声の科学/著者:斉田晴仁

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書籍情報

タイトル

歌う医師があなたの声をデザインする

声の科学 改訂版

発刊 2024年6年10日

ISBN 978-4-276-14227-5

総ページ数 199p

著者

斉田晴仁

医学博士 ヴォイステック音声研究所所長
さいだ耳鼻咽喉科クリニック院長

咽喉手術の勉強、音声言語医学の勉強、声楽発生やオペラ歌唱などを学び、現職。

出版

音楽乃友社

もくじ

  • はじめに
  • 改訂にあたって
  • この本の読み方
  • 序章 声はどのようにして作られるでしょうか
    • 良い声とはどのような声でしょうか
    • 基本的な声の仕組み:声はどのように作られるでしょうか
    • コラム 声の文化の歴史
  • 第1章 呼吸 声は呼吸から 息は声のみなもと、どのように息が作られるでしょうか
    • 呼吸運動とは
    • 呼吸運動にかかわる骨格
    • 呼吸運動にかかわる筋肉:はじめに
    • 呼吸筋 胸部の筋肉
    • 呼吸筋 腹部の筋肉
    • 呼吸筋 横隔膜
    • 気管、気管支、肺の構造
    • 呼吸運動のメカニズム
    • 胸式呼吸と複式呼吸
    • 呼吸法の評価法
    • 望ましい呼吸法とは 呼吸法Saida分類
    • コラム 呼吸運動と健康思想
  • 第2章 声帯振動 息はどのようにして声になるでしょうか
    • 声帯はどこにあるか
    • 喉頭の枠組みを構成する軟骨
    • 喉頭の枠組み内の軟骨
    • 頸部の筋肉_外喉頭筋
    • 声帯の診察法
    • 声帯の筋肉_内喉頭筋①
    • 声帯の筋肉_内喉頭筋②
    • 声帯の筋肉_内喉頭筋③:まとめ
    • 声帯振動とは
    • 声帯はなぜ振動するか①
    • 声帯はなぜ振動するか②
    • 詳しい声帯振動の1周期 EGG(Electro Glotto Gram)
    • 大きい声、小さい声、高い声、低い声
    • 地声のハイスピードカメラでの声帯振動
    • ボーカルフライのハイスピードカメラでの声帯振動
    • 裏声のハイスピードカメラでの声帯振動
    • ホイッスルボイスのハイスピードカメラでの声帯振動
    • 特殊な声帯振動 ささやき声まど
    • 地声発声での音色の変化について
    • 吸気性発声と声帯ポリープの声帯振動
    • コラム 歴史的背景からの”声区”とは何か
  • 第3章 構音、共鳴 声の響きや言葉はどのように作られるでしょうか
    • 構音と共鳴
    • 構音と共鳴に関わる口腔の構造
    • 構音と共鳴に関わる咽頭の構造
    • 顎関節の構造と運動
    • 声道と共鳴周波数
    • 母音の声道形態と音声
    • 口腔内の形と音声の関係
    • 声道形態の変化と音色の変化
    • 子音の生成
    • 子音の音響的特徴
    • 歌など芸術での共鳴とは何か
    • 口腔での共鳴
    • 咽頭腔、下咽頭腔での共鳴
    • 中咽頭腔での共鳴
    • 上咽頭腔での共鳴
    • 鼻腔での共鳴
    • 副鼻腔での共鳴
    • 歌声の共鳴について
    • コラム 女性の歌声
  • 第4章 調節機構 発生や発音はどのように調節されるでしょうか
    • 声の調節機構の基礎
    • 聴覚
    • 体壁振動
    • 声区変換機構(地声⇔裏声) 頭声と胸声は何を意味するのか
    • 声域と声種
    • 呼吸と喉頭調節:息止め
    • 呼吸と喉頭調節:声の出し始め(起声)
    • 声帯振動が起こる条件
    • 呼気、喉頭、声道調節と音声の関係
    • 姿勢とバランス
    • 発声のための姿勢と支え
    • 感情表現と声
    • コラム 科学的な発声法
  • 第5章 ボイスマップ 発声法を理論的に評価する方法とは
    • 声をデザインするボイスマップとは何か
    • ボイスマップE-L
      • 呼気調節と喉頭調節
      • 地声⇔裏声返還、ポピュラーと声楽発声
      • ボーカルフライとホイッスルボイス、息漏れ声
      • Voice Range Map 実際の使用法
    • ボイスマップL-V
      • 喉頭調節と声道形態調節
      • 縦軸 声門閉鎖性と音色の変化
      • 横軸 声道形態と音色の変化
    • ボイスマップE-L、L-V:実際の使用法
    • 2つのボイスマップの使用法と聴覚印象
    • コラム ボイスマップは声の設計図
  • 第6章 ボイスマップの応用 声を自由にデザインしよう
    • ボイスマップで表す地声と裏声の発声法
    • ボイスマップで表す裏声発声、ミックスボイスとは
    • ボイスマップで表す地声裏声返還の芸能
    • 特殊な発声法
    • コラム 声の揺れ、ビブラートの科学
  • 第7章 声の健康 声をこわさないようにする音声医学
    • 声の健康
      • 声帯の血管走行
      • 声帯の乾燥で起こるトラブル
      • 声帯振動で起こるトラブル
      • 年齢による声の変化
      • 声帯の局所的なできもの、喫煙、ホルモンの影響など
      • 神経系の異常による声のトラブル
      • 呼吸パターンと声のトラブル
    • コラム ものまねの科学的解析
    • コラム 人類はどのようにして言葉を獲得したか
  • あなたの声の診断手帳
  • 終わりに

