シンクロニシティ 科学と非科学の間に 

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書籍情報

タイトル

シンクロニシティ

~科学と非科学の間に~

第1刷 2023年1月29日

訳者 権田敦司

発行者 田賀井弘毅

発行 (株)あさ出版

印刷・製本 文昌堂印刷(株)

ISBN 978-4-86667-429-2

総ページ数 471p

著者

ポール・ハルパーン

アメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアにある科学大学で物理学教授を務めるアメリカ人の作家。
2015年に『アインシュタインのサイコロとシュレディンガーの猫』 、 2017年に『量子の迷宮: リチャード・ファインマンとジョン・ウィーラーが時間と現実をいかに革命したか』 、2020年に『シンクロニシティ: 原因と結果の量子の性質を理解する壮大な探求』、そして2020年に『創造の閃光: ジョージ』を出版
本書にて「Physics World Best of Physics in 2020」を受賞。

出版

あさ出版

もくじ

  • 推薦の言葉
  • 量子論の発展に寄せて 福岡伸一(生物学者)
  • 序章 自然界のつながりを描く
  • 第1章 天空へ挑む ~古代の人々が描いた天界像~
    • 太陽への信仰
    • 神殿の谷の夜明け
    • 宇宙の構成要素
    • 自然界の隠された光
    • 遅々として進まない太陽の光
    • 運土の世界観
  • 第2章 木星からの光が遅れる
    • 富と知
    • 天文学の復活
    • 禁断の惑星
  • 第3章 輝き源を辿る ~ニュートンとマクスウェルによる補完~
    • 遠隔作用
    • ラプラスの悪魔とスピノザの神
    • 疾走する波と探求心
    • 金科玉条を探す
    • 幻の終の棲み処
  • 第4章 障壁と抜け道 ~相対性理論と量子力学による革命~
    • 光が持つ2つの顔
    • 相対的な真実
    • OPERAの幻
    • 宇宙を織りなす
    • 原子の中を覗く
    • デンマークからの光
    • 魔法の数字
  • 第5章 不確定という世界 ~現実主義からの脱却~
    • 不思議の国のアルベルト
    • 苦難の道のり
    • 現実と行列式
    • 非公開の舞台
    • 物質波
    • 母なる光
  • 第6章 対称性の力 ~因果律を超えて~
    • 対称に次ぐ対称
    • 保存則が表すもの
    • 超排他的な住人
    • スピン:粒子の謎めいた性質
    • 姿を見せない粒子
    • もつれた経緯
    • 超自然現象への抗い
  • 第7章 シンクロニシティへの道 ~ユングとパウリの対話~
    • もつれを繙く
    • 皮肉屋兼毒舌家
    • 精神の偽らざる姿
    • シンクロニシティの登場
    • パウリの受難
    • 超心理学と懐疑派
    • ノーベル賞
    • 研究所での洪水
    • すべては2と4のもとに
    • 非因果的連関の原理
    • 関係の終焉
  • 第8章 ふぞろいの姿 ~異を映す鏡のなかへ~
    • ウー夫人の情熱
    • ニュートリノという名のサウスポー
    • 超絶の力
    • 統一を巡る課題
    • 相互作用のなす業
    • 統一への狂騒
  • 第9章 現実へ挑む ~量子もつれと格闘し、量子跳躍をてなずけ、ワームホールに未来を見る~
    • ジョン・ベルによる判定試験
    • 光子の逆相関やいかに
    • コズミック・ベル・テスト
    • 量子の挙動の実用化へ
  • 終章 宇宙のもつれを繙く
    • 因果律の限界
    • 高速の因果律を超えて
    • パウリとユングが残したもの
    • セレンディピティv.s.科学
    • 慎重に非因果性を受け入れる
  • 謝辞
  • 脚注
  • 参考文献

遠隔作用

作者: acworks

 自然の探求へとニュートンを突き動かしたのは、ケプラーの法則が成り立つ理由を解き明かしたいとの意欲でした。

 逸話では、ニュートンを正解へと導いたのは木から落ちたリンゴだったとされています。地球に重力のような引力が働いていると考えれば、惑星の軌道についても説明ができるのではないかと着想を得たと言われているのです。

 ニュートンは太陽と土星のように極めて離れた2点間においても、重力が伝わるとして、その力が及ぶ速さについては説明をさけています。説明をした段階では瞬時に伝わるものとみなしていたのです。

 ニュートン自身、「遠隔作用」という概念がおかしいことは認識していました。ニュートンの運動さん法則には、自然界の原理に対する私たちの直観を裏切るような内容が含まれています。しかし、月の運動を含め、天体の基本的な動きは、ニュートンの運動法則を基礎としています。

