※読んだ本の一部を紹介します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
はじめに
一般的にスケーラブルなアイデアは「万能な」特徴があり、「見逃せない」魅力を備えるとの見解があります。しかし、基本的に規模を拡大してうまくいくケースと、うまくいかないケースの特別な決めてはありません。
スケーラブルには5つの特徴があり、私は「5つのバイタル・サイン」とよんでいます。アイデアが生きているかどうかを見極める必要があるからです。どれか1つでも欠ければ、上手くいかないのです。
スケーリングに関する知見は、21世紀に切り拓いている新たな領域の一部であり、世界の精鋭たちが課題解決を目指した成果だと言えます。ビックデータの時代を反映した成果でもあるのです。これらのデータをどう使うかは、我々次第で、貴重な知識をもたらしてくれるものになります。
書籍情報
そのビジネス、経済学でスケールできます。
第1刷 2023年2月2日
訳者 高遠裕子
編集担当 矢作知子
発行者 田北浩章
発行 東洋経済新報社
装丁 橋爪朋世
DTP アイランドコレクション
印刷 図書印刷
ISBN 978-4-492-31546-0
総ページ数 307p
ジョン・A・リスト
シカゴ大学経済学部ケネス・C・グリフィン特別功労教授。
ケネス・ガルブレイス賞をはじめ、数々の名誉ある賞に輝いています。ブルームバーグ、ワシントンポスト等、250本以上の学術論文を執筆しました。ウリ・ニーズィーと共著で世界的ベストセラーの『その問題、経済学で解決できます』が有名です。
東洋経済新報社
バイタル・サイン
- 偽証性や詐欺ではないか
- 対象者を過大評価していないか
- 大規模にはさいげんできない特殊要素はないか
- ネガティブなスピルオーバーはないか
- コストがかかりすぎないか
偽証性や詐欺ではないか
確証バイアスは、自分の思い込みに反する可能性から目をそらせ、それまで身につけた既存の信念体系に合致する情報を収集し、解釈し、思い出させます。人間の脳は近道を好むと、科学は教えているのです。ビジネスにせよ学問にせよ確証バイアスは偽証性を生み出します。
バンドワゴン・バイアスは、無意識のうちに他人の見解や行動、社会的側面に引きずられていることをいいます。スケーリングの科学に影響を及ぼすものです。
勝者の呪いという行動バイアスがあります。競争入札などではよくある話で、全員があるものの価値を推量する場合、見積りが高すぎる者と、低すぎる者が出てくるのです。勝者はカネを失うのは確実になります。
効果を捏造するパターンもあります。無作為抽出アンケート調査の手法を活用して、1000人の経済学者に対して、倫理的な行動に関する質問を投げかけました。「過去に調査データを捏造したことがあるか?」とのシンプルな問いに、回答者の5%近くがイエスと答えたのです。
対象者を過大評価していないか
有料会員の割引制度を導入したが、会員になったコアの利用者の大多数は利用回数を増やしていません。総利用回数は増えていたが、導入できるかどうかの判断は、「誰が」利用回数を増やすかを見極めることにあるようです。
会員制度には魅力的な特典を盛り込む必要があります。
顧客は、安全、信頼性、低料金、優先的要素、サプライズ割引、キャンセル料の免除、特別割引を望んでいることがわかっているのです。
大規模には再現できない特殊要素はないか
個人商店タイプか、ウーバータイプかを知ることです。
規模の拡大をするつもりなら、どの素材が売上に必須なのかを見極めなければならないのです。
身の回りを観察してみると、交渉可能財と交渉不可能財が存在しています。交渉不可能財の価値は無限大で、スケールアップする際、それなしでは機能しません。交渉不可能財を入手できる限りにおいてスケールアップは成功します。
ネガティブなスピルオーバーはないか
ウーバーのドライバー収入を増やす試みを実施した時の話です。
36都市について105週にわかって検証して、興味深いデータが取れました。
基本料金を引き上げると、数週間はドライバーの収入も増えます。しかし6週目には、引き上げ前の水準を若干上回るまでに下がり、15週目には増収分が完全に消滅していたのです。
新規、既存のドライバーの乗車回数が増え、供給サイドの競争が激しくなり、個々のドライバーが受け取るチップの総額が減ってしまいました。結果メリットが帳消しになっていたのです。
コストがかかりすぎていないか
アイデアがいくら良くても、製品の生産コストが収益を上回る場合、あるいは非収益事業で支出を正当化できるほど成果がでない場合、ボルテージは失われて、そのアイデアはスケーラブルではないことになります。
分業と専門家を進める経済規模拡大の考え方が大事になる点は、コスト面です。
時間の経過とともに作業の習熟度が増し、生産性が高まります。コスト効率の良い生産が実現すると、1個あたりの製品の生産コストが下がり小売り価格も下げられるます。生産量を増やせば増やすほど、こうした利点を得られるのです。
得意なことをスケールアップする
比較優位の考え方は、極めて直観的です。天然資源やインフラ、さまざまな要因によって、他国より効率的に生産できる品目、機会費用が低い品目があります。これら比較優位の品目に生産を絞るべきだ、というものです。
スタートアップの世界の1例として、ツイッターがあります。ポットキャストのプラットフォーム、オデオの内部で生まれたアイデアです。
オデオは悪いベンチャーではなかったものの、ポットキャストの配信や統合では、既に先陣を切るスタートアップが何社もあり、過剰感が増していたのです。
オデオは、「オーディオブロギング」から「マイクロブロギング」に路線を大転換し、新会社を切り離して名前をツイッターに変更しました。140字の公開メッセージという、どこでも共通のツイッターのプラットフォームから、斬新なソーシャル・メディアが現れたのです。
比較優位を見つけることで、壊れた卵を金の卵に変えられるかもしれません。
あとがき
本書の種が宿ったのはずいぶん昔のことです。「真面目にみずからの内面を見つめて正解を見つけなさい」と両親に励まし続けられたことがきっかけになります。
本書の実質的内容は、20年あまりの科学研究を軸に展開しています。さまざまな共著者との研究が「5つのバイタル・サイン」を形づくるのを助けてくれました。
長年のメンター、学生、同僚、シカゴ大学、リフト、ウーバーノミニクスのチームがなければ、本書が生まれることはありませんでした。
世の中を本気で良くしたいと願いう人たちとともに働けることは幸運です。とりわけ、わたしとパートナーを組み、重要な「大問題」に答える手助けをしてくれた人々、非営利、営利を問わず企業、政府、素晴らしい人たちに深く感謝をしています。
感想
サイト管理人
前半のバイタル・サインが肝になるだろうと、全部をかいつまんで紹介してみました。具体例なども豊富に記述されているので、気になる方は、下の購入リンクからお買い求め下さい。
自分がチーフをしている企業で、実験を試みるという規模観は壮大ですが、実績データがあるだけに、説得力が違いました。
自分のビジネスのどこが強みで、どこまで拡大できるのかを検討しなければなりません。
何か新しくビジネスを展開させたい、拡大を検討しているという方にお勧めの一冊となっています。
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