Newton 2024 12月号

発売日 2024年10月25日

ページ数 144p

ISSN 0286-0651

もくじ

  • FOCUS
    • マウスを生きたまま透明化
    • 恐竜を絶滅させた隕石の正体が判明
    • 重力子を検出する方法を考案
    • キノコが制御するロボット
    • イースター島の歴史に新説
    • 地震によってできる金塊
  • 2024年ノーベル賞
    • 生理学・医学賞
      • 「マイクロRNA」を発見し、遺伝子制御に果たす役割を解明した
    • 物理学賞
      • 「機械学習」の基礎技術を発明し、AIの時代を切り拓いた
    • 化学賞
      • AIとコンピューターをもちこみ、タンパク質の研究に革新をもたらした
  • From 朝日新聞
    • 里地里山のチョウや鳥が急減、気候変動も影響
    • 地震時の土砂で被害拡大か
    • 南米の空に彗星の長い尾くっきり
    • 20億年前の岩石で生きた微生物発見
  • 第1特集 Newton Special 不死のサイエンス
    • 老化にいどむ最先端研究と未来の人体
  • 数式いらずの数学入門 三角関数
    • 三角関数は関数界のラスボスだ!
  • 変貌する地球
    • 人類や生物の活動、自然災害などで変わる地上の姿
  • 第2特集 Newton Special 宇宙はいくつあるのか?
    • 無数の宇宙が生まれつづける驚異の「マルチバース宇宙論」
  • 世界の土木遺産
    • 巨大なダムや橋、運河にみる試行錯誤の歴史
  • 音楽の脳科学
    • 音楽が生む感動の秘密を脳から解きあかす
  • Nature View 子育てをする動物たち
    • 次世代を確実に残す多様な戦略

Focus

マウスを生きたまま透明化

ジャンル:医学

出典 Achieving optical transparency in live animals with absorbing mokecules
Science, 2024年9月6日

 生体組織では、細胞内の水と、細胞膜や筋繊維などの構造体の屈折率が異なります。そのため、さまざまな方向に光が曲がり、生体組織は不透明に見えます。

 アメリカ、スタンフォード大学のホン博士らは、食品添加物「タートラジン」を生体組織に浸透させることで、生きたマウスの生体組織を透明化することに成功しました。

 タートラジンが細胞内の水に溶けると、細胞内の水の屈折率が上がります。細胞内の水と構造体との屈折率の差が小さくなることで、生体組織が透明になりました。

 タートラジンを浸透させることで、マウスの頭蓋骨の表面を観察したり、腹部の内臓や足の筋肉を観察することができました。また、タートラジンを洗い流すことで透明度は元に戻ります。

恐竜を絶滅させた隕石の正体が判明

ジャンル:天文学

出典 Ruthenium isotopes show the Chicxulub impactor was a carbonaceous-type asteroid
Science, 2024年8月15日

 約6600万年前の白亜紀末に起こった大量絶滅では、恐竜を含む地球上の60%以上の生物が絶滅しました。これは、メキシコに直径10キロメートルを超える隕石が衝突したことで引き起こされたと考えられています。この隕石がどこから来たのかは長い間不明でした。

 ドイツ、ケルン大学のフィッシャーゴッド博士らは、ルテニウムという元素の同位体の割合を解析することで、この隕石の起源を調べました。

 隕石が衝突した時期の地層に含まれるルテニウムの同位体を調べることで、どのような隕石が衝突したのかが分かります。ルテニウムを分析することによって、太陽系の木星よりも外側で形成される、炭素に富んだ小惑星だと判明しました。

 火星と木星の間にある「小惑星帯」と呼ばれる領域で形成されたもので、地球に衝突するものとしては珍しい隕石だったようです。

2024年ノーベル賞 物理学賞

 2024年のノーベル物理学賞は、ニューラルネットワークによる機械学習の発明に貢献した2名の研究者に贈られました。受賞者が開発した「深層学習」はChatGPTをはじめとする生成AIにも使われています。

ジョン・ホップフィールド
アメリカ、プリンストン大学名誉教授。

ジェフリー・ヒントン
カナダ、トロント大学名誉教授。

コンピューター上で「連想記憶」を再現

 ホップフィールド博士は、1982年に「ホップフィールド・ネットワーク」と呼ばれるモデルを発表しました。断片的な手がかりから記憶を引き出す「連想記憶の」の機能をコンピューター上で再現できます。

 ホップフィールド・ネットワークは、多数のノードから様々な強さでつながった構造をしています。色んな強さの信号が人工ニューロンに入力されて、人工ニューロンは計算結果をもとに次の人工ニューロンに出力します。

 ホップフィールド・ネットワークには、画像やパターンなどの複数のデータを記憶させておくことができます。ノイズを含む不完全なデータが入力されると、記憶されたデータの中から、入力データと最も近いものを呼び出すことができます。

ボルツマン・マシンが生成AIの原型

 ヒントン博士は、ホップフィールド・ネットワークをさらに発展させ、「ボルツマン・マシン」を1985年に提案しました。ボルツマン・マシンは、データを記憶するだけでなく、データの特徴を自動的に学習できます。

 初期のボルツマン・マシンは、答えを得るまでに計算に非常に時間がかかるなど、実用上の問題点を抱えていました。改善を重ね、長年の研究が実を結び、2000年代に深層学習が生まれたのです。

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