異界にふれるいニッポンの祭り紀行/著者:大石始

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書籍情報

タイトル

異界にふれるニッポンの祭り紀行

発刊 2024年5月21日

ISBN 978-4-86311-405-0

総ページ数 246p

著者

大石始

文筆家。

旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」主宰。世界各地の音楽や祭りを追いかけ、地域と風土をテーマに取材・執筆を行っている。

出版

産業編集センター

もくじ

  • はじめに
  • 恐ろしいけどありがたい男鹿の風物詩――ナマハゲ(秋田県男鹿市)
  • 異形の人々が踊る羽州の奇習――加勢鳥(山形県上山市)
  • 野菜で作られた獅子頭に農村のクリエイティヴィティーを見る――棧俵神楽(新潟県新潟市)
  • 巨大な龍蛇がロードサイドをゆく――脚折雨乞(埼玉県鶴ヶ島市)
  • 二匹の鯉がさばかれる神仏混淆の儀式――まないた開き(東京都台東区)
  • 笑顔溢れる大らかな農耕儀礼――徳丸の田遊び(東京都板橋区)
  • 鹿ん舞から浮かび上がる「いのち」の多様性――徳山の盆踊り(静岡県川根本町)
  • 祭りと共に生きる人々の強さと美しさ――吉原祇園祭(静岡県富士市)
  • 夜明けの門前町に浮かび上がるもの――おわら風の盆(富山県富山市)
  • 大青蛙が愛想を振りまく奇祭――蓮華会・蛙飛び行事(奈良県吉野郡吉野町)
  • 二体の鬼が暴れ回る修正会の祭り――田遊び・鬼会(兵庫県加西市)
  • 熊野信仰の聖地に始源の火が灯る――御燈祭り(和歌山県新宮市)
  • かんこ踊り王国、三重を訪ねて――佐八のかんこ踊り(三重県伊勢市)、松ヶ崎かんこ踊り(三重県松阪市)
  • 世界が注目する「地域のエンターテイメント」――石見神楽(島根県浜田市、大田市)
  • 異形の男たちと泣き叫ぶ子供たち――ヨッカブイ(鹿児島県南さつま市)
  • 夏の南九州に華開く太鼓踊りの楽園――伊作太鼓踊り(鹿児島県日置市)
  • 謎めいた火の祭りが世界を更新する――ケベス祭(大分県国東市)
  • 集落の悪霊を祓う南島の来訪神――パーントゥ(沖縄県宮古島市)
  • おわりに

書籍紹介

祭りの奥に潜む「異界」

 大石始氏は、各地の祭りを巡りながら、その土地土地に根付く独特の風習や信仰に触れます。例えば、青森の「ねぶた祭り」では、巨大な灯籠が夜の街を彩り、まるで異界から現れたかのような迫力を感じさせます。また、沖縄の「エイサー祭り」では、太鼓のリズムに合わせて踊る人々が、先祖の霊と交信するかのような神聖な雰囲気を醸し出します。

著者の視点とアプローチ

 まるで読者を自らの旅に同伴させるかのようです。彼の視点は観察者でありながらも、時には祭りの参加者としての体験を交え、その場の空気感を生き生きと描写します。特に、祭りの裏に潜む信仰や歴史、そしてそれが現代にどのように受け継がれているのかについての洞察は、非常に興味深いものがあります。

異界と現代の交差点

 この書籍の魅力は、単なる祭りのガイドブックに留まらず、異界という視点から日本の文化や社会を読み解く試みです。祭りを通じて、現代社会における人々の絆や、失われつつある伝統の重要性を再認識させられます。また、異界との接点を持つ祭りが、どのようにして地域のアイデンティティを形成し、維持しているのかについても考えさせられます。

日本の祭りを楽しむ

 日本各地の祭りを異界という視点から紐解くことで、祭りの持つ深い意味や価値を浮かび上がらせます。大石始氏の細やかな観察と深い洞察力によって、読者は普段とは違う角度から日本の祭りを楽しむことができるでしょう。この書籍は、日本文化に興味を持つ人々や、祭りの本質に触れたいと願うすべての人にとって、必読の一冊です。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

まないた開き

 まないた開きの当日に配布された資料には、「飯沼の天神の神主の夢に天神が現れ、毎年御手洗池の鯉を二匹贈るべしと伝えた」という逸話が掲載されていました。

 この逸話に基づき、現在も茨木県常総市の大生郷天満宮から報恩寺へ二匹の鯉が送られています。この儀式は700年以上も続いています。

 朝10時から「まないた開き」が始まりますが、その前に9時半に報恩寺に鯉が届くと、まず読経が行われます。読経が終わると、鯉がまな板の上に置かれ、四條流庖丁で捌かれます。四條流庖丁は日本料理の代表的な料理法、作法の1つとされています。

 儀式が終わった後には、事前に調理された鯉こくがふるまわれ、その滋味あふれる味を楽しむことができます。

田遊び・鬼会

 兵庫県加西市上万願寺町の東光寺で行われる「田遊び・鬼会」は、450年近い歴史を持つ伝統的な祭りです。地元の古文書によれば、この祭りは室町時代末期に始まり、幾度かの中断を経て現代に至っています。

 祭りでは、苗代作りから苗取りまでを模擬的に演じる「田遊び」と、赤鬼と青鬼を主人公とする「鬼会」が行われます。東光寺の鬼面は、愛嬌のある不思議な魅力を持ち、毘沙門天や不動明王の化身とされる鬼が、ここでは薬師如来の化身とされています。踊りの際には「鬼っ子」の面が黒光りし、不気味ながらも決して怖くありません。

 会場内のブースでは、地元の方々が手料理をふるまいます。里芋や鶏肉が入った「鬼汁」が100円で販売され、「鬼の子ロッケ」というコロッケも100円以下で提供されます。スピーカーからは演歌が流れ、ゆったりとした雰囲気が漂います。

 鬼会の鬼は歳神であり、山の神であり、田の神でもあるとされています。田遊びと鬼会を一緒に行う地域は少なく、保存会の方は「鬼会は農耕儀礼です」と断言しています。この祭りは、地元の伝統と文化を深く感じることができる貴重な行事です。

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