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Focus
話題の最新研究やニュースをコンパクトに紹介するコーナーです。
毎月いくつかの情報を紹介されています。ここでは個人的におもしろかった記事を、さらにコンパクトにしてピックアップします。
喉のかわきがいやされるしくみ
ジャンル:生物学
出典 Sensory representation and detection mechanisms of gut osmolality change.
Nature, 2022年1月26日
食欲や満腹感は、抹消組織と脳との密接な相互作用によって引き起こされます。水を飲むときは初夏機関で水分が吸収される前に得られているのです。喉や胃腸が刺激され、内臓で浸透圧の変化を感知すると、渇きの感覚が抑制されることが知られています。
アメリカ、カリフォルニア工科大学のオカ博士らの研究グループはマウスを用いて、浸透圧の変化に対する迷走神経の応答を調べました。
腸に直接水をながしたときに生じる刺激は、求心性迷走神経を活性化したが、他の栄養などの刺激では活性化されなかったのです。さらに、肝臓の周辺にある求心性迷走神経も、水に反応しました。
また、この神経は直接浸透圧の変化を感知しているのではなく、水分の吸収をになうホルモンによって活性化していることもわかったのです。
今回の発見から、腸での浸透圧の変化によってホルモンが分泌され、求心性迷走神経が感知することで、かわきが癒されることがわかりました。
まとめ
●マウス実験で渇きが潤う仕組みがわかった。
●水分を吸収することで腸での浸透圧が変化し、ホルモンを分泌する。
●ホルモンの分泌により求心性迷走神経が感知して、渇きが癒される。
AIが古代文字を解読
ジャンル:人類学
出典 Restoring and attributing ancient texts using deep neural networks.
2022年3月9日
古代の碑文の多くは断片で残されているため解読がむずかしいのです。
イギリス、ディープ・マインド社のアセール博士らは「イサカ」というディープニューラルネットワークを開発しました。
イサカは紀元前7世紀から紀元前5世紀の地中海地方でみつかった古代ギリシア語の碑文をもとに設計されています。
歴史家がイサカを補助的に用いると72%の正確さで復元できるというのです。そして、約30年の誤差で制作年代を特定できるといいます。
古代史や人文科学をこえた最先端の研究支援になりえると、博士らはのべています。
まとめ
●古代の碑文の多くは解読がむずかしい。
●イサカという碑文解読AIをつくった。
●イサカは補助的に用いると72%の性格さで復元できる。
Focus Plus
話題のニュースを紹介するコーナーです。
「第6の指」がひらく身体拡張の未来
ジャンル:工学
監修:宮脇陽一 電気通信大学大学院情報理工学研究科教授
元の記事の執筆者:山本尚恵
宮脇教授らは、ロボットと運動神経科学を専門とするガネッシュ主任研究員とともに、腕の筋肉の電気信号を検知して動かす第6の指を開発しました。
手や指を曲げる「屈筋」と、のばすための「伸筋」の両方が同時に活動したときに、第6の指が動く仕組みです。両方の電気信号を検出する特定の信号パターンのときに反応するのです。
第6の指をつけた被験者は、少しの練習のあと、全員が自分の意志で第6の指を動かせるようになりました。
人口指を装着した被験者は、自分の小指に対する間隔が希薄になったり、存在そのものを違和感を抱くことが多かったのです。
今後は意識しなくても自在に操れる人口指の開発を進めるといいます。人間の身体はどこまで拡張できるのでしょうか。
まとめ
●第6の指を開発した。
●第6の指を装着した被験者は、練習すると人口指を動かせる。
●人口指を装着した状態だと、自分の小指の存在が希薄になる。
対数目盛にすれば、感染者の推移がわかりやすい
監修:小山信也
元の記事の執筆者:山田久美
テレビのニュースなどで「再生産数」という言葉が頻繁に聞かれます。1人の感染者が平均して何人に感染させるかを表す数字です。再生産数が1より大きいと感染は拡大し、1より小さいと感染は収束します。
式にすると
再生産数:α、時間:x、新規感染者数:y
y=αx で表せる
新型コロナウイルスの感染者数が、急に増えたり、減ったりするのは、指数対数的だからです。
感染者の数位を「対数軸」で考えると、1,10($\log100$),100($\log1000$),1000($\log10000$)と、10倍ごとにメモリがふられています。
この対数実を縦軸か横軸にしたグラフを「片対数グラフ」といいます。片対数グラフにすると、変化が大きいデータの比較がより簡単になるのです。
まとめ
●感染者の数は変動が大きい。
●対数軸で考えれば、等間隔でひかくできるようになる。
●変化の大きいデータは、対数グラフを使うとわかりやすくなる。
南アメリカ動物の楽園
監修:幸島司郎 京都大学野生動物研究センター名誉教授
元の記事の執筆者:薬袋摩耶
豊かな水と自然に恵まれた生物たちの楽園
アマゾン川は季節による降水量の変化によって、水位が4~15メートルも季節変動します。春の大潮のときにみられる「ポロロッカ」は有名な潮津波現象です。
アマゾンに生息する多くの生物は、高い遊泳能力や水没への耐性、季節による移動など、環境の変化に適応した独自の進化をとげています。ほかの地域ではみられない生態をもつ生物も多いのです。
2022年に報告された熱帯雨林上層部での調査では、1か所で2週間調査しただけでも、ハエの仲間と思われる新種を500種類発見されました。
小型のサル類もアマゾンにしか生息しない固有種が多いのです。ジャガーヤピューマなどのネコ科の動物も君臨します。
しかし、熱帯の土壌はやせているうえに薄いのです。森の緑が失われれば、簡単に雨に洗い流されて、森の再生は困難になります。
アマゾンの木々が蓄えている炭素の量は、4500億トンと推定されています。この豊かな森は、二酸化炭素の吸収源として重要な役割を果たしています。それどころか、2018年まで行われた調査では、逆に二酸化炭素の放出源となっていることが報告されています。
まとめ
●アマゾンは季節変動が激しい環境であり、その環境に適応した固有種も多い。
●熱帯の土壌はやせていて、森が失われると再生が難しい。
●アマゾンは二酸化炭素の吸収してくれるが、森が失われれば逆に放出源となる。