※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。
目次
書籍情報
語彙力がないまま社会人になってしまった人へ
山口謠司
大東文化大学文学部教授。博士(中国学)
英国ケンブリッジ大学東洋学部共同研究院などを経て現職。
専門は書誌学、音韻学、文献学。
三笠書房
- はじめに
- 第1章 なぜ、社会人には語彙力が求められるのか
- 語彙力があれば、人生が変わる!
- できる人とは「頭の中を言語化できる人」
- 社会人としての「知性」と「教養」
- 「語彙力」と「理解力」は表裏一体
- 話を「短く」「わかりやすく」伝えるために
- 言葉の力で人を動かすことができる
- 「識字率が高い」=「語彙力がある」ではない⁉
- 第2章 最低限知っておきたい「知性」と「教養」を感じさせる語彙
- 仰るとおり
- 「なるほど」が口グセの人は、信用されない
- 「お」「ご」
- ほとんどの人が知らない日本語のルール
- 幾重にも御礼を申し上げます
- 「一度で深く感謝する」スマートさを
- 慶賀
- 相手を祝うあいさつは、社会人としての基礎
- 拝承
- 「わかりました」「了解しました」では、社会人として失格
- 格別
- この一言が「大人の雰囲気と品格」を醸し出す
- 仰るとおり
- 第3章 仕事で結果を出すために知っておきたい語彙
- 乖離
- 「食い違い」を強要のある言葉に言い換える
- 概ね
- 「だいたい」「おおよそ」以外の知られざる意味
- 近似値・中央値・平均値・最頻値
- 説明がうまい人ほど「数字に関する用語」を使いこなす
- 相対的・絶対的
- 「科学的な規則性」があるか否かで使い分ける
- 敷衍
- ビジネスに必要な「抽象的なものを具体的に説明する」能力
- コモディティ
- カタカナ語は分割してみるとわかりやすい
- チャンクダウン・チャンクアップ
- 「魂を下げる」「魂を上げる」とは?
- 乖離
- 第4章 よく耳にするけど意味をしっている人は少ない語彙
- 忖度
- 多くの人が誤った文脈で使いがちな日本語
- 相殺
- ビジネスとは切っても切り離せない、お金に関する用語
- 代替
- 「だいがえ」という読み方は正しいのか
- 順次・逐次・随時
- 「受身」「能動」「条件」が使い分けるコツ
- 汎用
- 「ぼんよう」と読んでしまいがちな頻出後
- セグメンテーション
- 常識として知っておきたい「マーケット用語」
- 傍ら痛い・片腹痛い
- 読み方は似ていても、意味は全く違う
- 斟酌する
- お酒を「くむ」ように、相手の気持ちを「くむ」
- 忖度
- 第5章 多くの社会人が誤用してしまっている語彙
- 的を射る
- 的は「得る」ものではなく「射る」もの
- 言葉を濁す
- 6人に1人が間違って使っている
- 耳をふさぐ
- 「耳をそむける」ことはできない
- 溜飲を下げる
- 「溜飲」の意味を理解すれば、間違えることはない
- 踏襲
- 「襲」の本来の意味は「攻める」「襲う」ではない⁉
- 瑣末・些末
- 「重要でない小さいこと」を表現するための日本語
- 惹起
- 「若」は「年齢が浅い」という意味だけではない⁉
- 的を射る
- 第6章 感情をうまく表現するために身につけておきたい語彙
- 真摯
- 「素直さ」だけでは、社会人として不十分
- 尽力
- 論理的かつ感情的に、力を尽くして訴える
- 丹精を込める
- 「丹」には、神様と深い関係がある
- 宥和
- なぜ、お金持ちは喧嘩しないのか?
