雑誌「Newton 2022年7月号」

Focus

 話題の最新研究やニュースをコンパクトに紹介するコーナーです。
 毎月いくつかの情報を紹介されています。ここでは個人的におもしろかった記事を、さらにコンパクトにしてピックアップします。

ダ・ヴィンチ考案の羽根で飛ぶドローン

ジャンル:工学

出典: A New Spin on a Classic da VinciDesign,

University of Maryland, News Relese 2022.2.15

 レオナルド・ダ・ヴィンチは絵画や建築物のほかに、みずからが考案した様々な機械のスケッチを残しています。

 「空気ねじ」とよばれる、らせん状の回転機械はヘリコプターの原型といえる発明です。しかし、空気ねじで浮かび上がるのは不可能だと考えられていました。

 アメリカ、メリーランド大学の大学院生プリート氏らは、4つの空気ねじ式回転翼をつけたドローンを作成し、実際に飛行させることに成功させたのです。

 空気ねじは軽量のカーボンファイバーと薄いフィルムでできています。毎分7000~8000回転することで、重量600グラムの期待が浮上するのです。

 空気ねじの性能は通常のヘリコプターのローターに匹敵し、さらなる向上も期待できるといいます。

 また、この空気ねじには通常のローターより騒音を小さく抑えられる特徴があるのです。

死者を彩った顔料

ジャンル:人類学

出典:New insights on commemoration of the dad through mortuary and architectural use of pigments at Neolithic Çatalhöyük, Turkey

Scientific Reports, 2022.3.8

 古代社会における顔料の利用は象徴的な活度が儀礼と関連しています。その証拠はアフリカや西アジアにみられ、約18万年前の中期旧石器時代にさかのぼるのです。

 フランス、ボルドー大学のスコッツマンズ博士らは、チャタル・ホユック遺跡では新石器時代の埋葬に用いられた顔料と、死者が生前に居住していたと推定される住居に用いられた顔料について分析しました。

 成人男性は赤色の顔料、女性や未成年は青色の顔料が用いられ、身分の高いごく一部の人にほどこされていたのです。

ヒトゲノム完全解読

ジャンル:生物学

出典:The complete sequence of ahuman genome

Sience, 2022.3.31

 ヒトゲノムの「ヘテロクロマンチン領域」という、遺伝子のはたらきを制御する配列は未解明な部分がありました。これらの配列を解析する技術は、これまで開発されていなかったのです。

 アメリカ、国立衛生研究所のフィリッピー博士らのグループは、染色体の末端からもう片方の末端までを解析し、30.55億塩基対のヒトゲノムを完全に解読することに成功しました。

 1万以上の塩基を1本のDNA鎖として、一度に解析できる装置を用いることで、繰り返し配列を特定することができたのです。それにより、Y染色体以外の染色体をすき間なく完全に解読することができました。

 今回新たに1956個の新しい遺伝子が発見されています。

 ついに完全なヒトゲノム配列が完成しました。今後は、ヒトの遺伝的多様性を明らかにするために、ヒトゲノムの研究を進めていくと博士らはのべています。

Focus Plus 科学界に影を落とすウクライナ侵攻

 話題のニュースを紹介するコーナーです。

ロシアと共同の火星探索は凍結が決定

監修:柳川孝二 宇宙航空研究開発機構社友
監修:蒲田裕 量子科学技術研究開発機構 那珂研究所 副署長
執筆者:中野太郎

 ロシアに対する制裁は、ヨーロッパの宇宙探査にも影響をあたえています。現在ESAはロシアと共同で火星探査ミッション「エクソマーズ」を進めており、2016年にはその第1弾として火星周回機「TGO」をロシアから打ち上げ、2022年9月には第2段として、ロシアの火星着陸機「カザチョク」とESAの火星ローバー「ロザリンド・フランクリン」がロシアから打ち上げられる予定だったが、今回の侵攻を受けてESAはこのミッションを凍結しました。

 ESAはロスコスモスと協定を結んでいて、これまでに衛星測位システム「ガリレオ」、位置天文衛星「ガイヤ」、民間の衛生インターネット網「O3b」や「OneWeb」の衛星が打ち上げられていきました。

 しかし、ロスコスモスはこの提携も中止し、ロシアのスタッフを引き上げることを発表しています。

 宇宙分野に限らず科学研究でロシアとの協力関係を断ち切ったのはドイツです。ドイツ連邦教育研究省が声明を発表し、現在進行中の交流すべてを即停止するとしています。

 イギリス政府も、ロシアの大学や企業との共同研究に公的な研究資金を提供することを停止する発表しているのです。

量子コンピューター2022

監修:藤井啓裕 大阪大学 基礎工学研究科教授
執筆者:小谷太郎

加熱する開発競争

 2010年代に入るとD-Wave社の量子コンピューターの販売、Googleやインテルの参入があり、量子コンピューターのブームが訪れています。

 アメリカや中国は1000億円以上の巨額投資をしており、欧州もそれぞれに100億円単位で研究費に費やしているのです。

 日本でも2018年から年間約120億円を支出しています。

 アメリカと中国がリードしているようにみえます。しかし、実用的な量子コンピューターには数千~数万の量子ビットが必要だと考えられていて、これからいくつもの壁を越えていく必要があるのです。

 科学技術の進歩や将来を予測するこは困難です。今後の量子コンピューターの発展に期待しましょう。

 新川崎・想像のもり かわさき新産業創造センター(KBIC)に設置された量子コンピュータがあります。2019年に東京大学とIB社のパートナーシップにもとづき、2021年7月に設置されました。

世界の都市図鑑

監修:中島直人 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻准教授
執筆者:加藤まどみ

都市はどんな場所にできるのか

川の河口

ロッテダム、酒田、水戸、ロンドン、ニューオリンズ、上海

 中世まで陸上よりも水上のほうが運搬のスピードが速かったため、交易の重要な拠点となりました。

 水辺は水害ととなり合わせの土地でもあります。

湾のくぼみ

シドニー、東京、横浜、ニューヨーク、リオデジャネイロ

 くぼみの内側は波が穏やかで船が停泊しやすいです。古い港湾都市は自然の地形を利用したものが多くみられます。

 現代においては埋め立てなどの土木技術を用いて計画的に設計されています。

盆地

ボルツァーノ、京都、カトマンズ、マドリード、台北

 山に囲まれた平坦な土地であり、略奪しようとする敵から防御するのに優れていました。季節による気温差が大きく、空気の流れが少ないといった特徴があります。

平野の中心部

東京、大阪、ロサンゼルス、パリ、ブエノスアイレス

 凹凸の少ない土地は聖地の必要がなく、開発がしやすいです。街を拡大しやすく、都市を発展させやすい特徴があります。

海峡の両端

下関と北九州、コペンハーゲン、マルメ、バンクーバー、ビクトリア

 2つの陸地がせり出しているのが特徴です。陸地と陸地を結ぶことができ、海上の交通においても重要な拠点になります。

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