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Focus
話題の最新研究やニュースをコンパクトに紹介するコーナーです。
毎月いくつかの情報を紹介されています。ここでは個人的におもしろかった記事を、さらにコンパクトにしてピックアップします。
軌道変化がもたらした太古の地球温暖化

ジャンル:地学
出典 Astochronology of htw Paleocene Eocene Thermal Maximum on the Atlantic Coastal Plain
Nature Communications,2022年9月24日
約5600万年前に、地球上の温度が4~5℃上昇した「温暖化極大期」とよばれる時期があったのです。大気中に最も多くの炭素が放出され、火山活動、永久凍土の融解、海底のメタンガス放出、隕石衝突などが地球温暖化に関わっていた可能性があります。
中国、北京大学のリー博士らは、アメリカ、メリーランドの大西洋沿岸にある、温暖化極大期にあたる5600万年間に堆積した地層を調べました。その結果、この時期の温暖化が地球の天体軌道の変動周期とよく相関していることが確かめられ、地球軌道の変動が温暖化極大期の引き金になっていたことを突き止めたのです。
自閉症患者でおきる遺伝子発見の異常

ジャンル:医学
出典 Broad transcriptomic dysregulation occurs across the cerebral cortex in ASD
Nature,2022年11月2日
自閉スペクトラム症(ASD)は、人口の約1~2%の人がもつ、生まれつきの脳機能障害です。
アメリカ、カルフォルニア大学ロサンゼルス校のガンダル博士らは、原因不明のASD患者49人、5番染色体のゲノム異常が原因のASD患者9人、健常者54人の計112人に対して、死後の脳の解析を行ったのです。
ASD患者では脳全体にわたって遺伝子発言が異常になっていて、視覚情報を処理する後頭葉の「一次視覚野」で顕著な違いがあることが解りました。
ほか、神経細胞を活性化させる細胞や、グリア細胞において、各細胞に特異的な遺伝子の発現が低下していることも解かっています。
水素社会の現実に落とし穴

ジャンル:環境学
出典 Risk of the hydrogen economy for atmospheric methane
Nature,2022年11月14日
脱炭素社会の実現にむけて、水素エネルギーの利用が世界各国で検討されています。二酸化炭素を排出しない次世代の技術と捉えられているようです。
アメリカ、プリンストン大学のベタグニー博士らは、化石燃料を水素燃料に置き換えたときに温暖化にどのような影響がおよぶのかについてシミュレーションを行いました。
その結果、製造や輸送の過程で水素の一部が大気にもれると、強力か温室効果ガスであるメタンの大気中濃度が増し、温暖化がかえって進行することが明らかになったのです。
メタンを除去する作用をもつ大気中の物質「OHラジカル(ヒドロキシラジカル)」が水素と反応し、消費されてしまうためです。
温暖化を食い止めるには、水素のもれを6~12%以下におさえる必要があるといいます。また、水素を天然ガスからつくる場合は、天然ガスのもれを1%以下にしなければなりません。
水素の漏れを検知する技術や水素濃度を衛星から観測する技術の開発が、水素エネルギーを使用する際に必要になってくると、博士らは述べているのです。
水素社会への移行には思わぬ落とし穴があることが明らかになりました。
Focus Plus レーザー核融合の“点火”に成功
話題のニュースを紹介するコーナーです。
ジャンル:物理学
監修:藤岡慎介 大阪大学レーザー科研究所教授
執筆者:梶原洵子

レーザー核融合とは
燃料となる燃料ペレット(粒状のプラスチック容器なかに念慮を入れたもの)は極限まで冷やされて氷の層をつくります。
燃料ペレットに四方八方からレーザー光を照射し、燃料ペレットを加熱します。
燃料ペレットの外側は蒸発して膨張し、内側はその反動で中心に向かって爆縮を起こします。
爆縮した中心付近は、超高温・超高密度状態になり、核融合を引き起こすのです。
レーザー核融合の点火に成功
2022年12月5日、アメリカのローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)は、レーザー核融合の“点火”に成功しました。
半径1ミリメートル程度の燃料カプセルに192本の強力なレーザー光を照射して、投入したエネルギーの1.5倍のエネルギーを生成しました。「核融合発電」の実現に向けた重要な一歩です。
燃料カプセルをつぶす際に歪みが生じると、カプセルが破けてしまい、うまく反応が進行しません。このため、カプセルは丸くて傷がつかないことが求められます。桑て、小さくつぶすにはエネルギーが必要です。エネルギーをコンピューターで均一な光にする技術が進展したため、レーザーで投入するエネルギーを量を増やすことができたのです。
今後の課題
実用化のためには1秒間に10~100回商社できるレーザーが必要です。また、レーザー光にかかるエネルギーが大量なので、エネルギー生成の効率は今の1.5倍から100倍へ高めなければなりません。
今後、研究開発競争は活発になるでしょう。現在、アメリカや日本など世界7極の国際協力により、磁場閉じ込め式の核融合実験炉「ITER」の建設が進んでいます。それと同時に、レーザー核融合の研究成果も天文学などへの幅広い応用が見込まれています。
中国の巨大電波望遠鏡「FAST」(天眼)てんげん
大題:世界の巨大科学施設(※スーパーカミオカンデなどのロマンあふれる施設が他にも紹介されています)
監修:鎌田裕、浅井祥仁、柳川孝二、半田利弘
執筆者:前田武
中国南西部の貴州省にある直径約500メートルの電波望遠鏡です。単体の望遠鏡として世界最大となります。サッカー場30面分に相当するようです。
この一帯は少数民族が暮らす山間地域で、この巨大施設は圧倒的な存在感を放っています。2020年から本格的に運用されています。
電波望遠鏡は、可視光線で天体を観測する一般的な望遠鏡と異なり、宇宙から降りそそぐ電波を集めて情報を得る者です。基本的に家庭用のパラボラアンテナと同じ仕組みになっています。
アンテナが大きいほど分解能がよくなり、天体を詳細に観測できます。極めて微弱な電波も感知できるので、かすかな電波しか地球に届かない天体の観測も可能です。地球外生命体の探査にも活用されています。
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