歌麿
- 葛飾北斎
- はじめに
- 第1章 メディア王・蔦屋重三郎の生涯
- 田沼時代から寛政の改革を経て大御所政治の時代へ
- [略年表]享保の改革から蔦屋重三郎が没するまで
- メディア王・蔦屋重三郎の仲間たち
- 有徳院(徳川吉宗)の時代、江戸の吉原で生まれる
- 吉原の大門口の一角に地本問屋「耕書堂」を開店
- 編集者として『一目千本』を手掛け、経営者として「吉原細見』を独占する
- 庶民が物価高に喘いだ時代に、蔦重は積極的に出版物を刊行し吉原を盛り上げる
- 当時、流行の兆しを見せ始めた黄表紙の出版に挑戦する
- 耕書堂の躍進を支えた北尾重政・喜多川歌麿・山東京伝
- みずからを「蔦唐丸」と名乗り狂歌ブームを牽引する
- 幕府の政策を戯作で風刺し茶化した蔦屋重三郎のチャレンジ
- 次世代の育成を進めた蔦重は幻の浮世絵師「写楽」をデビューさせる
- 脚気を患い寝たきりとなった蔦重は47歳で最期を迎える
- 第2章 敏腕プロデューサー「蔦重」のすごさ
- 蔦屋重三郎を成功へ導いた7つのキーワード
- 年長者に礼を尽くして信用を得て次世代を育て積極的に登用する
- 世間の味方「蔦重」という粋な男を演じ、江戸の人々の心をとらえた
- ピンチのあとにはチャンスあり! 危機を脱して再起した蔦屋重三郎
- 軽視されていた大衆文学や絵画をべらぼうな熱量で事業化し成功する
- 知っておきたい「豆知識」1 結婚も離婚も 「家」次第
- 第3章 謎の絵師「東洲斎写楽」
- まったく無名の絵師だった東洲斎写楽に蔦重は賭けた!?
- レンブラント、ベラスケスと並び称された写楽
- 10ヵ月の間に写楽が残した作品は、4期に分けられる
- 絵からはみ出した何かを感じさせる写楽の大首絵
- 全身像になり、背景も細かく描かれるなど写楽の画風は変わっていく
- 知っておきたい「豆知識」2 蔦屋重三郎を今のメディアにたとえると?
- 第4章 蔦重が見出した江戸のアーティスト
- 浮世絵師 北尾重政
- 浮世絵師 喜多川歌麿
- 浮世絵師 葛飾北斎
- 戯作者 朋誠堂喜三二
- 戯作者・浮世絵師 恋川春町 狂歌師 大田南畝
- 戯作者・浮世絵師 山東京伝
- 戯作者 十返舎一九
- 戯作者 曲亭馬琴
- 知っておきたい「豆知識」3 文人の多くは「本業」を持っていた!
- 第5章 もっと知りたい! 江戸と蔦重
- Q1 江戸の吉原ってどんなところ?
- Q2 江戸の庶民が楽しんだ娯楽とは?
- Q3 江戸時代って、本を読む習慣があったの?
- Q4 江戸時代の本はどんな印刷技術が使われたの?
- Q5 江戸で大人気の黄表紙ってどんな本?
- Q6 草双紙・黄表紙のほかにどんな本が売られていたの?
- Q7 浮世絵の題材になったものは?
- Q8 蔦屋重三郎も没頭したという狂歌とは?
- Q9 江戸時代はどんなところで本が売られていたの?
- Q10 蔦屋重三郎には商売敵が多かったってホント?
- 蔦重ゆかりの地を訪ねる
- おわりに
書籍紹介
蔦屋重三郎が如何にして「江戸のメディア王」となり、その影響力で文化と芸術を牽引したかを、詳細にわたって探ります。蔦屋重三郎は、江戸の浮世絵や文芸作品の出版に深く関与し、喜多川歌麿や東洲斎写楽といった巨星たちを世に送り出す一方で、自身も狂歌師として活動するなど多才な人物でした。
蔦屋重三郎の人生
日本史教育の第一人者として、蔦屋重三郎の人生を波瀾万丈に描き出します。書籍の中では、蔦屋重三郎の出自から彼が成功した理由、そして彼がどのようにして江戸のエンターテインメント界を席巻したのかが、まるで物語のように語られます。さらに、当時の社会背景や文化的変遷も交えながら、彼の生涯が描かれることで、読者は江戸時代の文化的繁栄とその裏側にある人間ドラマを追体験することができます。
その時代の文化に触れる
この本は、単に歴史的事実を列挙するのではなく、蔦屋重三郎のキャラクター、当時の芸術家たちとの交流、そして彼らが作り出した作品の魅力に迫ります。伊藤氏の語り口は、歴史をただ学ぶだけでなく、その時代の空気感や人々の生活を感じることができるよう工夫されています。歴史好きだけでなく、芸術や文化に興味がある方々にもおすすめの一冊です。
書中には浮世絵や大衆文学本などの画像も載っている
特筆すべきは、書中に掲載された浮世絵や大衆文学本の画像です。これにより、読者は視覚的に江戸の文化を体感しながら、蔦屋重三郎や彼が関わったアーティストたちの世界に入り込むことができます。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
大衆文学と絵画をカルチャービジネスへ昇華させる
医師や学生が主君へ献上するために書いた専門書や、後継者育成のために書かれた書物とは違い、当時の大衆文学や絵画の世界は、武士や町人出身の作者からすれば、仕事というよりは趣味の世界で、それを書くことで報酬を貰おうとは考えていませんでした。現代でいえば、同人誌的な市場に近いです。
軽く見られていた戯作や浮世絵を「版元(製造)・卸売り+小売(流通)・貸本(レンタル)」に「広告代理店として」も機能させて、蔦重は大衆文学や海外作品をまっとうな事業としました。
既にあったシステムを組み合わせることで、趣味の世界だったものをポップカルチャーに押し上げることに成功したのです。
はみ出した何かを感じさせる
※イメージ画です。
きれいに描くより個性を強調した写楽の絵画は、じつに奇妙な作品が多いです。大首絵は、役者絵や美人画を上半身のみの絵に大きく顔を描いたものとなっています。
柔らかな表情を見せて、気配り上手の様子を描き完結しているといった理想の女性を描くものが、大首絵には多かったようです。それに対して、写楽が描いた女性は美人画というより実際の人の顔に近く、その表情や行動に何か意味深なものを感じます。絵からはみ出した何かを感じさせるところに写楽の特色があるようです。
特徴的な視線の描写や、口角、手の仕草などを使って、人間の醜さの部分を感じさせるワンシーンを写楽の第一期とされる時代に、描いていたようです。また、どの絵の男女も美形ではありません。