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Focus
話題の最新研究やニュースをコンパクトに紹介するコーナーです。
毎月いくつかの情報を紹介されています。ここでは個人的におもしろかった記事を、さらにコンパクトにしてピックアップします。
レーザー核融合
ジャンル:物理学
出典 大阪大学プレスリリース
2022.11.29
究極の脱炭素エネルギー技術として「核融合発電」に注目が集まっています。プラズマを閉じ込めて、高温度、高密度を維持する必要がある発電方法です。
核融合発電の1つレーザー核融合について研究が進んでいますが、加熱性能の向上が課題とされています。
アメリカ、ローレンス・リバモア国立研究所や大阪大学レーザー科学研究所などが参加する共同チームは、磁場を使ってレーザー核融合の加熱性能を大きく向上させることに成功しました。
従来のレーザー核融合に比べて燃料の温度が40%上昇し、核融合反応の効率が3倍に向上したのです。
磁場を加えることでレーザーを照射するタイミングの誤差をなくしたことで、核融合反応の効率を上げることができたと、研究グループは述べています。
金属3Dプリンターでつくる人工骨
ジャンル:工学
出典 大阪大学プレスリリース
2022.11.29
人工骨や人工関節などの材料には、さまざまな機能が求められます。強度、弾性、生体へのなじみやすさなどです。
高強度と低段差は、両立しにくい関係にあり、これらの機能を兼ね備えた骨代替素材の開発が難しいものになります。
大阪大学の中野貴由教授らの研究グループは、人工骨に用いることができる新材料の開発に成功しました。バイオハイエントロピー合金、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデンの6種類の金属からなります。
従来のものと比べて、1.4倍の強度と達成し、弾性も低くなりました。骨をつくる細胞が接着・増殖しやすくなり、生体親和性も高いようです。
この新材料は、整形外科・歯科などで用いられる人工骨や人工関節の材料として応用が期待されています。
Focus Plus ニュートリノの観測に成功
話題のニュースを紹介するコーナーです。
ジャンル:天文学
協力:吉田滋 千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター長
執筆者:小谷太郎
ニュートリノという素粒子は物質とほとんど反応しません。この瞬間にも宇宙からは無数のニュートリノが地球に降り注いでいます。
ニュートリノは観測することが非常に難しく、大規模な装置が必要になります。その装置の1つが「アイスキューブ(IceCube)」です。南極の巨大な氷を使い、宇宙から飛来する高エネルギー・ニュートリノを検出します。
ニュートリノは、氷をつくっている原子の原子核に衝突し光を発生させることが、稀にあります。その9年分の観測データを解析したところ、ニュートリノを放つ天体を発見できました。
今後、新しくニュートリノを放つ天体が見つかれば、ブラックホールの観測やニュートリノ天体の理解が飛躍的に進むでしょう。
生殖医療の未来
監修:藤田みさお 京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門特定教授
執筆者:小野寺佑紀
高齢の妊娠を可能にする「提供卵子」
生殖補助医療は、なんらかの理由で卵子と精子が自然に出会えないカップルにおいては、大きな威力を発揮します。
妊娠できないカップルの理由は多様であり、「卵子の老化」はその原因の1つです。ミトコンドリアの機能不全や、卵子の栄養不足が考えられています。
アメリカやヨーロッパなどでは、母体となる女性の年齢にそれほど関係なく、生殖補助医療を受けた女性は、比較的高い確率で出産まで至るのです。
理由は「提供卵子」になります。提供卵子を使うことで、着床する確率が上がり、流産する確率が下がるのです。
マウスのiPS細胞から卵子ができた
2012年には、卵子の作成に成功しました。メスのマウスのiPS細胞に由来する始原生殖細胞を作り出します。マウスの胎児の卵巣の体細胞と合わせて、大人のマウスの卵巣に移植するのです。
また、体外でも培養が可能であり、マウスの赤ちゃんが誕生します。
しかし、iPS細胞からつくられた始原生殖細胞や精子、卵子などは、マウスの生体内にあるものとは、同じではありません。どう違っているのかは、今も研究の対象になっています。
2020年には、人のiPS細胞由来の始原生殖細胞から、「前精原細胞」を分化させることに成功しました。前精原細胞は、胎児で見られる細胞であり、最終的には精子を作りだします。
2022年、ヒトの卵子と精子は、まだ作成はできていないものの、作りだせたという報告を見るのは時間の問題というところまできているのです。
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