- 畏怖
- 決して尊大になるべきではない
- 辛抱
- 「我慢すること」=「辛抱」ではない
- 窮迫
- 漢字を分解するクセを身につけると、語彙力がもっと高まる
- 内聞
- 「内分」と書き間違える人がとても多い
- 偏頗
- 「えこひいき」という言葉を知的に表現する
- 真摯
- 第7章 社会人としてのレベルをもう一段上げたい人のための語彙
- 機知に富む
- 「頭がいい」では、幼稚な印象を与えてしまう
- あまつさえ
- 世界のビジネスエリートは、副詞に感情を乗せる
- いみじくも
- 「形容詞」+「助詞」を使うと大人の壇格が出る
- 独壇場
- 本来は「独壇場」ではなく「独擅場」だった⁉
- 縷説する
- よく言えば「丁寧」、悪く言えば「くどい」
- スキーム
- ビジネス英語も語彙力向上のカギ
- 分限者
- 優秀な人とは、「身のほどをわきまえている人」
- 師事・兄事
- 尊敬の念を持って、教えを受ける
- 雅致がある
- 風情が感じられる言葉を使いこなそう
- 一竜一猪
- 努力を継続する難しさと大切さ
- 釣果
- 「つりか」と呼んでしまいがちな聞きなれない言葉
- 堅忍不抜の志
- 何かを成し遂げようとするときの合言葉
- 棺を蓋いて事始めて定まる
- 有名な唐の詩人・社甫が残した言葉
- 機知に富む
- 終章 社会人としての語彙力を自然と高めていくコツ
- 25歳前後から「語彙の習得数」が極端に下がる現実
- 日本語は”五七のリズム”だと覚えておこう
- 耳で本を読む
- 能を楽しむ感覚で、映画とドラマを楽しむ
- 日常生活でも語彙は増やせる
- 「大人版」の単語帳を使ってみる
- おわりに
書籍紹介
語彙を正しく使えるか
山口謠司は、言葉の表現力が社会的な評価に直接結びつくと指摘します。ビジネスの場で、どれだけ自分の意見を的確に伝えられるか、あるいは他者の話を理解する能力があるかが重要だと述べています。例えば、「相対的」や「代替」、「乖離」といった言葉を正確に使えるかどうかは、相手に自分の知性や教養を感じさせる要素となります。
コミュニケーションを取るために
本書が強調するのは、語彙力が単に知識をひけらかすためのものではなく、他人と円滑にコミュニケーションを取るための重要なツールであるという点です。会議やプレゼン、交渉の場面で、適切な表現を用いることで、自分の意図が明快に伝わり、結果として仕事の成果にも影響を与えます。
語彙を活かそう
この書籍は、語彙を吸収し、それを実生活で使うための具体的なアドバイスを提供します。言葉の力がいかに個人のキャリア形成や社会での立ち位置に影響を与えるかを理解し、語彙力を向上させることで、より豊かで効果的なコミュニケーションが可能になるというメッセージが込められています。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
識字率が高くても語彙力がない
明治時代になると、日本人は欧米人に比べて、驚くほどに識字率が高かったようですが、老若男女がそれぞれの身分や職業に応じて、手紙を書くことができ、文章を読むことができる程度のものでした。
その弊害として、型にはまった文章や語彙は身につけられても、型から外れたものは全く理解できない状態になってしまいました。士農工商という身分制度のもとでは、なかなかそれぞれの制度を超えて異なる分野の語彙を学ぶことが難しかったのです。
今でも、同様のことが言えるのではないでしょうか。職業に就いて生活が落ち着いてしまうと、その居心地の良さから地位を守ることに終始して、新しいことを学ぼうとしなくなります。
語彙力を身につければ、知性が育つこととなります。五感を働かせることにもつながり、新しい事象に対応する力を養うことができます。
宥和(ゆうわ)
「ゆるす」という日本語は、漢字でいくつかの書き方があります。ある行動を可能にする場合は「許す」。罪や咎などを糾弾せず赦免する場合に「赦す」。相手の要望を聞く場合には「聴す」。その中でも、「宥す」と使うことは少ないでしょう。
昔の「金持ち」の定義は、教育を受けていて家がある人のことを指していたようです。ある程度のお金がなければできなかったことなので、「金持ち」と使われていたのでしょう。
金持ちは、イライラすることが少なかったといいます。喧嘩をすれば、時間を無駄にして嫌な思いをすることがわかっていたからです。「宥」という字は、「有る(もの)」を屋根の中に入れるという意味で作られています。
受け入れて「和んだ」状態にするというのが「宥和」の意味となっています。
雅致(がち)がある
「雅」は「上品な」という意味を持つ言葉ですが、都会風で洗練されたという成り立ちから来ています。「牙」は尖っていて目立ち、象の牙は高価なものでした。「隹(ふるとり)」は小鳥を意味し、雀などに付けられます。
つまり、「雅」という漢字は、小さくても何か他とは違う美しさを称えている様子を表しています。
雅やかなものと何かが一緒になったとき、「雅致」と表現します。これは、お互いの良さが引き立て合ってさらに良いものになるという意味も含んでいます。
料理で野菜がうまく引き立てられているときや、伝統工芸品が周りの風景と調和して洗練されているときに、「雅致がある」と短く表現できます。