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目次
書籍情報
脱税の世界史
発刊 2024年2月20日
ISBN 978-4-299-05252-0
総ページ数 351p
大村大次郎
元国税調査官。
国税局に10年間勤務。退職後フリーライターとなる。
宝島社
- はじめに 国家とは税金である
- 第1章 古代ギリシャと古代エジプトの脱税事情
- 古代ギリシャのユニークな脱税密告制度
- 古代ギリシャの関税の脱税
- 古代エジプトは優れた税制を持っていた
- 徴税役人が腐敗し「宗教」が台頭する
- 第2章 奏の始皇帝を悩ませた高度な脱税
- 戸籍をごまかす
- 古代中国の財源
- 奏の始皇帝を悩ませた高度な脱税集団
- 漢の贋金鋳造防止策とは?
- 命知らずの鉄の密造者
- 武帝の厳しい脱税摘発
- 第3章 脱税で崩壊したローマ帝国
- 古代ローマにも優れた税システムがあった
- 占領地には過酷な税を課す
- 暴君ネロの税制改革
- 脱税の横行で国家が崩壊
- ローマ帝国がキリスト教を国教とした理由
- ユダヤ人の放浪は重税を逃れるためだった
- ユダヤ人が金貸しになった理由
- 税を逃れるために開発した金融システム
- 第4章 イスラム帝国とモンゴル帝国の税金戦略
- 税を逃れるためのイスラム教への改宗
- 世界経済を変えたモンゴル帝国
- モンゴル帝国を崩壊させた脱税者「張士誠」
- イスラム改宗割引があったオスマン帝国の税制
- 第5章 ヨーロッパ国王たちによる教会税の脱税
- ヨーロッパ国王たちを苦しめた教会税とは?
- 利権化する教会税
- 世界中を不幸にした教会税
- 教会税に苦しむヨーロッパの国王たち
- なぜフランスはローマ教皇を幽閉したのか?
- 国教会をつくったイギリスの思惑
- 第6章 大航海時代は関税を逃れるために始まった
- 「公海」の概念をつくったイギリスの脱税取り締まり
- 「大航海時代」は関税を逃れるために始まった
- なぜスペインは没落したのか?
- 消費税に頼るしかなかったスペイン
- 消費税を拒否してオランダとポルトガルが独立戦争
- 無敵艦隊が骨抜きになる
- 第7章 ヨーロッパ市民革命は脱税から始まった
- イギリス国王の課した税金を堂々と支払い拒否した人物とは?
- 清教徒革命によりイギリスは経済大国になった
- なぜイギリスの古い家には窓が少ないのか?
- 暖炉税という悪税
- 貴族の脱税を阻止しようとして処刑されたルイ16世
- 第8章 脱税業者が起こしたアメリカ独立戦争
- アメリカは元祖タックスヘイブンだった!
- アメリカ独立戦争は脱税業者が起こした!
- なぜアル・カポネは脱税で逮捕されたのか?
- アル・カポネの逮捕を可能にした所得税の創設
- 第9章 ロスチャイルド家は相続税で衰退した
- 19世紀最大の金融家ロスチャイルド
- 「スエズ運河の買収資金をイギリスに貸す」という桁外れの財力
- ナチスの重税と戦争被害
- ロスチャイルド家は相続税で衰退した
- 第10章 ヒトラーの「逃税術」と「徴税術」
- ヒトラーも税金に悩んでいた
- 『我が闘争』の印税にかかった莫大な税金
- 『我が闘争』の内容とは?
- 「源泉徴収制度」という発明
- 源泉徴収は悪魔の発明か?
- 第11章 ビートルズ解散の原因は税金だった?
- 税金に苦しめられていたビートルズ
- ロックを巨大な市場に変えた
- 名曲「タックスマン」は税務署員への皮肉を歌ったもの
- 映画「HELP!」がバハマ諸島で撮影された理由
- アップル社は税金対策のためにつくられた
- 第12章 タックスヘイブンとパナマ文書
- タックスヘイブンとは何なのか?
- タックスヘイブンの起源は19世紀
- タックスヘイブンのもう一つの起源
- 世界中がタックスヘイブンの被害者
- タックスヘイブンがヘッジファンドを生んだ
- タックスヘイブンの背景にはイギリスがいる
- パナマ文書とは?
