Newton 2024年 7月号

発売日 2024年7月7日

ページ数 144p

ISSN 0286-0651

もくじ

  • FOCUS
    • 銀河系最大の恒星質量ブラックホール
    • 記憶はDNAの損傷によってつくられる
    • 重力子のような粒子が発見された
    • 「切り紙」に着想を得た屋根の形
    • 植林は温暖化を助長することがある
    • ニワトリはシルクロードから広がった
  • From朝日新聞
    • 月探査機SLIM、またまたまた復活
    • ヒトiPSでサルの心機能改善
    • マウスにも「目の錯覚」あった
    • 増える人工衛星、天文観測に支障
  • 第1特集 Newton Special
    • 健康のしくみがわかる超感動の人体
  • 2030年、「単位」が変わる
    • 「光格子時計」が、1秒の定義を書き換えようとしている
  • 顕微鏡が移すおどろくべき極小の世界
    • ニコンスモールワールドコンテスト2023
  • 第2特集 Newton Special
    • 日本の伝統工芸を科学する 和の匠のサイエンス
  • 「時間栄養学」入門
    • いつ、何を、どのように食べるべき?
  • 世界のネコ図鑑
    • 毛色と模様はどのように決まるのか
  • 連載 数式いらずの数学入門
    • ケプラー予想と詰めこみの数学
  • Nature View
    • 地球奇岩紀行

Focus

記憶はDNAの損傷

ジャンル:神経科学

出典 Formation of memory assemblies through the DNA-sensing TLR9 pathway

Nature, 2024.3.27


 記憶は脳の神経回路に保存され、神経細胞が刺激を受けることでそのつながり方が変わり、形成されます。

 アメリカのノースウェスタン大学のジョバセビッチ博士らの研究では、マウスの足に電気を流して恐怖体験を記憶させ、「海馬」という記憶形成をつかさどる脳の部位を観察しました。

 研究の結果、DNAが切断された神経細胞では、「Toll様受容体9」(TLR9)というタンパク質が活性化していました。TLR9が恐怖記憶の形成に重要であると考えられ、マウスの神経細胞でTLR9の量を減らすと、恐怖記憶の形成が妨げられました。さらに、TLR9が切断されたDNAを認識するだけでなく、修復する機能も持っていることが明らかになりました。

植林は温暖化を助長することがある

ジャンル:環境学

出典 Accounting for albedo change tot indentify climate-positive tree cover restoration

Nature Communication, 2024.3.26

 植林による緑化は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑え、温暖化を防ぐ効果があります。しかし、植林は地球表面の太陽光の反射率を下げる傾向もあり、反射率が低くなると太陽光をより多く吸収して温暖化を助長する可能性があります。そのため、全体として植林が温暖化を防ぐのか、逆に助長するのかは明確ではありません。

 アメリカのクラーク大学のハスラー博士らの研究によると、世界各地で植林が太陽光の反射率に与える影響と、それが二酸化炭素濃度および気候変動にどう影響するかを見積もりました。その結果、乾燥地帯や北方地域の一部では、植林によって反射率が大きく低下するものの、二酸化炭素濃度の抑制効果が上回り、温暖化対策として有効であることがわかりました。しかし、多くの地域では反射率の低下により、植林の効果がほとんどないか、逆に温暖化を助長することも明らかになりました。

 したがって、植林を行う際には、地域ごとに太陽光の反射率の変化を検証する必要があることが示されました。

From 朝日新聞

ヒトiPSでサルの心機能改善

出典 朝日新聞デジタル

2024.4.26

 ヒトのiPS細胞から作られた心臓の筋肉の細胞を、心筋梗塞を起こしたサルの心臓に移植し、心機能を回復させることに成功したと、信州大学や慶應義塾大学などのチームが発表しました。

 これまで、移植後に発生する不整脈が課題でしたが、細胞の純度を高めることで、不整脈の頻度を大幅に減少させることができたといいます。

 今回の研究では、心筋梗塞を起こした4匹のカニクイザルの心臓に、6000万個の心筋細胞に相当する数の心筋球を移植しました。移植を受けたサルは心機能が10%改善し、2匹にごく短時間の不整脈が見られましたが、ごくわずかな時間に抑えられました。

 研究チームに参加する慶應義塾大学発のベンチャー企業「ハートシード」は、今回の手法を元に心不全の治療開発を目指しています。

釉薬のサイエンス

監修:地方独立行政法人 京都市産業技術研究所
執筆者:北原逸美

 釉薬とは、陶磁器の表面を覆うガラス質の層のことです。素地に水や汚れが染み込むのを防ぎ、丈夫で扱いやすくする役目があります。

元素の配合と焼き方で色をつくる

 釉薬の美しい色を生み出す元は「着色材」です。鉄や銅などの金属が含まれ、それぞれの元素が特徴的な色を持っています。酸化第二鉄($\ce{Fe2O3}$)を着色材として酸化焼成を行うと、3価の鉄イオンの状態になり黄土色になります。一方、還元焼成を行うと、2価の鉄イオンの状態になり水色になります。

 マンガンの結晶を使えば玉虫色、マグネシウムなら深みのある灰緑色、コバルトなら青色や紺色、亜鉛なら規則性のない結晶模様が楽しめます。

 着色材の添加量や配合の違いによっても、色は大きく変化します。釉薬が生み出す色は無限です。

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