目次
Focus
話題の最新研究やニュースをコンパクトに紹介するコーナーです。
毎月いくつかの情報を紹介されています。ここでは個人的におもしろかった記事を、さらにコンパクトにしてピックアップします。
難病ALSの新たな治療ターゲット
ジャンル:医学
出典 PIKFYVE inhibition mitigates disease in models of diverse forms of ALS
Cell,2023年2月16日
筋委縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経の細胞が徐々に死んでしまうことで、筋肉が動かせなくなる病気です。
根本的な治療法は開発されておらず、平均寿命は発症後2~5年です。ALSはさまざまな遺伝子異常によって発症しますが、治療法を開発するには、運動神経の細胞が死ぬしくみを標的にする必要があります。
アメリカ、南カリフォルニア大学イチダ博士らの研究グループは、薬によって「PIKFYVE(ピックファイブ)」という酵素のはたらきをおさえることで、ALSを発症したマウスの治療に成功しました。
ALS患者由来のiPS細胞からつくった運動神経を用いて、その生存期間を延長させる物資を調査する過程で、今回の薬が有力候補としてみつかりました。
ALS患者の神経細胞には異常なタンパク質が蓄積しており、これが原因で神経細胞が死んでしまいます。このタンパク質が除去されることで、ALSを発症したマウスと患者由来のiPS細胞からつくった運動神経細胞において、それぞれ生存期間が延長しました。
ドローンの騒音を防止するプロペラ
ジャンル:工学
出典 MIT Lincoln Laboratory Technology Highlight
2023年1月7日
市街地でドローンを使用する場合、プロペラの出す音が周囲の人々を不快にするという騒音問題が発生します。
アメリカ、マサチューセッツ工科大学リンカーン研究所は、ドローンから生じる騒音を大幅に低下する画期的なプロペラの開発に成功しました。
不快音の原因は羽根の先端から生じた強い空気の渦が、他の羽根に当たることです。この渦が先端に集中せず、羽根全体に分散する環状のプロペラを考えました。
プロペラを交換するだけで大きな利益が得られるので、多くのドローンが環状型を採用するのではないかと、期待されています。
Focus Plus
話題のニュースを紹介するコーナーです。
「横ずれ断層」が引き起こしたトルコ・シリア大地震
ジャンル:地学
監修:山本揚二郎
執筆者:今井明子
2023年2月6日の午前4時17分、トルコ南東部でマグニチュード7.8、日本のシン度7に相当する大きな地震が発生しました。
発生した後も余震が続き、建物の崩壊などにより、トルコ・シリア合わせて5万人以上の死者を出しました。
トルコの大部分がのった「アナトリアプレート」と、アラビア半島などがのった「アラビアプレート」との境界にある「東アナトリア断層」の南部で発生しました。この断層は「左横ずれ断層」です。圧力がかかっていた方向の左側に、いっきにずれて地震が起きました。
日本の内陸型の地震とトルコ・シリアの内陸型地震は性質が違います。海洋プレートないの歪みがたまり、限界をたまると「間接的に」自身が発生します。トルコでは「直接的に」運動の影響を受けて地震が発生するので、大きな内陸型の地震が頻繁に発生します。
日本にも、内陸型の活断層は多数あり、今後の地震に備えて、防災備蓄の確認などの対策を見直したほうがよいかもしれません。
肥満と病気
監修:宮崎滋
執筆者:山本尚恵
内臓脂肪は「内分泌器官」
肥満自体は病気ではありません。本来たまるはずのない「内臓脂肪」が健康状態を悪化させることにつながりやすいのです。
内臓脂肪の脂肪細胞は、さまざまなホルモンを放出する「内分泌器官」としての役割をもつことがわかってきました。その脂肪細胞が肥大化すると、分泌されるホルモンの種類や量が変化し、病気のリスクが高まります。
肥満ではない人の脂肪細胞は、「アディポネクチン」など、動脈硬化をおさえる効果をもったホルモンを多く分泌しているのです。
肥満の人の脂肪細胞は、善玉ホルモンの分泌量が減少し、かわりに「THF-α」など、炎症反応にかかわるホルモンの分泌量が増えます。その結果、脳血管疾患、心疾患、動脈硬化症、糖尿病、高血圧症など、前進にわたるさまざまな疾患リスクが上昇するのです。
間欠的ファスティング
「プチ断食」は、健康障害のリスクがあるため、おすすめできません。
食事を長期間抜くとその後に大食いすることが多く、かえって肥満の原因になる可能性があります。また、断食中は脂肪だけでなく筋肉などのタンパク質も燃焼されるため、タンパク質を十分に補給しなければ筋肉や臓器が萎縮してしまいます。
「間欠的ファスティング」を続けると、絶食日にタンパク質が崩壊し、摂食日に食べ過ぎると、筋肉だった部分が脂肪に置き換わる『サルコペニア肥満』になる可能性が高いと思われます。
空腹状態を意図的につくるとしたら、半日程度の断食にとどめておくのがようでしょう。
まずは睡眠を見直す
睡眠時間の不足によって肥満が生じやすくなるのは、睡眠不足によってカロリー摂取量がふえるからだといわれています。
ペンシルバニア大学の研究チームが行った研究※1で、8時間眠ったグループにくらべて、徹夜したグループは、高カロリー・高脂肪の食べ物を選ぶ傾向にあることがわかりました。
睡眠時間が短くなると、食欲をおさえるはたらきのあるレプチンというホルモンが減少し、反対にグレリンという食欲増進ホルモンの分泌が増加することがわかっています。
睡眠をしっかりととることを意識するだけで、食事や運動などの生活習慣が自然と改善し、やせることができるようになるかもしれません。アメリカのシカゴ大学の研究者が行った研究※2をはじめ、睡眠にかんする生活習慣の改善を示唆する研究結果が出ています。
※1 Ness et al, JLR;2019;60[11]:1935-1945
※2 Taseli et al,JAMA Internal Medicine;2022;182[4]:365-374
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