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目次
書籍情報
メアリ・シェリー
『フランケンシュタイン』から<共感の共同体>へ
シャーロット・ゴードン
ボストン大学Ph.D
米エンディコット大学名誉教授。
ノンフィクション作家。
白水社
- 第1章 遺産
- 第2章 ゴシックの叛逆
- 第3章 『フランケンシュタイン』
- 第4章 初期の女性の語り手_『フランス、スイス、ドイツ、オランダの一地域をめぐる六週間の旅行記』、『マチルダ』(1817~1821年)
- 第5章 『ヴァルパーガ』、『最後のひとり』、『パーキン・ウォーベックの運命』、そして新たな『フランケンシュタイン』(1822~1831年)
- 第6章 最後の仕事、1835~1844年
書籍紹介
メアリ・シェリーの個人的な経験から社会的なテーマへと視点を広げ、共感という概念がいかにして文学を通じて共同体を形成するかを詳細に分析しています。シェリーの生涯は、彼女が男性中心の社会の中でどのように創造性と知性を発揮したかを示すだけでなく、彼女の作品が現代のフェミニズムや倫理学、科学技術の倫理問題に対する洞察を提供するものであることを明らかにします。
フランケンシュタインを創造した人物
シェリーの『フランケンシュタイン』が単なる怪物創造の物語以上のものであると論じます。この小説は、孤独と疎外、そして究極的には共感の欠如がどのように個々人と社会全体に影響を与えるかを描いており、今日でも新鮮なテーマとして読まれる理由を提示します。また、シェリーが生きた時代の背景や彼女の人間関係、特にパーシー・ビッシュ・シェリーとの複雑な関係が、彼女の創作活動にどのように反映されているかも深く掘り下げています。
他社との共感と倫理
シェリーの作品が持つ普遍性と現代性を強調しながら、読者に問いかけます。私たちはどのように他者と共感し、理解し合うべきなのか、また科学技術の進歩がもたらす倫理的な問題について深く考えるきっかけを提供します。ゴードンの分析は、単に文学作品を読み解くだけでなく、私たちが生きる社会とその未来についての洞察を与えてくれます。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
『フランケンシュタイン』が掲げるテーマ
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メアリ・シェリーは、物語を創造するために自分の幼少期の経験に頼りました。母がすぐに自分を出産して亡くなったこと、父親に拒絶されたこと、彼女が既婚者である男性を愛し非難される人生を歩んだこと。
これに加えてプロットの工夫を書き足し、ほかの物語と比較しても突出した作品となりました。この創造過程に対し両義的だったことは、『フランケンシュタイン』のサブタイトルに「現代のプロメテウス」とサブタイトルを付けていることからも想像できます。
神話のプロメテウスは芸術・技術を自己犠牲の上に賛美される対象です。いかなる犠牲を払ってでも創造するという意気込みが感じられます。
『ロドア』
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メアリ・シェリーの後期小説は、力の均衡、愛、調和のために声を上げる女性登場人物のストーリーが中心です。
衝動にかき立てられた男性のふるまいに主人公が勝利するという物語となっています。家族や平等主義的な理想をもとにしています。
『ロドア』では1830年代の女性教育問題に向き合っています。イギリスの貴族社会が思慮浅薄であることを非難しているのです。時代の波に揉まれ、登場する女性たちは救われていません。報われなかった女性を救うヒーローをメアリ・シェリーは描かないのです。
ろくでなし男性のロドアとの不倫により、生まれたエセルを溺愛します。第1巻でロドアが死ぬと、独学で教育を積んできた知識人ファニーと友情を育んでいます。ファニーはまっすぐな生き方をし、社会改革に取り組むといった物語です。
女性に教育と自由を与えれば世界が良くなると表現しているように思えます。多くの批評家がこの作品を「ロマンス」と評価したため、この小説は飛ぶように売れました。