- なぜ「パナマ」だったのか?
- パナマの危ないビジネス
- パナマに対する国際的な批判
- 第13章 プーチン大統領は脱税摘発で国民の支持を得た
- 共産主義圏は「格差」によって崩壊した
- プーチン大統領は脱税挑発で国民の支持を得た
- プーチン大統領の資産隠しスキーム
- ソ連の崩壊が世界を格差社会にした
- 第14章 「中国版タックスヘイブン」の甘い罠
- 中国がつくった「超タックスヘイブン」とは?
- 宅の企業の力で経済発展
- 先進企業の技術情報が吸い取られる
- 美的集団に技術を提供し続けた東芝
- 中国人女優の巨額脱税
- 「一帯一路」のためのタックスヘイブン
- 中国エリートたちの資産隠し
- 第15章 GAFAの逃税スキーム
- スターバックスのイギリスでの逃税
- アップルの逃税スキーム
- なぜアマゾンは日本で法人税を払っていないのか?
- 日米租税条約という不平等条約
- アマゾンと欧米諸国との攻防
- グーグルの逃税スキーム
- あとがき
はじめに
税金を低くしたいがために細工をするのが、一般的なイメージです。
圧政、重税に対する抵抗手段として、民衆が強力して、課税逃れに走るという場合もあります。
富裕層や貴族などが特権を活用し、合法的に税を逃れることもあるのです。
ユダヤ人の放浪
世界史の中で、ユダヤ人は「離散の民」と呼ばれ、世界中に散在しています。
パレスチナ地方にいた人を始祖とし、聖書を編纂したユダヤ教を信仰していました。周辺諸国が大きくなり翻弄されていった民族でもあります。
ユダヤ人は受け入れてくれる場所をもとめて世界中をさまよいました。そのなかで重税を課されて、迫害されることもあったのです。財産を奪うことで、ユダヤ人を追い出そうとしました。
紀元前のヘロデ国の消滅から1948年のイスラエル建国まで、ユダヤ人は国家を持たない離散の民となりましたが、ローマ帝国や西ローマ帝国の重税から逃れるために仕方なく放浪していただけです。
元祖タックスヘイブン
アメリカはイギリスの植民地時代から、「経済活動の自由」が認められ、税金もほとんど課せられていませんでした。
イギリスの多くの植民地で、特定の企業に独占的な権益をあたえていたため、経済活動の自由は許されていない時代です。生活必需品の価格を不当につり上げることで、植民地の発展を阻害することが上手くいっていました。
その中で、金や香辛料やお茶がとれるわけではなかったので、無税地域にすることで、移民と産業の発展を促すことにしていたのです。元祖タックスヘイブンと言っていいでしょう。
その結果、アメリカにはたくさんの人が移住し、巨額の投資が行われたことで、急激に発展を遂げました。
ヒトラーも税金に悩む
ヒトラーは極悪人であると同時に、ズルい、セコい人間としても知られています。
このヒトラーは、当然のように脱税をしています。
ヒトラーは、集兵を免れて平々凡々とした毎日を過ごしたこともあります。スパイとして過ごすようになって、ドイツ労働党に潜り込んだときは、寝返ることで党の中心人物として君臨するような人です。
ヒトラーは、『我が闘争』という本を執筆して、25億円ほどの収入を得ていました。大きな収入を得たら、大きな税金が課せられます。本来はらう金額の3分の1程度は払ったものの、払う姿勢を見せつつまともに払わないという脱税に成功していたのです。
日米租税条約という不平等
日本企業が、アメリカで商売をして儲かった場合はアメリカで納税をします。
つまり、日本のプロ野球に来る助っ人のアメリカ人は日本で所得税を払うことはありません。日本人選手が大リーグに行った場合は、アメリカで所得税を払っていることがほとんどとなっています。
この不平等条約により、実務運用面ではアメリカ有利でしかありません。
アマゾンなどは子会社を税金の安いタックスヘイブンに置いて、グループ全体の利益を集中させて、節税を行っています。クレジットの決済機能をアイルランドのダブリンに置くなど、少々やりすぎで世界中から非難が殺到しているほどです。
アメリカの税務などがこの問題に着手しないのは、アマゾンがグループ全体の納税額の半分をアメリカで収めているからでしょう。このアマゾンに対して非難したのは、トランプ前大統領しかいません。