新おとめ六法/著者:上谷さくら

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書籍情報

タイトル

新おとめ六法

発刊 2024年4月18日

ISBN 978-4-04-606522-3

総ページ数 221p

著者

上谷さくら

弁護士。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。

出版

KADOKAWA

もくじ

  • はじめに
  • 法律を知る意味って?
  • 本書の見方
  • chapter 1
    • 幸せになる権利、自由である権利
      • 自分の幸せは自分で決める
    • 恋人を暴力であやつるデートDV
      • わたしはあなたのお人形さんじゃないの
    • つきまとうストーカー
      • 「好きだから」って好意を押し付けないで
    • Column 被害届とは
    • 悪いことしたのになんで逮捕されないの?
      • 逮捕は罰するためのものじゃない
    • Column 逮捕状・起訴状は匿名で出せる
    • 望んでいないのに体をさわられた
      • 勝手にさわっていいものじゃないのよ
    • 望まない性行為をさせられた・レイプ
      • 大切なものがこわれていくの
    • Column 性についての権利
    • 「あなたも悪いんじゃない?」セカンドレイプ
      • なにも知らないのに好き勝手言わないで
    • Column 性被害に対するケア
    • 結婚してないけど妊娠
      • 妊娠に対する責任は必ずはんぶんこ
    • Column 人工妊娠中絶
    • Column さまざまな避妊方法
    • 病気をわざとうつされた
      • 見えない傷を残さないで
    • Column さまざまな性感染症
  • chapter2 SNS・インターネットのトラブルと法律
    • ネット上の発言、動画投稿
      • 画面の向こうで悲しんでいる人がいる
    • Column スマホは反税の窓口にもなる
    • 民事裁判と刑事裁判
      • わたしの意思を伝える場
    • 度を越したうわさ話、誹謗中傷
      • 言葉の刃はお届け不要
    • ネットやSNSで脅された
      • 画面の中の凶器
    • マッチングアプリでうそをつかれた
      • いくらでも自分をよくみせられる空間
    • やりとり・秘密を晒された
      • 伝えたかったのはあなただけ
    • 偽ブランド品の販売
      • 商品の”盛り”すぎに注意
    • Column 「表現の自由」といえばなんでもOK?
    • 作品を勝手に使われた、まねされた
      • わたしの作品は簡単につくられたものじゃない
  • chapter3 子どものトラブルと法律
    • 学校でいじめにあっている
      • あなたの居場所は必ずある
    • 先生という立場を使ったスクール・ハラスメント
      • 頑張るのは、輝きたいから
    • 先生からの性暴力
      • 笑顔で振り返りたい青春時代
    • 子どもへの虐待
      • ここではないどこかへ行きたい
    • 性的同意年齢
      • 大人になるまでちょっと待って
    • わいせつ目的で子どもをたぶらかす
      • まだ見ぬあの人は王子様?
    • 成人年齢引き下げ
      • ”大人の定義”って難しい
    • Column 裁判員裁判ってどういうもの?
  • chapter4 くらしのトラブルと法律
    • お買い物と消費者契約法
      • お買い物は本当に欲しいものを
    • 偽計業務妨害・威力業務妨害
      • ぜんぶ思いどおりにはいかないの
    • 人やお店の者を盗む
      • 盗まれたのは”それ”だけじゃないの
    • 車や自転車での事故
      • この道はどこへ続いてる?
    • Column 高齢者の免許返納
    • 盗撮された
      • 勝手に見ていいものじゃないよ
    • 街中でしつこく絡まれた
      • 興味ないからこっちにこないで
    • わいせつ物を見せられた
      • 見ていたいのはキレイな景色だけ
    • 公共の場、乗り物での痴漢
      • わたしのからだは立入禁止
    • Column 示談にはいろんな方法がある
    • 借りたお部屋、どこまで修理をするべき?
      • 気持ちよく住みたいわたしの”お城”
    • 破産・借金をしてしまった
      • なくなるのは一瞬
    • 「高額」「即金」闇バイト
      • 甘いだけのおとぎ話はないの
    • Column 異なる価値観の人に相談を
  • chapter5 しごとのトラブルと法律
    • 残業代、労災、有給がもらえない
      • 気持ちよく働きたい
    • 職場でのセクハラ
      • 飲み込んだ”ノー”の数だけ心が枯れそう
    • 妊娠・出産によるマタハラ
      • 子どもも仕事もどっちも大事にしたい
    • Column 妊娠・出産による女性の心身の変化
    • 行き過ぎた指導はパラハラ
      • 壊れるまで厳しくする必要ないよ
    • 育休の基本ルール
      • 夫婦で子育てしたい
  • chapter6 結婚のトラブルと法律
    • 法律婚と事実婚
      • あなたとずっと一緒にいられますように
    • 婚約の取り消し
      • 運命の人だと思ったの
    • 婚約者にお金をだまし取られた
      • お金よりも失いたくなかったもの
    • 結婚しているのにほかの人とお付き合い
      • 甘い夢はいずれ溶けてなくなるだけ
    • 配偶者からの暴力・DV
      • 大切な生活を根っこから奪う
    • 見えにくいこころの搾取・モラハラ
      • 相手を信じたい気持ちが罠になる
    • 別居、家庭内別居で夫婦といえない
      • 同じ屋根の下にいても心はバラバラ
    • 離婚の種類と手続き
      • わたしの幸せに向かう道へ進む
    • Column 調停ってどんなもの?
    • 共有財産と財産分与
      • 夫婦で築いた財産は、ぜんぶはんぶんこが基本
    • 夫婦のどちらが親権を持つ?
      • 譲りたくないたからもの
    • パートナーに先立たれてしまった
      • いくら探しても、あの人はもういない
  • APPENDIX
    • 弁護士に相談手、どうすればいいの?
    • 弁護士さんに相談するのはお金がかかる?
  • おわりに

