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目次
書籍情報
商店街の復権
_歩いて楽しめるコミュニティ空間
発刊 2024年2月10日
ISBN 978-4-480-07608-3
総ページ数 376p
広井良典
遠藤浩規
千葉敬介
今井隆太
神崎浩子
前田志津江
宇都宮浄人
加藤猛
小池哲司
柏尾哲哉
ちくま書房
- はじめに
- 第1章 商店街の復権―コモンズとしての中心市街地再生に向けて
- 私の「商店街」経験_日本・アメリカ・ヨーロッパ
- 「モール」との出会い_80年代末のアメリカ経験
- ヨーロッパでの「商店街」”再発見”_国際比較の重要性
- 「歩いて楽しめるまち」のイメージ_コミュニティ空間としての都市
- ドイツの事例から
- 日本の現状
- 新たな展開の兆し
- 高齢化そして「デッド・モール」
- 中心市街地空洞化/シャッター通り化の背景の展望
- シャッター通り化の三つの要因
- 大規模店舗規制をめぐるドイツと日本との比較
- 【供給サイドの要因】商店の後継者問題について
- シャッター通りと耕作放棄地
- 【需要サイドの要因】消費者にとって魅力_空間
- 個店
- 「地域密着人口」の増加と商店街
- 「コモンズとしての商店街」に向けて
- 「多極集中」のビジョン
- 「エリアリノベーション」と情報サイト
- ワーカーズコープと商店街、あるいは参入主体の多様化
- 商店街における企業の役割_資本主義の構造変化?
- 商店街再生×若者支援
- 空き店舗への公的関与の強化
- 「コミュニティ商店街」の展開
- 商店街と農業・農村をつなぐ
- 商店街×デザイン
- 日本の商店街の「アーケード」の独自性
- 地域経済・産業論とまちづくり・空間デザインの統合
- 私の「商店街」経験_日本・アメリカ・ヨーロッパ
- 第2章 成長局面からみた商店街再生の実践ステップ
- 商店街を取り巻く現状と本章の目的
- 社会課題解決の場として再評価される商店街
- 主体性と持続性の重要性
- 主体性と持続性
- 商店街の分類
- 主体性と持続性の正体
- 商店街の成長局面
- 後の主体性・持続性の源泉となる震源店の存在
- ターニングポイントの存在
- 多様な価値観による活動の発展
- 商店街活動が提供する価値
- 商店街活動の分類
- 三つの活動が提供する価値
- 事例から見る成長局面と商店街活動の価値【セブン商店会:京都府長岡京市】
- セブン商店会再生の概要
- 各成長局面における分析
- 商店街活動によって還元された価値
- 商店街の再生にむけて
- 商店街ゆえの価値とは_祖母の商いを通して
- 商店街の価値が未来に繋がる可能性(東寺道親交会:京都府京都市)
- 主体的・持続的な商店街活動の実践にむけて
- 商店街を取り巻く現状と本章の目的
- 第3章 エリアリノベーションと商店街の可能性
- プロジェクトの始まり
- これからのまち、暮らしと、商店街
- 商店街の使い方を探る実験
- 可能性を残し、生かすために
- プロジェクトについて
- 三つの特徴
- 小さなエリアで同時にオープン
- 頼まれていないのに地域のことに取り組む
- 立地の選び方
- 立地選びの決め手は人
- プロジェクトのきっかけ
- まちも建物も、もっと楽しく
- 東京R不動産とは
- 人が建物を魅力的にする
- 共感が人を呼ぶ
- まちから始まり、再びまちへ
- エリアリノベーション
- 現象から方法へ
- プロジェクトとまち
- R不動産の店「おぐセンター」
- まちのリビング
- まちの〇〇の可能性
- 集まった四組の仲間と、その後の展開
- 商店街とまちの可能性
- 見据える地域や社会の像
- 暮らしの場に求められるつながり
- 場所の選び方が変わる
- 「コーポラティブ」という手法
- 面として価値を捉える仕組みが必要
- プロジェクトの始まり
- 第4章 コミュニティ的空間としての商店街
- 商店街を問いなおす
- 商店街のどこに着目するか
- 商店街活性化策の意義は十分議論されてきたのか
- 商店街活性化論を問いなおす
- どうして交流や地域社会に注目しなければならないのか
- 孤独
- 分断や排除
- 地域社会
- 商店街の社会的意義とは何か_日本の商業・都市政策とJ・ジェイコブズの街路論
- 日本の商業政策と都市政策
- ジェイコブズの観察
- どんな研究が行われてきたか
- 地元の交流が衰退しても商店街の交流は残るのではないか
- 本当に空間や環境は地域の社会に影響しないのか
- 何を調査・分析するか
- 調査方法
- 分析方法
- 倫理仮説を作る
- 理論仮説を操作化する
- 調査票調査の概要
- 分析から何がわかったか
- 商店街は交流や地域への愛着・関心を、地元店や個人店は信頼を増やす
- 商店街の社会的機能の正体
- 商店街の社会的機能の固有性と意義
- 商店街の本質は何だろうか
- コラム ホテルからまちを創る_帯広中心市街地活性化の取り組み 柏尾哲也
- 商店街を問いなおす
- 第5章 商店街復権への取り組み
- 商店街創生センターの開設
- 京都府の商店街とセンター設立以前の支援について
- その誕生と役割
- センターの主な事業
- きめ細やかなオーダーメイド型伴走支援とは?