 月が地球を回り続けるのは、慣性と重力が見事に調和しているからです。他の惑星が安定した軌道を描くのも同じ理由です。

 人間の日常生活から宇宙に至るまで、ニュートンの運動法則は幅広いスケールにおいて物体の運動を描写します。気持ち良いほどシンプルです。物体に加わる力と加速度、質量と加速度の積に等しいといった式により、物体が作用する力の予測が可能となっています。

 スペースシャトルの月への飛行軌道の算出でさえも、寸分たがわず把握できるのです。

※ケプラーの法則:惑星の運動に関した3つの法則。太陽をその1つの焦点にもつ楕円軌道上を運動することをうたっています。

不確定の世界

作者: sho.jpg

 ハイゼンベルクは、アインシュタインの相対性理論における偉大な功績を認める一方で、哲学的な偏り蔑むようになります。アインシュタインが量子力学を表す真実をなぜ認めようとしないのか理解できなかったのです。

 科学に偏見は禁物で、自然界が離散的であやふやで抽象的な振る舞いを表すならば、自然とはそういうものだというのが彼の主張でした。

 ハイゼンベルクは、新たな原子モデルの定式化に挑むまで、研究拠点を転々としていました。そして、数々の原子物理学の研究を重ねたハイゼンベルクは、スペクトル線ごとに光の明るさが異なることに注目したのです。各元素のスペクトルには、明るい色もあれば暗い色もあります。

 あるとき激しい花粉症の症状に見舞われ、一時都会を離れました。ヘルゴラント島で爽やかな空気に触れて、荒波に現れる赤い砂岩の美しさがハイゼンベルクを刺激します。スペクトルの明暗に対する答えが彼の頭に浮かんだのです。

 抽象的空間上の確立を記述する枠組みを考案し、起り得る量子状態間の遷移について、それぞれの発生確率を一覧にまとめようとしました。

 量子力学では、最も確立の高い値である「期待値」を算出するにとどまります。それぞれの確率の重みを加えた加重平均のことです。量子状態を示すベクトルから成る「正方行列」と結びつきます。列と行のベクトルを乗じて加重平均が出されます。この手法は確かに直接的とは言えず、位置や運動量などを変数とみなすのは難しいのです。しかし、原子レベルのミクロの世界では、自然は古典力学ではなく量子力学に従うのです。

ニュートリノという名のサウスポー

作者: HAGEO

 パリティ対称性の破れを見い出すのは昔はタブーでした。しかし、弱い相互作用におけるパリティ対称性の破れが次々と実証されるに伴い、対称性に心理を見出す研究者も破れの存在を認めるようになります。

 パリティ変換において非対称性を備える粒子の代表格が、自らの提唱したニュートリノであることが判明しました。観測されるニュートリノの掌性は、いずれも左巻きだったのです。対して、反ニュートリノは常に右巻きです。

 量子をはじめ、ほとんどの素粒子には、右利きと左利きの両者が存在します。ニュートリノにサウスポーしかいない理由は、まだ解明されておらず、全くもって謎です。

※パリティ対称性の破れ:空間反転した(鏡に映した)ときに物理法則が同じにならないこと

慎重に非因果性を受け入れる

Image by Michael Schwarzenberger from Pixabay

 物理学者は現在、着実に、慎重に、因果性と非因果性の両者を許容する普遍的原理を築こうと力を注いでいます。一部は量子のもつれの原理に従って一般相対性理論の再構築を目指し、一部は一般相対性理論の時空連続体に基づいて量子もつれの記述に挑んでいるのです。

 シンクロニシティは、量子コヒーレンスを呈する無数のクーパー対の中にあります。超電導リニアの磁気浮上を実現させ、軌道摩擦を大幅に低減させた立役者です。

 現代物理学は奇妙です。その点は論を俟ちません。しかし、再現性が担保される限り、現代物理額は知の巨頭を築くでしょう。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 何かビジネスでも始めようかと思ったときに、商品にするアイデアは普段困っていることだったりするわけです。その商品を作るには、科学を含め一般教養が必要になります。

 著者の場合はリニアモーターカーなどの大きいことを例にとっています。上空に交通網をひけるとあれば、ベッドタウン以外の田舎や都内で活用できる場面が多そうです。

 科学が発展したひらめきを学べば、何かの想像力の足しになるのではないでしょうか。

 単純に科学の重要性をストーリー仕立てで学ぶのは楽しいものです。

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