書籍紹介

 法律の世界は、時に難解で取っつきにくいものと感じられるかもしれません。しかし、上谷さくらさんの『新おとめ六法』は、そんな法律の壁を低くし、誰にでも理解しやすく提供してくれる一冊です。この書籍は、特に若い女性や法学に興味を持ち始めた初心者に向けて書かれており、法律の基本的な知識を身につけるのに最適です。

魅力的な構成とデザイン

 わいらしいイラストやカラフルなページレイアウトが施されており、視覚的にも楽しめるよう工夫されています。法律の教科書と聞くと堅苦しい印象を持ちがちですが、この書籍はそのイメージを一新します。

わかりやすい解説

 上谷さくらさんは、難しい法律用語や概念をわかりやすく解説することに長けています。具体的な事例や日常生活で遭遇するシチュエーションを交えながら、法律の基本を丁寧に説明しています。これにより、読者は「法律ってこういうことなんだ!」と納得しながら読み進めることができます。

若い女性に寄り添う視点

 本書は、特に若い女性に寄り添った視点で書かれています。例えば、労働法やセクシャルハラスメント、ストーカー規制法など、女性が知っておくべき法律について詳しく取り上げられています。また、法律の基本的な権利や義務についても触れられており、自分自身を守るための知識を身につけることができます。

法律をもっと身近に

 『新おとめ六法』は、法律を身近に感じさせてくれる一冊です。法律は決して特別な人だけのものではなく、私たちの日常生活と密接に関わっていることがよくわかります。この書籍を読むことで、法律に対する抵抗感が薄れ、自分自身の権利や義務について考えるきっかけとなるでしょう。

まとめ

 法律の入門書として最適な一冊です。かわいらしいデザインとわかりやすい解説で、若い女性や初心者にも理解しやすく作られています。法律をもっと身近に感じ、自分の権利をしっかりと守るための知識を身につけることができるこの書籍を、ぜひ手に取ってみてください。

 法律の世界への一歩を踏み出すための最良のガイドとして、『新おとめ六法』はあなたの強い味方となるでしょう。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

勝手にさわっていいものじゃない

刑法 第176条 不同意わいせつ

 次に揚げる行為または事由その他これらに類する行為または事由により、同意しない意思を形成し、表明しもしくはまっとうすることが困難な状態にさせまたはその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6ヶ月以上10年以下の拘禁刑に処する。

 2023年の刑法改正により、強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪が統合され、不同意わいせつ罪になりました。

 旧法では、「暴行・脅迫を用いて」または「人の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて」わいせつな行為をした者が処罰されていました。

 これが改正法では、「同意しない意思を形成し、表明しもしくはまっとうすることが困難な状態にさせ、またはその状態にあることに乗じてわいせつな行為をした」者が処罰されることになったのです。

 これまでは、暴行や脅迫がないと強制わいせつ罪にはなりませんでしたが、「被害者の同意があったと勘違いした」などの弁解がまかり通ってしまうことが問題でした。改正法では、そのような弁解ができないように8つの類型が例示されています。これらの類型が原因と考えられる場合、同意しない意思を形成することが困難だったと判断できるようになりました。

  1. 暴行または脅迫
  2. 心身の障害
  3. アルコールまたは薬物の影響
  4. 睡眠、そのほかの意識不明瞭
  5. 同意しない意思を形成、表明、またはまっとうすいとまがないこと(不意打ち)
  6. 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖または驚愕
  7. 虐待に起因する心理的反応
  8. 経済的、または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮

 類型⑧では、取引先の社長などにわいせつ行為をされた場合などがあたります。また、同僚や上司などから「わいせつ行為を受け入れろ」などの対応を推奨した場合は男女雇用機会均等法に反する行為です。我慢せずに、会社の相談窓口や弁護士に相談しましょう。

