※ニートが興味をもった部分を紹介します。
はじめに
経済政策が間違っていた場合、人々が貧しくなったり、仕事を失ったりする結果を招きます。間違いを正さなければ、世の中は良くなりません。
間違いを放っているようでは、「考える力」を鍛えることができないのです。本書は、「考える力」を磨いていくことを目指します。
目次
書籍情報
タイトル
楽しく読むだけでアタマがキレッキレになる
奇跡の経済教室【大論争編】
著者
中野剛志
評論家。専門は政治思想。
通商産業省(現・経済産業省)に入省しました。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を学びます。2001年に同大学院にて優等修士号、2005年に博士号を取得しました。
過去に数々の著書を執筆し、『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』はロングセラーになっています。
出版
KKベストセラーズ
財政破綻する国、しない国
財務省は、2002年の外国格付け会社宛の公開質問状で「日米などの先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と認めました。
変動相場制度の下では、自国通貨を発行する政府は、自国通貨建て国債に関し、返済の意志がある限り、債務不履行に陥ることはない。
「変動相場制の下では」の意味
第二次世界大戦後から1960年代まで、西側各国は自国通貨を米ドルと固定レートで交換することを約束する固定為替相場制度を採用していました。この制度はドル・ペッグ制とも呼ばれています。
1970年代初頭以降、アメリカや多くの先進国はせんふがドルと各国通貨の交換を約束しない変動相場制に移行しました。変動相場制の下では通貨の交換が、国際市場で決まるその時点での為替レートで行われます。
つまり、変動為替相場制度であれば、自国通貨を外貨と交換する義務がありません。自国通貨の発行に何も制約がないのです。
そして、日本国債はすべて円建てなので、もちろん返済の意志はあります。
以上を踏まえて、日本政府が債務不履行に陥ることはないことが証明できるのです。
破綻の可能性がある国とは?
アルゼンチン、ギリシャ、レバノンはGDPが日本よりもずっとすうさかったにもかかわらず、財政破綻しました。これらの国は、ドルなどの非自国通貨建てで国際を発行したり、固定為替相場制度を採用していたからです。
EUの国の中には自国通貨を放棄した国があり、ギリシャもそのうちの1つです。
ユーロ加盟国は、自国通貨をもたず、ユーロの発行権は欧州中央銀行にあります。なのでギリシャのような国はユーロ建ての国債を返済できなくなる可能性があります。
ドイツやフランスも自国通貨を発行できないので、デフォルト化のリスクが存在するということです。
まとめ
●日本は自国通貨の発行に何も制約がない。
●日本政府が債務不履行に陥ることはない。
●EUの国のなかには、デフォルト化のリスクを抱えた国がある。
バラマキ?
1997年からおよそ20年の間、日本の財政支出の伸び率は諸外国と比較して圧倒的に低いのです。
この20年間、選挙が何度もあったにもかかわらず、バラマキどころか財政支出の拡大そのものをほとんどやってこなかったことを表しています。
どの国よりも財政支出を抑制し続け、そしてどの国よりも成長しなかった国が日本です。
株式資本主義
株主の発言力が強い企業が多い経済は、「株主資本主義」と呼ばれています。
資本金10億円以上の企業では2018年の経済利益は1997年に比べて、3倍以上になっています。役員給与は1.3倍、内部留保は3倍弱、配当は6倍以上にまで膨れ上がっているのです。
しかし、株主資本では従業員給与は減り、設備投資も減少しています。
日本はどうしてこんな株主資本主義になってしまったのでしょうか。
それは、株主を強くする「構造改革」が進められてきたからです。
1999年、労働者派遣事業が製造業などを除いて原則自由化されました。
2004年には、製造業への労働派遣も解禁されています。これにより人件費が抑制できるようになったのです。
2001年、確定拠出型年金制度が導入されて、従業員は自己責任で年金を運用することになりました。これにより、従業員の終身雇用から解放されリストラがしやすくなったのです。
2001年の改正商法で新株予約権制度が導入されたことで、ストック・オプションの普及が促進されました。目的を限定せずに自社買いをできるようになったのです。これにより、経営者は利益配分を労働者よりも株主への配当に回したり、自社株の株価を吊り上げることに使えるようになります。
2014年には、少額投資非課税制度(NISA)が導入され、家計の資金を投資できるようになりました。
こうした「構造改革」は成功し、日本に「株主資本主義」が成立したのです。
2021年月の自民党総裁選以降、岸田総理に対し株主資本主義からの脱却の具体案について問いがでるなど、与野党を問わず、本質的な政策論を展開し始めています。
まとめ
●日本では株主の給与が上がり、従業員の給与や設備投資金は減少している。
●日本政府は20年間にわたり、株主資本主義を促進させる「構造改革」を行ってきた。
●最近は与野党に関わらず、本質的な政策論を展開し始めている。
アメリカの主流派経済学の変化
2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)をキッカケに、アメリカの主流派経済学者たちの考え方がかわります。アメリカの経済が低成長・低インフレ・低金利の状態が続いていたからです。
市場経済の需要と供給を自動的に調整する価格メカニズムが備わっていると信じられていたので、いつまでも景気が回復しないのは、アメリカの経済学者にとって予想外のことでした。
ハーバード大学のローレンス・サマーズ教授は、長期停滞の下では金融政策の有効性は著しく低下していると議論します。
構造改革によって生産性が向上し、供給力が高まっても、それに伴う需要の増加がおきなければデフレをおこしてしまうからです。
サマーズは財政政策を推奨しています。公共投資が最も効果的だという考えです。
バイデン政権の財務長官を務めるジャネット・イエレンは、経済学者でありながら、ビル・クリントン政権下で大統領経済諮問委員会委員長を務め、2014年から2018年にかけてアメリカ中央銀行総裁にあたる連邦準備制度理事会の議長を務めています。
彼女は積極的な財政金融政策によって、「高圧経済」を創り出してはどうかと提案しました。需要を創り出してみてはとのことです。需要を増やし、積極的な投資を働きかけ、生産能力を拡大するという長期的な成長戦略を期待しています。
バイデン政権は財務長官にジャネット・イエレンを任命しました。つまり、財政政策こそが成長戦略という考えが採用されたということなのです。
まとめ
●2008年のリーマンショックから、アメリカの主流派経済学の考えが変わり始めた。
●アメリカの経済学者中で、財政政策といった公共投資が効果的といった意見が多くなっている。
●財政政策を支持するものをバイデン政権は任命した。
感想
このブルグ記事内では、個人に対しての否定的な意見はできるだけ書かないようにしました。なので、誰かを否定して経済学について考えてみましょう。というこの本のコンセプトとは少し違ったものになってしまったかもしれません。
アタマがキレッキレになるという表現は何を指しているのか謎ですが、きっと何かがキレるのでしょう。
論争というからには、対話するような感覚を読んでいて感じるものかと思っていましたが、違いました。
否定した物事を分解して、わかりやすく解説するといった内容です。アハ体験や幸福感でアタマのてっぺんあたりが反応し、頭がよくなるといったものでもありません。あくまでも知識や意見を学ぶ書籍です。
経済について知りたい、週刊誌が好きだ。という方にはオススメの一冊となっております。
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