※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
書籍情報
明日も一日きみを見てる
第1刷 2023年2月10日
発行者 山下直久
発行 (株)KADOKAWA
カバー写真 鈴木心(鈴木心写真館)
本文写真 鈴木心、角田光代、河野丈洋
ブックデザイン 須田杏菜
印刷 大日本印刷(株)
製本 本間製本(株)
ISBN 978-4-04-110992-2
総ページ数 187p
角田光代 作家
KADOKAWA
外猫1号と腰痛事件
地面に近い暮らしになると、さまざまな鳥がいることがわります。番いで行動する鳥もいれば、グループとなって群れで行動する鳥もみかけるのです。
トト(家猫)にとってもはじめて見る野鳥たちです。どう感じているのか、ちいさな鳥がやってくると、窓辺でじっと見ています。
家の人から、外猫がいることを聞いていたので、鳥だけでなく猫も来ないかなと思いながら、なかなか見かけることはできませんでした。
あるとき、私もようやく見かけることができました。ブロック塀に座る猫です。この外猫第一号は、茶トラの、ずんぐりと大きな猫でした。
私の地域では、地域猫の活動があり、去勢・不妊の手術後の野良猫は、片耳の先端が桜のかたちにカットされています。
外猫第一号はさくら耳ではありませんでした。毛並みが美しく、どこかのおうちの飼い猫なのかなと思っていたのです。
この外猫を「とらちゃん」といつの間にか呼ぶようになり、よく話題に上がるようになりました。冬に近づくと暖をとれるようにと、家の人がDIYをするようになったのです。
こうして裏庭に、予想外に立派な小屋が出来上がりました。家の人は腰を痛めてそろりそろりとしか歩けなくなり、ドーナツクッションを置かないと座っていられなくなったのです。
毎日毎日、小屋をチェックするも、どの猫を使いません。結構な頻度でくるようになった「とらちゃん」は小屋など一瞥もせずに前を通り過ぎていくのでした。
猫のプライドと神隠し
飼い主を起こして朝ごはんを催促するネコもいると聞きますが、トトがごはんを催促したことはありません。
トトの優先順位は、甘え欲、遊び欲、睡眠欲、おやつ欲のようです。
朝ごはんは用意しますが、トトが朝ご飯を食べているのを見たことはほとんどありません。
出勤する前に、トトを見てからいくのが習慣になっていました。ある日、いつものようにトトをみようと覗くと、トトがいないのです。私が起きた時には布団の上にいたのに、いません。
探すこと探すこと、やっとのことで家の人に添い寝をするトトを見つけました。布団に潜ってこちらをうかがっています。猫が布団に入るのは普通のことだと思うでしょう。しかし、トトはここに引っ越してきてから10年間、布団を掛けられることを拒否してきたのです。
家の人によると、私が部屋を出ると、家の人の枕元に座り、前脚で髪を引っ掻いて起こして、布団の中に入れろと要求するのだといいます。そして、私の足音が聞こえると、要求をピタリとやめるのだそう。
私は、おかんでしょうか。
甘えている姿を見られたくないらしいのです。
かわいさと破壊行動事件
トトは自分よりかわいいものを許さない傾向があります。
何か「これは許す」「これは許さない」という線引きがあるような気がするのです。
各種猫用のおもちゃがあって、吊り下げて遊ぶタイプの凧や、前脚でつつきながら追いかけて遊ぶタイプのねずみは、たいしてかわいいとは思っていないようです。
トルコを旅したときに猫のぬいぐるみを見つけ、トトが喜びそうだと購入しました。背中のボタンを押すと電池で動き、ナーオと鳴きます。
このオモチャをトトの前で動かすと、トトはオモチャから目を背け、あきらかに「気に食わない」と主張しています。
あるとき、意外なものが標的となりました。すっとお雛飾りに近づいて、片足で人形2体をはたき落としているを見てしまったのです。
このお雛さまたちは、トトによってガジガジに噛まれ、髪も顔も無くなり、干からびた梅干しの種みたいになってしまいました。妙な迫力があってこわいものになったのです。
猫年齢と若返り事件
トトが生まれたのは2010年1月6日、人間の年齢に換算すると60歳以上だといいます。
最近はビーム遊びもしなくなって、ずいぶんになります。寝たままということはないのですが、いつもの行動とトイレのシートを往復する毎日になっていたのです。
ところが、どうしたわけか、ふと立ち止まって「ナー」と鳴き「遊びたまえ」と命じてくるのです。
私はビームを動かしながら、ちょっと感動していました。トトちゃん12歳。物凄い体力ではないですか。
2011年から続けているフルマラソンですが、最近は35キロ地点あたりで「これで最後にしよう」と思いながら、やめどきを考えていたのです。しかし、12歳で遊ぶトトをみていたら、走れるかぎり私も走ったほうがいいような気がしてきました。
あとがき
日々、ささやかな事件に満ちていますが、慌てているのは人間だけで、猫は事件を事件だと思っていません。
世界に目を向ければ、悲しいことが起きています。大震災に戦闘、パンデミック。辛いことも多かったと思います。
そんな激動のなかにあって、トトと過ごす時間はしずまりかえっています。
どんなに怒りがこみあげてきていても、おやつを用意するときは気持ちが凪いでいるのです。
トトの存在はわたしの幸せの基点になってくれています。
一匹の猫と出会うと、人は全世界の猫の幸福を願うようになる。そんなことまで思っているのです。
感想
サイト管理人
私の家にいる犬っころも、ずいぶん気分屋です。オモチャをもってきたときは、オモチャを投げ飛ばしてあげると、どこかしらの壁に頭をぶつけてオモチャを持ち帰ってきます。
遊んでいるときは、無感情になって犬と戯れることができているのかもしれません。
猫と暮らす幸せを分けてもらいたい方は、この本を読んでほっこりすると良いでしょう。私の場合は、自宅で猫を飼うとなった場合に、完全に家猫にできる環境がないので、猫を飼うことができません。なので、この書籍で猫と暮らす自慢話を拝見して幸せをわけてもらいました。
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