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Focus
話題の最新研究やニュースをコンパクトに紹介するコーナーです。
毎月いくつかの情報を紹介されています。ここでは個人的におもしろかった記事を、さらにコンパクトにしてピックアップします。
シカの角がもつ再生能力
UnsplashのMamun Srizonが撮影した写真
ジャンル:生物学
A popilation of stem cells with strong regenerative potential discovered in deer antlers
Science,2023.2.23
哺乳類の場合は臓器まで再生できるよな能力を失っていますが、シカは例外です。春に枝角が落ちて、春から夏にかけて頭蓋骨の先端から枝角が成長していくという再生サイクルをくりかえします。
中国、西北工業大学のシン博士らは、シカの枝角を再生させる細胞を新しく発見しました。枝角の細胞が自己増殖によって数をふやし、枝角の軟骨細胞を形成することによって再生しているようです。
地球内部に新たな層を発見
作者: BlueFruit
ジャンル:地学
Asthenospheric low-velocity zone consisten with globally prevalent partial melting
Nature Geoscience, 2023.2.6
地球の表層にはプレートがあり、その下のマントル層の対流によって少しずつ動いています。
アメリカ、ブラウン大学のウア博士らは、地下約150キロメートルのアセノスフェア内に「メルト」が存在する層を確認しました。
メルトは、部分的に熔けて液体になった岩石(マグマや溶岩)です。
メルトには地震波の速度を遅くする効果はあるものの、プレートの流動性とは関係がないこともわかりました。
Focus Plus 世界が注目する「室温超電導」
話題のニュースを紹介するコーナーです。
ジャンル:物理学
監修:宮川宣明 東京理科大学先進工学部物理工学科教授
執筆者:小谷太郎
作者: burarida
2023年3月8日、アメリカ、ロチェスター大学のグループは、21℃で超電導状態となる物質を発見したと発表しました。室温で超電導状態となる物質は応用範囲が非常に広く、産業革命がおきると期待されています。
100年以上にわたる夢
超電導とは、低温で物質の電気抵抗がゼロになる現象です。水銀を絶対零度近くまで冷やして電気抵抗がゼロになることが知られています。
今までの超電導物質では、極低温に冷やす装置が必要になり、応用が利きません。
超電導物質は、低コストのリニアモーターカーや送電ロスのない電力網など、さまざまな応用が期待されます。
研究者たちにとって、室温での超電導は夢です。
BCS理論で理解できる
BCS理論は20世紀にアメリカの物理学者3人が打ち立てた理論です。
BCS理論では、水素が室温で超電導を示す可能性があるといいます。
水素に、極めて高い圧力をかけて水素分子どうしを激しく押しつけ合うことによって、分子から電子が外れて自由に動けるようになるのです。
今のところこの水素の実在は証明されていません。つくることができれば、室温で超電導状態になると考えられています。
今回の発見が真実であれば、追試したときの結果が報告されるでしょう。しかし、4月11日時点で報告はありません。過去に追試を行った結果、室温超電導を示さなかったという報告は存在します。
発見が真実であれば、実用化されるのは遥か先になりますが、重要な成果として科学の発展に貢献するでしょう。
電柱の中身はナゼ空洞なのか
Newton Special「感動する物理」(執筆:中野太郎)から
最近の電柱は中身が空洞です。
電柱をつくる際に、円筒状の形を用意して、電柱の表面となる部分に鉄筋をいれます。高速回転させながらコンクリートを流し込み、遠心力で中空の円筒ができるのです。
中空である利点として、コンクリートを節約できる、軽量で運搬しやすいなどがあります。そして、同じ量の材料を使えば、曲げやねじりの強度も2倍以上強くなるのです。
棒状の材料を曲げたりねじったりするとき、最も強い力がかかるのは材料の表面です。そのため、あまり力がかからない中心部分に材料がなくても強度はそれほど変わりません。中心部分に材料を多く使うよりは、表面部分に使う方が強度が強くなります。
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