ロシア・ウクライナ戦争

※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

書籍情報

タイトル

ロシア・ウクライナ戦争

歴史・民族・政治から考える

発刊 2023年9月30日

ISBN 9778-4-490-21091-0

総ページ数 367p

著者

塩川信明 東京大学名誉教授。専門は、ロシア・旧ソ連諸国近代史

松里公孝 東京大学大学院法学政治学研究科教授。専門はロシア帝国史、ウクライナや旧ソの現代政治

大串敦 慶応義塾大学法学部政治学科教授。専門はロシアおよび旧ソ連諸国の政治

浜由樹子 静岡県立大学大学院国際関係学研科准教授。専門は、ロシアの思想・イデオロギー、国際関係史

遠藤誠治 成蹊大学法学部教授。専門は国際政治学・平和研究

出版

東京堂出版

もくじ

  • はしがき 塩川信明
  • 第1章 総論_背景と展開 塩川信明
    • はじめに
    • 背景
      • ウクライナとロシア
      • 国際的文脈_冷戦終焉後のNATOとロシア
      • クリミヤおよびドンバス
    • 展開
      • 2014-21年
      • 2022-23年
    • おわりに
    • 脚注/参考文献
  • 第2章 ルーシの歴史とウクライナ 松里公孝
    • はじめに
    • ルーシ世界の形成(9-12世紀)
    • 東西ルーシの分裂(13-14世紀)
    • 教会合同とルーシ世界の変容(15世紀)
    • ポーランドとカトリックの攻勢
    • ゲームチェンジャーとしてのコサック
    • ルーシ正教会の再統一
    • ルーシの再統一(18世紀)
    • 19世紀ロシア帝国下のウクライナ
    • まとめ
    • 脚注/参考文献
  • 第3章 現代ウクライナの政治_脆弱な中央政府・強靭な地方政治 大串敦
    • はじめに
    • なぜ脆弱な中央政府が生まれたのか
    • 地方閥が競合する体制
    • ユーロマイダン革命とドネツィク閥の解体
    • ポロシェンコ政権_東部エリートの分裂と反ロシア・カード
    • ゼレンシキー政権_ポピュリスト体制誕生の背景
    • ロシア侵攻後のウクライナ_戦時体制への変容
    • おわりに
    • 脚注/参考文献
  • 第4章 「歴史」をめぐる相克_ロシア・ウクライナ戦争の一側面 浜由樹子
    • はじめに
    • ウクライナと「ウクライナ史」
    • ウクライナとロシアの歴史認識問題
      • ステパン・バンデラとは誰か
      • バンデラ論争
    • 歴史の政治紛争化
    • ロシアとウクライナのミラー・ゲーム
    • おわりに
    • 脚注/参考文献
  • 第5章 自由主義的国際秩序とロシア・ウクライナ戦争_正義と邪悪の二分法を超えて 遠藤誠治
    • 課題の設定_ロシア・ウクライナ戦争を考える視角
      • 西側諸国が理解する「戦争の構図」
      • 正義と邪悪の二分法の問題点
    • 自由主義的国際秩序とは何か
      • 自由主義的国際秩序の論理
      • 大規模戦争後の国際秩序の再編成
      • 1990年代の時代状況
    • 冷戦後の安全保障体制
      • 冷戦後の秩序形成とせめぎ合い
      • 人権のための戦争と体制転換のための戦争
      • 戦略兵器をめぐる問題
    • グローバリゼーションの中の体制移行
      • 巨大な社会主義国家の変革に伴う困難
      • グローバル化の中のオリガルヒ
    • 冷戦後の国際秩序の問題点
    • おわりに脚注/参考文献
  • 略年表
  • 索引
  • 執筆者略歴と執筆担当章

ウクライナ世論調査をみる

 キーウ国際社会学研究所が長期間にわたって積み重ねてきた世論調査があります。その調査によると、2014年の直前までは、ロシアに対して肯定的な感情を抱いていたのです。2014年からは反ロシア感情は半数ほどでしたが、2022年に始まった戦争で、完全に否定的になったのです。

 古くから対ロシアの感情があったわけではなく、プーチンの戦争によって新しく生まれました。今日ではロシアに対して憎悪が圧倒的になっているのは周知の通りでしょう。

政治組織は弱いまま

 ゼレンシキーは進行直後にキーウに留まる決断をしたことで、多くのウクライナ人と西側の人々にとって、カリスマ性を得えました。低迷していたゼレンシキーの支持率も9割を超えたほどです。

 しかし、議会と政党は機能を失い、ゼレンシキーが議会で活動する時間は少なくなっています。「国民の僕」党の会派は内部対立や議員の流出が相次いで2022年12月の時点で、過半数を維持していません。

 東部政党は「親露」ということで、活動を禁止されました。生活党は「国民の僕」党と協調関係をつくることで多数派をつくるという構図が出来上がっています。

 ゼレンシキーの最大の敵ポロシェンコによって、欧州連帯党への締め付けが強化されています。党と関係の近いテレビ局の放送が停止されるなどの問題も起こっているのです。議会が機能不全のため、政府は大統領事務局の一部門のような状態にあるといいます。

ナチとの協力関係

 1938年、OUNの創始者がソ連の秘密警察に殺害されたことをきっかけに、組織は、OUN-MとOUN-Bに分裂しました。

 ドイツがポーランドに侵攻をすると、OUN-Mはポーランドとソ連の両方を潰したいので、ドイツ側で戦っています。カスピ海にまで広がる「大ウクライナ」建国をヒトラーに進言しています。

 OUN-Bはユダヤ人と戦うと意思表明をして、「ユダヤ人を殺せ」というビラをまきました。彼らはドイツ軍の制服に身を包みます。

 1941年6月にウクライナ「国家」をOUNは宣言したが、ドイツは「ウクライナ人のためのウクライナ国家」を建設することを許さなかったのです。ヒトラー国民社会主義に協力する国としての存在しか認めません。

 そして、ウクライナ、ベラルーシ、ポーランドでユダヤ人虐殺に関与し続けて、ウクライナ領内で犠牲になったユダヤ人は150万人と言われ、「ナチ協力者」として分類された歴史があります。

ロンドングラード

 オルガルヒと呼ばれるようになった資本主義の過程で政治的関与した人々は、巨万の富の多くを西欧諸国の金融市場に投資していきました。

 ロマン・アブラモヴィッチによるチェルシー(イングランド・プレミアリーグのサッカーチーム)の買収は、そうしたロシア・マネーの流出を表現しています。

 ロンドンあるいはイギリスの一部には、ロシア・マネーとの結びつきから巨大な利益を得る人々がいました。

 このオルガルヒたちが、共通の利益保持者としてロシアを戦争回避のほうこうに向かわせることが期待されていたのですが、プーチンに従うことでしか生き延びる術がないので、戦争防止のために行動することはできなかったのです。

 これをプーチンは、ウクライナへの軍事侵攻に対して反抗措置はとらないだろうと、誤った予測をしたのかもしれません。

購入リンク

amazon

(Visited 20 times, 1 visits today)
関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です