やりとり・秘密を晒された

 プライバシー権とは、自分の個人情報を管理する権利です。名前や住所、家族構成、学歴や職歴、趣味などの「私的事項」が無断で公表されると、その人の尊厳が侵害され、安心して生活することができません。

 メッセージアプリでの会話をスクリーンショットなどで無断で第三者に公表することは、その人を傷つけるだけでなく、刑法第13条で保障されるプライバシーの侵害や、刑法の名誉毀損罪に該当する場合があります。

私は趣味で子育て漫画を描き、SNSで発信しています。子育て世代にウケそうな我が子のエピソードを描くことが多く、時々顔写真も載せて好評を得ています。具体的な内容がバズるので、今後は写真を増やしたり、失敗談なども発信しようかと考えています。

 しかし、このような場合、将来子どもから訴えられる可能性があります。親権者には子どもを観護・養育する権利・義務がありますが、子どもは親の所有物ではありません。親にとっては微笑ましいエピソードでも、子どもにとっては不利になる情報公開だったり、誰にも知られたくない情報かもしれません。たとえ「いいよ」と子どもが許可したとしても、注意して下さい。

甘いだけのおとぎ話はない

 「闇バイト」とは、高額な報酬と引き換えに、犯罪行為に加担させる行為です。SNSで多く募集しています。強盗や詐欺などの重大犯罪の事項行為に加担させられ、被害者が死亡したり大ケガをすることが多く、逮捕されれば相当長期にわたって刑務所にいくことになります。首謀者は巧みに姿を隠しているため、不法な利益を得て、逮捕されることもなく犯罪行為を繰り返しています。

 警察庁は、アルバイトを探すときは「高額」「即日現金」「高額即金」「副業」「ハンドキャリー」「書類を受け取るだけ」「行動確認・現地調査」などの言葉に注意するように呼び掛けています。

 闇バイトに応募すると、身分証等の提示を求められ、個人情報を把握されます。そのため、怪しいと思っても、個人情報をばらすなどと脅され、やめられずに犯行に加担し、刑務所行きになることも少なくありません。少しでもおかしいと感じたら、躊躇わずに警察に相談してください。

夫婦間のモラハラ

 倫理や道徳(モラル)に反する嫌がらせを、モラハラと略します。

 人体的な暴力以外は全てモラハラとなり、嫌だったことを日記に書いておくだけでも調停離婚できる材料になります。

  • 言葉の暴力
    • 「誰のおかけで飯食ってるんだ」
    • 「なんの能力もないくせに」
    • 「ブス」「デブ」など、容姿についての悪口
    • 子どもに親を尊敬できなくなるようなことを言う
    • 「うちのバカ息子が~」「うちの妻がアホで~」などの近しい者の蔑み
  • 態度による暴力
    • 携帯のチェック、不必要なほどに交友関係や行動を監視、制限をする
    • 配偶者のまえでため息や舌打ち、支配的な態度、無視
  • 経済的な虐待
    • 給料の額を教えない。ボーナスが出たかどうかも教えない。
    • 必要最低限の生活費も渡さない
    • 相手の仕事の給料などを取り上げて渡さない
  • 性行為の強要
    • 気の進まない性行為を強要
    • 性行為を拒むと不機嫌になったり、無理にでも応じさせようとする(※度が過ぎると身体的暴力になる場合もあります)

 モラハラも、一定の場合は保護命令の対象になります。恐怖心を感じることがあったら迷わず相談するといいでしょう。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 不同意わいせつ罪にあたることをする権力者は、結構多いです。「面倒をみていれば、わいせつだと思われることもない」というゴミみたいな持論を持っている社長さんを何人か知っています。

 最終的に、業績不振で会社がつぶれたり、親戚に厄介扱いされて要支援1にもかかわらず介護施設にぶち込まれるという、そんな奴に幸せな未来はないようです。

 刑法で罰せることができますし、現行犯逮捕なら一般人でもできるのです。窓口で相談したのち、一般逮捕でも無罪になることはナイでしょう。勘違いしていい気分になり、犯罪を犯すような権力者の元で働くのは、かなりのリスクなので、有能な若い人は離れていってしまうのではないでしょうか。

 お金を貯めること、稼ぐことも資本主義なんだから重要ですが、身を守ることも重要です。刑法を知っておくことで「あれ、おかしいな」を我慢することもなくなると思います。

 SNSで子どもの顔画像だけのせる親も目立ちます。けれど、子どもが身を守るための法律を学んだら、訴えられることもあるでしょう。子どもが自分の身を守るために親を訴えるような事態にならないために、子どもが将来傷つくかもしれないことは控えたほうが良いのではないでしょうか。

 人に迷惑をかけていないかの確認と、自分の身を守るために使える知識が詰まっている書籍でした。自分に関係ないと思わずに、読んでみてはいかがでしょうか。

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