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目次
書籍情報
TRILLIONS
[物語] インデックス・ファンド革命
発刊 2024年2月14日
ISBN 978-4-296-11511-2
総ページ数 457p
ロビン・ウィグルスワース
フィナンシャル・タイムズ紙グローバル・ファイナンス担当記者。
マーケット、投資動向、世界のファイナンスについての動きを追う。
日経BP
- 本書に登場する人物
- 第1章 バフェットの賭け
- 第2章 ゴッドファーザー
- 第3章 偶然の悪魔を手なずける
- 第4章 クオンティファイアーズ
- 第5章 非正統派の砦
- 第6章 ハリネズミ
- 第7章 ボーグルのバカげた事業
- 第8章 バンガードの隆盛
- 第9章 ニュー・ディメンション
- 第10章 バイオニックベータ
- 第11章 スパイダーの誕生
- 第12章 WFIA2.0
- 第13章 ラリーの攻めの一手
- 第14章 世紀の買収
- 第15章 バーディーのショットガン
- 第16章 資本の新たな支配者たち
- 第17章 これが水だ
- 第18章 起業会の新たな大権力者たち
紹介
インデックス・ファンドという投資手法の隆盛を描いた歴史的物語です。この本は、インデックス・ファンドを世に広めた金融の先駆者たちの偉業に光を当てています。ボーグルやその他の先見の明を持つ人物たちが、どのようにして低コストで民主的な投資の選択肢を提供し、大衆のための投資を実現させたかが語られている1冊です。
経済史に名を残すこれらの人物たちは、市場の効率性やポートフォリオ理論を活用して、個人投資家にとってのリスクとリターンの最適なバランスを模索しました。彼らが直面した挑戦と、財政政策や市場構造に革命をもたらした彼らの戦略を掘り下げています。
- ウォーレン・バフェット
- 投資家として著名なバフェットは、価値投資の哲学を体現し、長期投資の利点を説きます。彼はインデックス・ファンドの効率性を公に認め、多くの投資家にとってベンチマークとなっています。
- テッド・サイディス
- ヘッジファンドマネージャーとして知られるサイディスは、ダイバーシファイド投資法の提唱者です。
- ジャック・ボーグル
- バンガードグループの創業者であり、最初の公開インデックス投資信託を設立しました。彼はインデックス・ファンドの父と称されることが多いです。
- ジョン・マクォーン
- 金融工学の先駆者であり、金融理論と実践のギャップを埋める努力をしました。
- レックス・シンクフィールド
- ボーグルと並んでインデックス・ファンドの普及に大きな役割を果たしました。
- ディーン・レバロン
- バッテリーマーチ・ファイナンシャル・マネジメントの創設者で、量的投資の草分けの一人です。
- デイビット・ブース
- ブースは、ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズの共同創設者で、小型株とバリュー株にフォーカスした投資戦略で知られています。
- ラリー・クロッツ
- クロッツは、株式市場の効率性とポートフォリオ理論に関する理論に貢献しました。
- ジーン・シンクフォールド
- 金融の世界で長年にわたり活躍し、インデックスファンドの重要な支持者です。
- リー・クレインファス
- 革新的な金融商品を生み出し、インデックス投資への理解を深めたプロフェッショナルです。
- ラリー・フィンク
- ブラックロックのCEOであり、現代の資産運用業界における主要人物の一人です。
- ロバート・カピート
- フィンクとともにブラックロックを共同設立し、同社の成長を支えています。
インデックス・ファンドがいかにして今日に至るまでにトリリオンドル規模の資産を運用するに至ったのか、そしてそれが個人投資家、市場、そして経済全体にどのような影響を及ぼしたのかについて、『TRILLIONS』は読者に深い理解を提供します。この書籍は、投資の哲学を学び、資産運用の歴史を知りたい読者にとって貴重な資料です。
偶然の悪魔を手なずける
マーコウィッツの革新的な業績は、現在でも多くの億万長者のヘッジファンド・マネージャーや巨大な投資銀行、そして膨大な資産を持つ年金基金の運用原則に大きな影響を与え続けています。