書籍紹介

声の科学的基盤

 斉田氏は、医師でありながらもプロの歌手としても活躍しているというユニークな経歴を持つ人物です。その経験を活かして、声の構造や機能についての科学的な解説を行っています。声帯の働きや呼吸法、共鳴の仕組みなど、声を生み出すメカニズムを詳細に解説し、それがどのように声質や声量に影響を与えるかを丁寧に説明しています。

実践的なアプローチ

 本書の魅力は、理論だけでなく実践的なトレーニング方法が豊富に紹介されている点です。例えば、正しい発声方法や声帯のストレッチ、発声練習の具体的な手順など、読者がすぐに取り組めるエクササイズが満載です。これらの方法は、一般の人々だけでなく、プロの歌手や声優、アナウンサーなど、声を職業とする人々にも非常に有益です。

改訂版の特徴

 改訂版では、最新の研究成果や技術が反映されており、より深い理解を得ることができます。特に、声のトラブルに対する予防法や治療法についての情報が充実しており、声を大切にしたい人々にとって貴重なリソースとなっています。また、音声分析ツールの活用方法についても触れられており、自己診断や改善に役立てることができます。

声の知識を深めたい方へ

 『歌う医師があなたの声をデザインする 声の科学 改訂版』は、声の本質を知りたい、声を改善したいと考えている全ての人におすすめの一冊です。斉田晴仁氏の専門知識と豊富な経験が詰まった本書は、読者にとって価値あるガイドとなるでしょう。声の重要性を再認識し、自分の声を最大限に活かすためのヒントを得ることができます。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

実際の呼吸運動

 呼吸運動は、1分間に12~20回行われ、心臓の拍動と同じように自動的に繰り返されます。これは、呼吸筋と吸気筋が交互に周期的に収縮することによるものです。

 呼吸の調節機構は呼吸筋そのものにはなく、脳幹(延髄)の呼吸中枢にあります。呼吸中枢の近くや頸動脈、大動脈にある化学受容器が二酸化炭素濃度を検知し、その情報に基づいて、神経を介して呼気筋や吸気筋に指示を出し、生体が健常な状態を維持できるように呼吸運動を行います。

 歌唱や会話の発声では、日常的な呼吸運動とは異なり、意図的に呼吸を調節して、発声に適した呼気(呼気量と呼気圧)を得るようになります。通常の安静時の呼吸では、呼気筋はほとんど働かず、無意識のうちに呼気が行われます。しかし、歌ったり大きな声を出したりする場面では、腹圧を高める必要があるため、呼気筋を意図的に調節します。

声帯振動数

 声帯は、成人の話声では男性の場合1秒間に110~130回、女性では210~250回ほど振動します。女性の高い歌声では、1200回にも達します。声帯振動は非常に高速のため、直接人の目で観察することはできません。そのため、ハイスピードカメラなどを用いて観察することが一般的です。

 声帯には厚みがあり、表面は柔らかい粘膜で覆われているため、柔軟性があります。この厚みのおかげで、声帯が離れて呼気が通過し、再び閉じるときに空気の断裂が生じ、これが声の元となります。

 高い声は、声帯振動の回数が多い声であり、低い声は振動の回数が少ない声です。高い声を出すためには、内筋(甲状披裂筋)を含む声帯ヒダが前筋によって引き伸ばされ、声帯が長く薄くなります。この結果、振動数が増えて高い声が出せるようになります。逆に、低い声を出すためには、声帯ヒダが弛緩して短く厚くなり、振動数が減ることで低い声になります。

共鳴とは

 歌ったり大きな声で話したりすると、身体のさまざまな部位が響くように感じることがあります。そのため、歌の指導者はよく「頭やお腹に響かせて歌うと良い」とアドバイスをします。

 しかし、音響学的には声の共鳴は主に声帯から口唇までの空気の通り道、つまり声道で起こり、実際には頭やお腹が共鳴することはありません。

 芸術的な表現で言われる「響く感覚」は、実際には体壁振動と呼ばれる現象です。この振動を一定の響きで保ちながら、発音だけを変化させることができます。これは直接見たり感じ取ったりできるものではないので、調整するためには、声帯を取り囲む部位の筋緊張や振動感覚を身につける必要があるでしょう。

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