- はじめの一歩を後押しする具体的方法
- 商店街✖〇〇
- 商店街情報の一元化・発信強化
- 伴走支援の具体的な取り組み事例
- 地域コミュニティの核とは
- コロナ禍での伴走支援_POSTコロナ社会に向けて
- 商店街の新たな価値に向けて_多機能化への挑戦
- 商店街復権のかすかな兆しと多機能化の具現
- 商店街組織の世代交代
- 若手による商店街の立ち上げ
- 多機能化の具現
- 今後の課題
- 商店街創生センターの開設
- 第6章 中心市街地再生と交通まちづくり政策
- 商店街の衰退と交通
- 30年前から続く中心市街地の衰退
- 中心市街地の衰退の要因
- 自家用車の普及と公共交通のサービス低下、中心市街地衰退の悪循環
- ダウンズ・トムソンのパラドクス
- 交通まちづくりとコンパクトシティ戦略
- 交通まちづくり
- コンパクトシティ戦略
- コンパクトシティの現実
- 交通の社会的な影響
- 自家用車に過度に依存することの弊害
- 公共交通の外部経済
- 欧州の政策
- 自動車の流入規制
- 公共交通のサービス改善
- SUMP(サンプ)_持続可能な都市モビリティ計画
- 交通政策は中心市街地活性化に寄与するのか
- 公共交通サービス改善がお出かけを後押し
- 公共交通はコミュニティの人間関係を醸成
- 今後の課題_交通がつなぐサードプレイスの創出を
- 商店街の衰退と交通
- 第7章 シャッター通りと耕作放棄地―未利用ストックの活用と効果
- シャッター通りと耕作放棄地の課題
- シャッター通りとは
- シャッター通りと耕作放棄地の共通点_未利用ストック
- 経済物理学からのアプローチ
- 経済物理学とは
- 資産交換モデル
- シャッター通りと耕作放棄地への提言
- 未利用ストック活用施策_ストックの社会保障
- 商店街と農地を結ぶ地域復権
- 資本主義経済のオルタナティブへ
- シャッター通りと耕作放棄地の課題
- 第8章 各地の事例からの示唆と展望
- 商店街×「DIYリノベーション」
- 辰野町で進められているDIYリノベーションまちづくり
- 〇と編集者が取り組む「トピチ商店街」
- 商店街×「宿泊・観光」
- 観光資源としての商店街
- 商店街に泊まるホテル「SEKAI HOTEL Tuse」
- SEKAI HOTEL Fuseを通した商店街での観光
- SEKAI HOTEL Fuseの生まれた背景と状況
- 商店街×「農業」
- 一関大町商店街と新鮮館おおまち
- 新鮮館おおまちの取り組み内容
- 商店街×「事業承継」
- 商店街の衰退と”事業承継”
- 事業承継プラットフォーム「relay」
- 行政等と連携する「relay the local」
- 商店街×「企業創業支援」
- 小さな企業と商店街
- 無印良品の”一坪開業”
- 行政がお試し出店を支援する「小回りキッチン」
- まとめ
- 商店街×「DIYリノベーション」
はじめに
人口20万人程度以下の地方都市の中心部は”シャッター通り”となっており、空洞化しています。
一方、若い世代がカフェやコワーキングスペースなど「コミュニティの拠点」として商店街に関心を向けるケースや、”遠くのモールにクルマで買い物に行くのが難しい”高齢世代が、自然な形で商店街に足を向けているようです。
本書は、商店街あるいは中心市街地のもつ新たな意味や価値に注目し、具体的事例や国際比較、まちづくり・交通などの公共政策等々、幅広い角度から再生に向けたステップを提案します。
共感が人を呼ぶ
駅から20分も離れた西尾久の商店街で4店も集めるのは難しいのです。立ち上げ当初は地元の人たちは懐疑的でした。しかし、R不動産のユーザー仲間と一緒に店を出すことに期待し、リスクを背負って自分たちの拠点をつくってくる人が集まりました。
というのも、若い人たちの間では、あえて商業的な立地を避ける傾向があり、自分たちの世界観を表現できるような場所を求めています。牛丼屋とドラックストアに挟まれて、独特の世界観を出すのは難しいのです。
また、SNSの普及で、その店だけを目指して遠くから訪れるお客様がいます。働き方や暮らし方の変化によって、副業で店を持ちたいと考える人や、生活の場の近くで店を持ちたいと考える人も増えています。商店街には新しい需要が増えていることも事実です。
分析方法
明らかにしたいのは、商店街による社会的機能です。利用する住民に何かを提供する因果関係を明らかにしなければなりません。そのためには、どこの商店街で、利用する住民はどういう人で、降下は何であるかを決めないと検証できないのです。
重回帰分析で、複数の原因を仮定して調査対象への影響力を調べると、原因に対してどのような影響がある可能性が高いとわかるようになっています。それゆえ、全ての原因にたいして考慮できる手法とはなっていないのです。
つまり、仮説に至るまでの理論的背景が重要となっています。
商店街に泊まるホテル
商店街を宿泊の場としている先進事例として大阪府東大阪市の「SEKAI HOTEL Fuse」を取り上げます。
商店街の中に「SEKAI HOTEL Fuse」が7棟あり、いずれも店舗や居住施設だったところです。リノベーションして宿泊できるように整備されています。この7棟は商店街のなかに分散して立地していて、コンセプトは町ごとホテルとしています。
入浴に銭湯、夕食は居酒屋、喫茶店で一休みといった形で、店舗を巡ることが前提となっているのです。商店街の日常を体験することは、旅行客にとって観光になるのだそうです。
イタリア発祥の空家を活用するリノベーションを、日本の商店街に当てはめて事業とした取り組みだと言えます。