珍事集「アホか。」の印象に残ったものを紹介

書籍情報

タイトル

アホか。

著者:百田尚樹

1956年大阪市生まれ。作家。

著書に『永遠の0』『モンスター』『影法師』『海賊と呼ばれた男』『大放言』『カエルの楽園』『夏の騎士』『偽善者たちへ』『バカの国』など多数。

巻末より抜粋

出版

新潮新書

内容

『事実は小説よりも奇なり』

 毎日ニュースを見ていると、思わず「アホか。」といってしまうような事件が山ほどあります。

 人間のアホな行動には、同じひとでも理解できないものがあります。人間の謎めいたところですが、そこが面白いともいえます。
 そんな、ニュースになる犯人、なぜかひっかかる被害者の「アホちゃうか」を集めました。

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事件の記事の最後に、百田節の毒舌があります。ファンサービスです。

全裸で空港へ

 2020年1月19日、日曜日の朝7時過ぎ、神戸・三宮から大阪空港に向かうリムジンバスに、全裸の男が乗り込んできたというニュースがありました。

 運転手からの110当番通報を受けた兵庫県警生田署の警察官が駆け付けると、そこには一糸まとわぬ34歳の男性が何食わぬ顔をして座っているではありませんか。これには現場に向かった警官も対応に困ったことでしょう。
 運転手の話によりますと、男はバスの中で服を脱いで全裸になったのではなかった。スッポンッポンでバス乗り場に現れ、そのまま乗り込むと、騒ぐこともなく座席に腰かけたといいます。その一連の動作は自然で、日常そのものの様に見受けられ、ずっと一緒に出発を待っていたようです。

 男は公然わいせつの疑いで現行逮捕されることになりました。
 男は調べに対し「よっぱらっていて、乗り込んだのは覚えていない」と供述したそうです。1月の早朝です。いくら酔っぱらっていても寒いはずです。いったいどこで服を脱いできたのでしょうか。

 男はバスから降ろされ、大阪空港に到着することはありませんでした。もしそのまま空港に到着していたら、保安検査の列には並ばなくてもフリーパスだったことでしょう。

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 おかしくみえる珍事件ですが、早朝の駅やバスによくあるパニック症状の事件です。

 現代のストレス社会はヤバいとこまできてるのではないでしょうか。

 大事な会議がある朝に寝坊した、あるいは値付けなくて酒を飲んでいたらギリギリだったときに、服を着るのを忘れて家を出てしまう。コレよくある話なんです。

 お酒を飲んだのはいつなんでしょう?
 覚えていないのはどこからでしょう?

 パニックで服を着るのを忘れてしまった人は、覚えていないと語ることが多いようです。

 わざと全裸なわけでなければ、わざわざニュースされなくても良いかもしれません。当事者はビックリだけれども….

アホ丸出しのテレビ局員

 フジテレビのお昼の番組「バイキング」で、全国一斉の緊急事態宣言が解けたあとに人出が増えたことを示したかったのでしょう。2020年5月17日の若者でにぎわう原宿・竹下通りの様子として使えられた内容が、実は宣言前の3月に撮影されたものでした。でたらめにもほどがあります。
 しかし、悪いことはできません。番組の視聴者から「あの映像は5月ではない」とのクレームが入りました。指摘者は映像の中に移り込んでいたファストフート店のポスターを見逃さなかったのです。そのポスターには、しっかりと3~4月限定の商品が写っていました。フジテレビも観念してあっさりと不正を認めました。

 テレビ朝日の「モーニングショー」でも、5月19日千葉市にあるJR蘇我駅に車両を撮影するために集まった鉄道ファンの様子を報道しました。これもまた3月に取られたものだったことが、わかりました。一瞬見えた車両の型式だけで、「写真に写っている車両は5月には千葉にない」と判断したのです。鉄道マニアおそるべしです。

 番組で使用する映像素材には撮影場所や日付が必ず記載されています。間違って使うことはあり得ません。今回の2件も意図してやったと考えるのが自然です。
 どちらの局も、アナウンサーがしれっと謝罪して終わりですからふざけた話です。