金融の世界に疎かったマーコウィッツがそのような地位を築いたことは、運命の不思議さを物語っています。1927年、シカゴの食料雑貨店を営むユダヤ系の家庭に生まれ、比較的平穏な生活を送っていたマーコウィッツは、シカゴ大学で2年間の学士課程を終えた後、趣味である数学から経済学を専攻しました。
当時、株式市場を学問の研究対象とすることは見下されがちでしたが、大きな可能性があると考える人々もいました。マーコウィッツはこの分野で重要なアイデアを見つけ出し、現代ファイナンス理論の基礎を築いたとされています。
彼は、個々の証券の価格変動よりも、ポートフォリオ全体のパフォーマンスに注目すべきだと主張しています。各銘柄の価格がある程度独立して変動する限り、ポートフォリオ全体のリスクは低減されます。
マーコウィッツは、広範囲に及ぶ受動的なポートフォリオを通じて実現可能な分散化が、投資家にとって最も苦労せずに手に入れられる利益であると主張しています。
この理論は現在も多くの投資家の運用方針となっており、その業績が認められ1990年にはノーベル経済学賞を受賞しました。
バンガードの隆盛
1990年頃、バンガードが取り扱っていたインデックスファンドはわずか2つでした。バンガード500と債券ファンドです。運用資産額は、両方を合わせても12億ドルに過ぎませんでした。
競合他社と比べて格段に低コストであったにもかかわらず、その評判はあまり広まらなかったようです。バンガードはインターネット事業にもほとんど力を入れておらず、販売手数料が不要なファンドを積極的に勧めるブローカーもいませんでした。
1990年代初頭にインデックスファンドが急速に拡大し始めると、ボーグルはバンガード設立時の戦略へと再び力を入れるようになりました。
バンガードは1987年末に、S&P 500の組み入れ対象外の中小型銘柄に投資するエクステンデッド・マーケット・インデックス・ファンドを導入しました。しかし1992年には、ボーグルはアメリカ株式市場の全銘柄に投資する巨大なファンドを構築すべきだと判断しました。
S&P 500は、利便性と実用性を重視して作られた市場の縮小版であり、実際には株式市場全体を代表するものと見なされるようになりました。そこで、1992年にバンガード・トータル・ストック・マーケット・インデックス・ファンド(VTSM)の導入を決定し、当初は出足が鈍かったものの、VTSMは結局大成功を収めました。
パディーのショットガン
金融アドバイザーとしてのキャリアをスタートしたネッツリーは、「社会的責任投資」という考えに出会い、環境汚染を引き起こす重工業や武器製造業、ギャンブルなどを投資対象から除外することに魅力を感じました。その中で、「聖書の教えに則った責任ある投資」という理念に特に共感しました。
興味を深めたネッツリーは自身の投資ポートフォリオを詳細に調査し、妊娠中絶に使用される薬品を製造する大手製薬会社3社の株式が含まれていることを知り、衝撃を受けました。
このような投資を顧客に勧めることが道徳的に許されないと感じたネッツリーは、キリスト教の基本理念に完全に合致する投資先に焦点を当てたクリスチャン・ウェルス・マネジメント(CWM)を設立しました。
CWMは「聖書の教えに則った責任ある投資」シリーズのETFを展開し、その中にはS&P 500とほぼ同等のパフォーマンスを達成している商品もあります。
ETFは、2000年代以降iシェアーズなど多くの業者が特化した分野のETFを次々と開発し、市場に投入しています。いわゆる「スパゲティ砲」です。この新しい金融技術は、大きな可能性を秘めていますが、世界中でETFの急激な拡大が始まり、奇抜な新型商品の導入により、ETF支持者の間でも危機感が高まっています。
これが水だ
パッシブファンドは、投資家からの資金の流入や流出に応じて売買を行いますが、アメリカ株式市場でのパッシブ商品の割合は全体の7分の1に過ぎません。他の市場では、この割合はさらに低くなっています。
パッシブ投資商品が至る所にあるというわけではなく、批判者が想像するような一様な問題を示すわけでもありません。パッシブ投資の隆盛が市場の活力を損なっているわけではないと言えます。
インデックスファンドが市場に潜在的に破壊的な影響を与えているかもしれないという研究があり、その証拠も見つかり始めています。
金融証券がそれぞれの特性に基づいた価格変動を示すのではなく、同じ方向に動くことが増えたことを示す研究や、ETFが大量に保有する株式は価格変動が激しくなる傾向にあることを示す研究が存在するということです。