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目次
書籍情報
母が重くてたまらない
墓守娘の嘆き
信田さよ子
公認心理士・臨床心理士。
日本公認心理士教会会長。
朝日新聞出版
- まえがき_「墓守は頼んだよ」の呪文
- 母が重くてたまらない_さまざまな事例から
- ママのための中学受験
- ゴールインしたのは私ではない
- どこまでもついてくる
- 母と娘の「運命共同体」
- アルコール依存症の父
- 孤児願望
- 男になりたい
- スミレから妖怪に
- 母のお墓を
- 息子を見上げ、娘を見下ろす母
- 変わらない母親像
- 母と息子と口紅
- 反面教師としての父
- 母の使い分け
- 気がつけば、落とし穴
- 母の選んだマンション、そして合鍵
- 体力満点の母
- 未来の設計図
- 自分の不幸にふたをして
- 恨みと怒りのオーラ
- 「娘はうつじゃないでしょうか」
- 結婚して家を出て、出産してもどってほしい
- 「娘を心配する母」という安全地帯
- 団塊母の苦しみ
- ロマンティックラブイデオロギー
- 娘だけが希望
- 理解の断念
- 傷つけ合うことで強まる絆
- 『光抱く友よ』に見る母娘関係
- 見てはいけない光景
- 親子の役割逆転
- 父の存在はどこに?
- 父になることへのためらい
- やっぱり母親の責任か?
- バラの花を美しいと感じない
- 期待をしなければいい
- 無邪気な独裁者
- この10年間の変化
- 無邪気に見えて狡猾
- 娘との一体感にひびを入れる
- ママのための中学受験
- 母とは一体誰なのか?
- 母親を徹底的に分析する
- 独裁者としての母 従者としての娘
- 殉教者としての母 永遠の罪悪感にさいなまれる娘
- 同志としての母 絆から離脱不能な娘
- 騎手としての母 代理走者としての娘
- 嫉妬する母 芽を摘まれる娘
- スポンサーとしての母 自律を奪われる娘
- 母をどうとらえればいいの?
- なぜ母性が造られたのか
- 自己犠牲という価値
- 呑みこむ愛のからくち
- 母親を徹底的に分析する
- 迷宮からの脱出 問題解決の糸口
- 母に対する処方箋
- 母がカウンセリングにやってくるのは?
- まず教育プログラムから
- グループカウンセリングの効果
- 隠されたテーマ
- 父に対する処方箋
- 空虚な中心としての父
- 登場した父親のパターン
- パパズグループのねらい
- 墓守娘に対する処方箋
- 怒りを自覚しよう
- 罪悪感は必要経費
- 仲間をつくろう
- カウンセリングに行ってみよう
- NOは、母へのサービスだ
- 距離をもった母との関係は可能か
- 解決方法はあるのか
- 背景を知る
- 父と息子・父と娘
- 母・娘問題における援助者の役割
- 母親への期待を捨てる
- 「とりあえず」距離をとる・離れる
- 復讐したい娘たち
- 母と距離をとる方法
- 「母親研究の意味」
- 加害者臨床からヒントを得る
- 赦しでもなく復讐でもない、研究することで母を超える
- 責任主体としてのはは
- 母に対する処方箋
- あとがき
書籍紹介
母親との複雑な関係を深く描いた感動的なエッセイです。読者はこの作品を通じて、母と娘という普遍的なテーマに新たな光を当てることができます。信田自身の体験を基にしたこの物語は、ユーモアと哀しみが交錯し、読者に共感と洞察を与えます。
しんどい日々のなかにも
母親の存在がどれほど自分にとって重荷であるかを率直に語りますが、同時にその重さが愛情や理解へとつながる過程も描き出しています。信田の筆致は繊細で、母親との日常の些細なやりとりから見えてくる人間関係の機微を鮮やかに描きます。
家族というもの
母親の存在がどれほど自分にとって重荷であるかを率直に語りますが、同時にその重さが愛情や理解へとつながる過程も描き出しています。信田の筆致は繊細で、母親との日常の些細なやりとりから見えてくる人間関係の機微を鮮やかに描きます。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
「娘を心配する母」がカウンセリングにくる

自分のことを娘思いの母親だと考えて、自分の体は差し置いて、娘のためにとカウンセリングに来る人がいました。娘はたまらないだろうと毎度の度に思います。
母からの監視が済み済みまでにわたり、「最悪の事態」を想像されるなんて、息が詰まるでしょう。娘は身動きがとれず、脱出することもできず、何かに期待することもできません。
こうした母親は、自分の問題に直視せず、問題のある娘の心配をします。この母ポジションが何より安住できる場所になっているケースが多いのです。
罪悪感は必要経費

怒りは自覚されず、不安や抑うつとして経験されます。怒ることへの罪悪感や禁止がはたらく場合にみられる反応です。
ストレスに耐えかねない場合は、アルコールやギャンブルの渇望が生まれることもあります。飲まなければ夫に怒れない女性は多く、自分が怒っていることを自覚するのは大変なことです。
怒りを受け入れ、どうしようもなく腹が立つと同時に、ブレーキをかけようと湧いてくるのが罪悪感です。「母のせいで、人生に不自由が生じている」と感じながらも「母を支えるのは私しかいない」と認知する母性愛幻想のようなものが混合します。
払拭できずについてまわるものであれば、必要経費と考えてみたらどうでしょう。母との関係が終わらない限り、罪悪感は生まれます。そうした経費ばかりになっていたら人生はずっと赤字になってしまいます。収入を確保して収支のバランスをとらなければならないと考えましょう。
母に対し怒りが生じては罪悪感にさいなまれるとします。この瞬間は必要経費を払っていると思えば、生き延びるために収入を確保するといったことが次の課題となるでしょう。