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目次
書籍情報
宇宙の「果て」になにがあるのか
最新天文学が描く、時間と空間の終わり
発刊 2018年8月1日
ISBN 978-4-06-512499-4
総ページ数 252p
著者
戸谷友則
東京大学大学院理学系研究科教授。理学博士。研究テーマは、宇宙論、ダークエネルギー、ガンマ線バースト
KODANSHA
シリーズ:ブルーバックス
- はじめに
- 第1章 宇宙の果てとはなにか
- 人類の宇宙観の広がり
- 際限のない問いかけ
- 二つの「宇宙の果て」と地平線
- 地平線を超えて
- 第2章 時空の物理学 相対性理論
- 相対論と宇宙論
- 光の速さの摩訶不思議
- 特殊相対性理論の誕生
- 一般相対性理論への発展
- 重力と加速運動
- スペースシャトルの中はなぜ無重力?
- 重力とは、時空のゆがみ⁉
- 一般相対論の完成とその実験的検証
- 第3章 宇宙はどのようにはじまったのか ビッグバン宇宙論の誕生
- 相対論から宇宙論へ
- 宇宙は「一様かつ等方」
- 膨張宇宙論の誕生
- 観測による宇宙膨張の発見
- 宇宙の一様な膨張?
- 生涯最大の失敗
- ビッグバン宇宙論への発展
- 膨張するけど定常宇宙論⁉
- 宇宙の始まりは熱かった?
- 宇宙マイクロ波背景放射とビッグバン宇宙論の確立
- ビッグバン宇宙論は完璧なのか?
- 第4章 宇宙はどうしてビッグバンで始まったのか? 時空の果てに迫る
- ビッグバンの前にどこまで迫れるか
- ビッグバンの初期条件に関する問題
- 広大な宇宙を生み出すからくり
- どうしてインフレーションが起きたのか?
- インフレーション研究の困難さ
- 宇宙に始まりはあったのか?
- 重力の量子論と時空の誕生
- 時間とはなにか?
- 研究者は常にオプティミストである
- 空間方向へ広がる「宇宙の果て」は?
- 第5章 宇宙の進化史 最初の星の誕生まで
- 我々の宇宙の果てと宇宙の歴史
- 誕生後1000億分の1秒の宇宙
- 物質と反物質の壮絶な戦い
- バリオン生成の謎
- ビッグバン元素合成
- ガモフによる宇宙マイクロ派背景放射の予言
- 物質と光の逆転
- 水素元素の誕生と宇宙の晴れ上がり
- 宇宙の密度ゆらぎの起源
- 宇宙の大規模構造の誕生
- 初代星の誕生
- 暗黒時代の終わり
- 第6章 星と銀河の物語
- 銀河系の外に広がる宇宙
- 銀河とはなにか
- 星間空間にはなにがあるのか
- 銀河中心の超巨大ブラックホール
- 銀河空間にはなにがあるのか
- 星々の生涯_誕生から主系列段階まで
- 星々の生涯_主系列段階以降の運命
- 繰り返される星々の生と死
- 銀河の形成と進化の歴史
- 第7章 観測で広がる宇宙の果て
- 多様なメッセンジャーによる宇宙観測
- 可視光線での宇宙観測
- 低温の宇宙を見る_赤外線と電波
- 爆発現象と極限天体を見る_X線と電波
- 新しい宇宙を見る目_ニュートリノ
- 時空のゆがみで宇宙を見る_重力波
- 第8章 最遠方天体で迫る宇宙の果て
- 最も明るい天体で、最遠方宇宙に迫る
- 伝統の遠方天体クェーサー
- 銀河による最遠方宇宙の探査
- ガンマ線バースト
- これからどこまで見えるのか_巨大科学の行き着く先
- 宇宙背景放射と宇宙の果て_宇宙は何色?
- 第9章 宇宙の将来、宇宙論の将来
- 宇宙は将来どうなるのか
- 暗黒エネルギーによる宇宙膨張の加速
- 加速膨張を始めた宇宙の運命
- 銀河の運命
- 君は生きのびることができるのか
- 宇宙論に残された問題
- 暗黒物質研究の展望
- 暗黒エネルギーという巨大な謎
- 暗黒エネルギーの解明に挑む
- おわりに
はじめに
「宇宙の果てに、現代の最新宇宙論はどこまで迫り、答えることができるようになったのでしょうか。
宇宙論やその基となる相対性理論、また星や銀河の形成と進化などについて最新の成果を説明しなければなりません。
宇宙をテーマとしつつも、天文学の基礎知識なくても読めるように心がけました。
ビッグバンの前にどこまで迫れるか
興味を持っているであろう、時間や空間方向に広がる「宇宙の果て」について、現時点では科学で明確な回答をすることができません。しかし、アインシュタインのように想像することはできます。
アインシュタイン方程式は、空間のゆがみを表す「曲率」と、部室のエネルギー密度が等しいとするものです。過去のある時点において密度が無限大になるということは、宇宙膨張率も無限大になり、数字的に意味をなしません。相対性理論の枠組みでは宇宙誕生の瞬間に迫ることができないのです。それ以後の時間進化を解く方程式になっています。
ビッグバンの初期条件がどのようなものであるかについて、何もかかれていません。
初代星の誕生
暗黒物質を主成分とするハローができても、それで直ちに銀河ができるわけではありません。銀河の基本的な構成要素は星です。
原子銀河の卵となるハローに取り込まれたガスの主成分は水素であり、その温度は1000度から1万度となっています。そのガスは水素分子や水素原子が放出する電磁波によって冷えていくのです。
こうしてハローの中心部ではガスが温度と密度を高めていきます。この過程で新しくエネルギーを取得と、放射によるエネルギー損失をバランスが取れるまで繰り返し続くのです。
1000万度の高温に達すると水素原子核が合体をはじめ、最終的に4つの水素原子核が合体してヘリウム4原子核となります。恒星の誕生です。
かつて宇宙の誕生後の起きた反応が、星の中で起こるようになりました。
ニュートリノ
宇宙の見る目として、高速でまっすぐに進む波や粒子であれば、光と同じように宇宙を「見る」ことができるはずです。そのような宇宙からの「メッセンジャー」として長年期待されてきたのが、ニュートリノと重力波となっています。
ニュートリノと重力波は透過力が強く、物質との相互作用が弱いので、検出器与える信号が小さいです。
太陽のニュートリノに続いて超新星からニュートリノが検出されてニュートリノ天文学の幕が開きました。宇宙のなかでは我々の近傍の範囲で超新星爆発が起きなければニュートリノは検出できないのです。スーパーカミオカンデが稼働してすでに20年以上経ちますが、いまだにニュートリノは検出されていません。
ニュートリノが検出されたとあれば、天文学者が狂喜乱舞するはずです。
ガンマ線バースト
1960年代、核爆発で生じるガンマ線をとらえる人工衛星を軌道に上げて、観測された天体がガンマ線バーストです。
当初は軍事機密だったため、天文学の論文誌にのるのは1973年になりました。
現在では、ガンマ線バーストには継続時間で約2秒を境として、短いものと長いものの2種類あることがわかっています。
長いガンマ線バーストは、残光が消えた後に超新星として光っていることがわかっており、特殊な超新星を生み出しているのです。
超新星と言われるものは実際には数週間ほどかけて明るくなっていくのが普通です。ガンマ線バーストは、屛以下という短時間で輝き始めます。彗星や超新星はこれに比べると、のどかなものと言えるでしょう。