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Focus
話題の最新研究やニュースをコンパクトに紹介するコーナーです。
毎月いくつかの情報を紹介されています。ここでは個人的におもしろかった記事を、さらにコンパクトにしてピックアップします。
飛行機を電池で飛ばすには
ジャンル:工学
出典 The challenges and opportunities of battery-powered flight
Nature, 2022年1月26日
アメリカ、カーネギーメロン大学のヴィスワナサン博士らは、電動航空機の実現に必要とされる電池の性能について、科学的な見地から検討を行いました。
実現するには、高い安全性と高電圧化が不可欠です。この溶融を満たす電池として、金属リチウムを負極としフッ化炭素を正極とする二次電池システムが有望ではないかと結論づけています。
課題として、単位重量あたりの電池の出力が大きくなければならない問題があります。小型旅客機で1キログラムあたり1000キロワット時ほどのエネルギー密度が必要です。
研究開発投資資金しだいでは、10年以内に600キロワット時を達成できると期待されています。電池航空機が飛ぶのも遠い将来ではないようです。
日本の地下構造を可視化
ジャンル:地学
出典 Upper-plate controls on subduction zone geometry, hydration and earthquake behaviour
Nature Geoscience, 2022年2月3日
アメリカ、テキサス大学のアーヌルフ博士らは、日本南西部へ沈む込むフィリピン海プレートの上盤となる紀伊半島から南海トラフ域の地下構造を、自身はなどの大量のデータによって可視化しました。
紀伊半島の地下では密度の高い花崗岩が幅広く形成されており、沈み込むプレートに重い力がかかっているといいます。深部のマントルにも影響があることがわかりました。
さらに、広範囲の花崗岩は、紀伊半島での大地震発生に寄与していたことがわかったのです。
上盤のプレート構造も巨大地震の発生にきわめて重要な要素であることを意味しています。
ヒトの脳処理はサルよりも遅い
ジャンル:生物学
出典 新潟大学脳研究所プレスリリース
2022年1月26日
新潟大学の伊藤幸助准教授らの研究グループは、人を含む4種の霊長類で脳の処理スピードを計測する実験を行いました。
音が処理される大脳の聴覚野で生じる反応が、何秒後に発生するかを測定したのです。
反応のタイミングは、コモンマーモセットで40ミリ秒後、アカゲザルで50ミリ秒後、チンパンジーで60ミリ秒後、人で100ミリ秒後です。
耳で受けた音の情報が聴覚野に伝わるまでの時間はほとんど差がありません。
脳処理の遅さの順番は、脳の大きさと同じ順番になっており、神経細胞が多いほど脳処理が遅いという仮説が裏付けられました。
Super Vision
話題のニュースを紹介するコーナーです。
自動運転AIがトップ選手に勝利
監修:北野宏明 株式会社ソニーAI CEO
元の記事の執筆者:加藤まどみ
ソニーAIの開発したAIがゲーム『グランツーリスモSPORT』において、人間のTOPプレイヤーたちに勝利しました。この結果は、雑誌「Nature」でも掲載されたのです。
リアルなレースを実現する仮想空間でAIがeスポーツ選手8台に、異なるコース計3回中3回すべてで勝利しました。
勝利したAIはGTソフィーで知られ、高度な運転技術を習得するために開発されてたものです。神経細胞の仕組みを参考にしたAIの学習技術を取り入れています。
北野CEOは、「GTソフィーによる進歩は、システム制御などの分野で新たな機会をもたらすと信じています」と語ります。
地球激変 人工衛星がとらえた地上の変化
監修:小黒剛成 広島工業大学環境学部地球環境学科教授
元の記事の執筆者:中作明彦
自然環境の変化や災害、地上での私たちのいとなみなどによって、地球は変化を続けています。
