人類超長期予測

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 軍事戦略、経済成長、外交政策、公衆衛生といいた数々の重要な問題について語るのであれば、まずは人口から始めなければなりません。

 あるゆる政治・経済・社会の基盤をなすのは人間です。

 人口動態が政治・経済・社会に及ぼす影響を把握しなければ、世界の全体像は見えません。

書籍情報

タイトル

米国国防省・人口統轄コンサルタントの

人類超長期予測

80億人の地球は、人口減少の未来に向かうのか

訳者 栗木さつき

制作進行 ダイヤモンド・グラフィック社 

発行 ダイヤモンド社

装丁 井上新八

ブックデザイン 岸和泉

DTP 中西成嘉

印刷 堀内印刷所(本文)・新藤慶昌堂(カバー)

製本 ブックアート

編集担当 木山政行

著者

ジェニファー・D・シュバ

テネシー州メンフィスにあるローズ・カレッジ国際研究学部准教授。

 人口動態と安全保障に関するエキスパートにして、米外交問題評議会メンバーです。アメリカ国防総省で人口統計コンサルタントとして脚光をあびました。

出版

ダイヤモンド社

高齢化による打撃をやわらげる

UnsplashDavid Siglinが撮影した写真

挙がっている4つの策
●移民受け入れの数を増やす
●定年延長
●給付費
●年金の減額

 国によって、退職するにふさわしい年齢と、実際に退職する年齢にはギャップがあり、社会が違えば労働文化も違います。日本では高齢になっても働き続ける権利を求めて戦い、年齢制限の緩和を実現させてきました。2016年には、働きたい65~69歳の雇用率が43%近くになっています。

 年金を一部受給しながら働き続ける、早期退職して年金減額を受け入れる、といった柔軟な方針「フレキシブル・リタイアメント制度」は、高齢化しているOECD加盟国では人気がありません。しかし、年金支給額を減らし、労働力人口の増加による経済の活性化には、期待が持てる方策です。

死亡率を下げるための投資

UnsplashGiorgio Tomassettiが撮影した写真

国々の人口構造
 人口構造が大きく変化するうえで、死亡率がきわめて大きな要因となっています。死亡率と出生率は、世界の人口に関して大きな隔たりを生んでいるのです。
 19世紀になってから工業化が進み、一部の国では疾患に関する知識が増えたことで、公衆衛生のためのインフラが整い始め、死亡率が激減しました。
 子どもが乳幼児に死亡することが多かった時代は、家業を継がせるために子ども6、7人欲しがったかもしれません。しかし、都市に住み豊な生活を送れる家庭では、それほど多くの子どもを必要としなくなったのです。

 新型コロナウイルス感染症に関しては、短期のうちに指揮を執るうえでも、長期計画を立てるうえでも失敗したことがわかっています。SARS流行発生後にも変革を起こすことが出来なかったからです。

 政治的意思を実行に移すには資金調達が欠かせません。多額の負担を強いられている人の87%は中所得国の住民です。世界銀行とWHOは1人あたり2ドルを費やす必要があると試算していますが、実際にはできていません。

 テクノロジーには既に期待ができるものがあります。緊急時にドローンが血液を運び、道路が整備されていない山岳地帯に輸送することが出来ているのです。

 避難民の公衆衛生問題、気候変動による生態系の影響を受けた動物感染症問題、死亡率に関わる取り組みへの問題に対し、しっかりと取り組めているかどうかで平均寿命は延びるのです。

 出生時平均余命が短くなったり、コレラのような感染症の発生数が急増した場合には、自分たちが健康に過ごすために、これまで投資してきたのかどうかを検討しましょう。

アイデンティティ政治をめぐる5つの教訓

UnsplashSara Kurfeßが撮影した写真

 世界各地の国民国家で民族構成が確実に変化し続けます。民主国家では反移民政策を訴える政党が力を持ったり、選挙で対立するのではなく路上で暴動が起こりやすい国では、暴力行為が蔓延するでしょう。そうした人口構造の変化を観察すると、いくつか教訓が得られるのです。

5つの教訓
第一
 社会の調和を促進するには、教育、雇用、貧困に対処する政策を実施しなければならない。
第二
 民主主義は万能ではない。アメリカやドイツなどの多民族国家は不安定だけれども、北アイルランドのように被選挙権を補償して共存を可能にしている国もある。
第三
 民族・宗教的なバランスを取るのが難しい国の民主化は、衝突を生みやすい。エジプトではアラブの春以降、リベラルと左派、イスラム主義者という体率の構図ができている。
第四
 アイデンティティ集団を一枚岩として扱うべきではない。イスラム教徒のなかには規律を重視しない世俗派と、規律を重んじる正統派がいて対立関係にある。
第五
 認知が重要になる。民族、人種、宗教といった人口構造の変化が加速し、アイデンティティをめぐる対立が激化することを覚悟するべきだ。

80億人が望む未来は訪れるのか

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

ポールの生活
 ニューヨーク州の北部、自宅で妻と2人の子どもと一緒に、50歳の誕生日を祝うだろう。まだ、年寄りだと思ってもいられない、経済的に余裕ができるまで後20年は働かなくていけないからだ。
 住宅ローンが残っていて、昨年のハワイ旅行のクレジット払いがまだ残っている。
 長生きしたいとは考えているが、医者からコレステロール値が高いと言われていて糖尿病になると、脅されている。それでも、母が焼いてくれたジャーマンケーキをゆっくりと味わい、缶ビールを開けて、のんびりテレビを観るのだ。

ファドゥマの生活
 アフリカ大陸の東端にあるソマリアで、腹部に悪い予感を覚えていた。この前月経があってから、何日経っただろう。これまで、3人の出産を経験してきたけれど、妊娠初期と同じような感じがする。
 一番下の子がまだ授乳中なのに、養わなければならない子が増えると思うと、死ぬほど恐ろしい。
 まだ22歳なのに、すでに疲弊しきっている。

 ポールとファドゥマが体験していることは、富裕国と貧困国の人口推移に見られる格差を象徴しています。

 世界の人口増加は緩やかになったけれど、増加中の世界に生きています。

 私たちは相互に依存し、相互に連結した世界で生きていて、1つの国が難題や脅威に包囲されれば、私たち全員がすぐにその影響を受けるのです。感染症の流行、気候変動、経済危機が含まれます。しかし、幸運もまた分かち合うことができます。

 いま地球上に80億人の人々をどう活用すれば、私たちが望む明日の世界を形成することができるのでしょうか。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 人口動態の話と関連づけて、他民族間の衝突だったり、政治だったり、雇用だったり、経済だったりの考えをまとめてくれている本です。

 アメリカの多民族国家で、何か安定した方案を通すのは激ムズでしょう。けれど、多種多様な人種がいるからといって、共存が不可能なわけではないようです。

 日本社会だって、掃除のおばちゃんが居なくなったらメチャメチャ困ると思います。

 色々なところで世界が回っていて、いま私は日本に住んでいます。注意力が必要となるドライバーなどは若い人が勤め、掃除や簡単な接客は働き足りない準高齢者が担うなど。これからは上手く共存できたら、過ごしやすくなるのではないでしょうか。

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