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もう、テレビ観なくていい。

側溝の哲学者

 つくづく人の性欲は千差万別だと思わせます。今、流行りの多様性というものでしょうか。

 兵庫県神戸市で、道路の側溝に入って上を歩く女性のスカートの中を覗こうとした28歳の男性社員が逮捕されう事件が2015年11月にありました。

 男は真夜中の午前3時に格子状の鉄のふたをはずして、幅約55センチ、深さ約60センチの側溝の中に入り、再びふたをして、そこに仰向けで寝そべったまま、明るくなるまで時を過ごし、朝になって通勤する女性が側溝の上を歩くのを待っていたのです。
 朝8時前、ふたから髪の毛が出ているのを不審に思い、覗き込んだところ、男が上を向いて寝ているのを発見しました。悲鳴を上げそうな事件です。数ある下ネタ事件でも、これほど凄いのはなかなかありません。

 この男は初犯ではありませんでした。2年前に同じ神戸でのことです。
 男は近くの川につながる排水口から側溝に侵入し、鉄製のふたのところまで移動しました。幅30センチの土管の中を20メートル以上も移動し、犯行におよんだというのです。
 狭く汚い土管の中を20メートル進んでまで、スカートの中をのぞきたかったのでしょう。

 鉄格子の内側からスカートの中が見えるものなのでしょうか。絶妙なタイミングでなければ見えないと思います。

 逮捕されたときに男が言った言葉です。
「生まれ変わったら、道になりたい」
 犯罪者の言葉で、これほど哲学的な名言がかつてあったでしょうか。

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う~ん、理解できない。

面白いニュースでした。

老婆が運転した理由

 2020年5月、北海道根室市の根室警察署の駐車場で、80歳の女性が運転する乗用車が鉄製フェンスを押し倒したうえ、歩道を通過し、さらに車道まで飛び出すという事故が発生しました。幸いにも、巻き込まれたひとはいません。

 女性は車を発進させた際、ハンドル操作を失敗し慌ててブレーキを踏もうとしたところ、誤ってアクセルを踏んでしまったそうです。

 実はこの女性、84歳の夫の運転免許返納手続きのために、警察署を訪れていました

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 アクセルは踏みやすい位置にあるので、どうしても踏んでしまいます。

 私も、運転免許は65歳までに返納しようと考えています。

金も貰えて女優も抱けて……そんなうまい話ある?

 人は目先の欲に目がくらむと判断力を失います。頭の切れる犯罪者は、そういうところを狙ってくることもあるので、ゆめゆめ油断はなりません。

 アダルトビデオの出演を持ちかけた男性から、現金96万円をだまし取ったとして、福岡県古賀市に住む23歳の男が逮捕されたというニュースが2019年11月にありました。

 この男はインターネットのアダルトサイトでAV男優の募集を告知し、それを見て応募してきた33歳の男性を「後で女優がきますから」などと言って撮影場所のホテルへ向かわせました。その際、身元確認と称して男性の免許証などを預かっていたのです。
 そして、急に撮影が中止になったことを伝えます。
 詐欺師は申し訳なさそうに「あなたの口座に女優に振り込むはずの出演料100万円を、間違って振り込んでしまった。今回のキャンセル料4万円を、あなたの取り分として差し引いた額を返してほしい」といいました。
 男性にしたら、av女優と会えなくなったのは残念だとしても、何もせずに4万円もらえるのなら仕方がないと、96万円をATMで引き出して、男に渡しました。

 しばらくすると、男性のもとに消費者金融から返済の督促状が届くようになったのです。詐欺師は男性をホテルに待たせている間に男性の免許証を使って消費者金融2社から計100万円を借りていたのです。
 「ギャラを振り込むから口座番号を教えて」といわれれば疑わず教えるでしょうし、身元確認が必要といわれれば免許証も渡すでしょう。「ちゃんとしている」と安心感すら覚えたかもしれません。


 実によく考えたものです。犯人はなかなかの知能犯です。
 ですが、欲に目がくらむと、知能知数がかなり落ちるようです。

 被害者男性が別の名前で再度男優に応募したところ、犯人は「カモがきた」と、ノコノコと待ち合わせ場所に現れ、逮捕にいたりました。

 この事件は、被害者も、犯人もアホということです。

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 よくできた犯罪だと思いました。「騙されるかもしれない。」と思 って、常に考えるようにしたいものです。

 avの撮影に入る前に、性病などの検査などがあると思います。主演者どうし、身体の健康と身元を確認しあう作業があるでしょう。私が思っているより、しっかりしていると思います。

 ただ、欲に目がくらんでいる状態で、こんな冷静な判断ができるとは思えません。冷静に物事を判断したいと思います。

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