リモートセンシングにより、人工衛星や飛行機を使った地球観察ができるようになりました。さらに紫外線や赤外線の波長帯をとらえるセンサーをとらえ、人間の目では見れないデータも観測できるようになりました。
縮小がつづくアラル海
アラル海は、中央アジア西部、カザフスタンとウズベキスタンにまたがる塩湖です。1960年代までは世界で4番目に大きな湖でした。
アラル海に流れ込む河川の水を、綿花や穀物を栽培するために使用しています。そのため、今は水が激減しています。
縮小したアラスカの氷河
アメリカ、アラスカ南東部のグレイシャーベイ国立公園にあるグランドプラトー氷河は、氷が失われて露出した部分が増えています。
ミシシッピ川大洪水
2019年2月22日から24日にかけての嵐により、ミシシッピ川中流にそって大規模な洪水が発生しました。歴史的な大災害です。その後も雪解け水の流入や暴風雨などによる災害が続いています。
現実味を増す宇宙戦争と衛生破壊
監修:鈴木一人 東京大学公共政策大学院教授
元の記事の執筆者:尾崎太一
国家を守る軍事衛星
戦争や人道支援、領土や領海の監視、テロ対策などに用いられる人工衛星が、軍事衛星です。
アメリカが128機、中国が109機、ロシアが106機と衛星上に飛ばしてします。日本は14機です。測位衛星、偵察衛星、気象衛星、早期警戒衛星などの種類があります。
いずれも、戦艦、戦地に使われるもので、位置情報や気象といったことから、戦略的に使われるのです。
アメリカの民間企業マクサー・テクノロジーズ社によって提供された衛星写真には、ウクライナ侵攻をするロシア軍の姿が映されています。
軍事衛星がターゲットになる?
軍事衛星システムは、リアルタイムに情報を収集できる戦略の要になります。敵国の軍事衛星を破壊することは、有効な手段となるはずです。
宇宙空間にある軍事衛星は無防備であり、攻撃するのが簡単です。軍隊やミサイル兵器がありません。
アメリカの軍事力は軍事衛星が破壊されると、軍事機能が低下することになります。
実際、ロシアや中国がその弱点をつき、人工衛星を無効化する技術の開発を進めているとして、アメリカは警戒を強めてきました。
2019年12月、アメリカは宇宙分野の活動に特化した軍隊である「宇宙軍」を創設しています。兵士や戦闘機が宇宙に出て戦うことは想定されていません。軍事衛星の開発、運用、防衛、監視、安全保障にかかわる任務を行うための組織です。
日本でも「宇宙作戦隊」という隊員20名の小さな団体が自衛隊の中で編成されています。
人工衛星を攻撃する「キラー衛星」の開発が加速
中国、ロシア、アメリカ、フランスと次々開発が進められています。ロボットアームなどの機械工学を屈指したものや、マイクロ波による無効化させる機能をもった兵器が開発されている模様です。
今も宇宙空間に大量にあるゴミ「デプリ」は、ミサイルなどの物理攻撃をしてしまうと、増やしてしまうことになります。その点でキラー衛星は、デプリを出さずに目的を遂行する特徴があるのです。
キラー衛星は、スニーク性能が高く兵器かどうかの見分けがつかない特徴があります。現在、空に浮かんでいる衛星の中にキラー衛星になるものが潜んでる可能性があるのです。アメリカ側はこのことを強く警戒しています。
宇宙戦争を阻止するためには
国家間の戦争をさけることが第一です。戦争がなくならないかぎり、宇宙戦争を阻止することは難しいでしょう。
国際社会で、宇宙空間のルールを定めるのが有効ではないか、と鈴木教授は語っています。「宇宙条約」は1967年に法律化されていますが、スパイ活動などを禁止する条文はありません。見直そうという声もあります。
宇宙ルールを破った犯人を特定できる仕組みが必要です。犯行を証明できなければ、罰することができません。
宇宙空間でも、当たり前の行動の規範をつくる必要があるでしょう。宇宙進出している企業のなかには、透明性が高い活動を行っている会社もあり、他の企業もこれを真似していくことで、暗黙の了解が造られていくことでしょう。
宇宙はロマンだけではありません。この残念な現実から、目をそらしてはならないでしょう。
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