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目次
書籍情報
ヴィクトリア朝ロンドンの日常生活
世界都市の市民生活から食文化、医療、犯罪捜査まで
発刊 2023年12月4日
ISBN 978-4-562-007365-8
総ページ数 349p
マイケル・アルパート
ウェストミンスター大学名誉教授(歴史)。銀行員、教員を経て、大学で研究を続けた。
原書房
- まえがき
- 謝辞
- 通貨に関する覚え書き
- 第1章 世界一大きく、豊かで、人口が多く、洗練された都市
- マスト、帆桁、大綱の森
- 申告するものはありますか?
- 巨大都市
- 泥、暗さ、飢え
- 貧民窟
- 第2章 女性の居場所?
- 女王陛下万歳!
- 「わたしには死者の行進に見える」
- 黒髪でエキゾチック_ローラ・モンテス
- 永遠の美
- 結婚、離婚、女性の居場所
- ズボンを穿いた女性!
- 妊娠に〝陥る〟
- 第3章 彼らは何を食べ、どこで買い物をし、何を着ていたのか
- ディナーをご一緒にいかが……?
- 彼らは何を食べ、いくら払っていたのか?
- 美味しいお茶
- 家族の食費
- 鍋物はどのようにやってくるのか_ロンドンの買い物事情
- 外食しよう
- 食べれば好きなる
- 「これが金曜日のお楽しみだ」
- 贅沢な食事
- 町での買い物
- 着るものが女性を作る
- どんな服を着ているのか見せて……
- ビーバー!
- 第4章 病めるときも健やかなるときも
- 内科医と外科医
- あなたは苦しんで子を産むことになる
- 短くてひどい人生
- 「想像を絶するほど汚い場所」
- ドクター・サイモンの報告
- 「恥ずべき場所」
- 吐き気がするような臭い
- コレラ〝王〟
- 「トゥーティングの楽園」
- 真の原因_汚染水
- 巨大な排出膣
- ドクター・スノウとブシロード・ストリートのポンプ
- 第5章 お金、住宅、階級
- 汚い金
- 「あの丘には黄金がある」
- 詐欺師
- 破産
- 住宅
- 「めかし込んだ愚かさ」
- 家庭料理
- 家庭の快適さ
- 階級
- 中産階級の人々
- 税
- 救貧院
- 第6章 学問、文学、典礼
- 広く行き渡る無知
- 自助
- 常に本に顔を突っ込んでいる
- <ミューディーズ>の箱は届いたか?
- あなたは信じますか……?
- 大ミサと低教会
- 日曜には禁止
- 自分たちのような人間には向いていない
- エクセター・ホールで主に合う
- トラクト運動に関心は?
- 第7章 アウトサイダー
- 「教皇と枢機卿は、逆境から何も学んでいない」
- 「貧困の嘆き」
- イングランド……ただひとつの安全な避難場所
- 自由の国
- チャーティスト
- 「古着!」
- 通りに沿って
- 第8章 コミュニケーション
- 馬車!
- お急ぎください!
- ヘイ・ホー、風に雨
- 「いざや、金切り、雄叫び、戦慄きつつ」
- 騒音……そして人々
- 警察に連れ戻される
- 電気の花火
- 郵便配達員のノック
- 第9章 「建物を揺るがすほどの大喝采」 ロンドンの娯楽
- 遠出
- ビールを飲み続けて
- パノラマ、ジオラマ、コズモラマ
- この半分もよいものはない
- 「暗愚な異教徒」
- 恐怖の部屋
- 「いいや、彼らは動いていない」
- スパンコールとおがくず
- 「次第に評判が悪くなったたまり場」
- 大道芸
- フェアの楽しみ
- 「バンジョーを膝にやってきた」
- 「ハレルヤ」
- 「管理者は権限を有する……」
- 「手をお放しください!」
- ペニー・ギャフ
- 「紳士淑女の皆さん、途方もない報酬で……!」
- 「くそったれ」
- 精神の向上
- 第10章 犯罪、警察、掲示、そしてマニング殺人事件
- 刑事
- 「バーモンジーの恐ろしい殺人事件!」
- 爪先だ!
- ヒュー・アンド・クライ
- ディケンズと刑事
- 「非常に美しい女性」
- 第11章 裁判と処刑
- 殺人を犯した女
- どのように抗弁しますか?
- 彼らは絞首刑になった
- 第12章 高揚と悲しみ
- 万国博覧会
- 「今日、一人の偉大な武将が倒れた」ウェリントン侯爵の葬儀
- 物事は変われど本質は変わらず
- 参考文献
- 原注
ズボンを穿いた女性!
1851年に、女性をわずらわしい服装から解放する運動に激しい反発がありました。脱女性化の恐怖が広範囲にあったのです。
19世紀の初めにはスカートの下に穿くくるぶし丈のズボン〝ブルーマー〟は開発されていました。なにもやましいものではありませんが、「池に沈めるぞ」などの脅しが男性からあったようです。
そこから40年を経て、ブルーマーはサイクリングをする女性たちに着られるようになりました。このブルーマーに触発されて、権利拡大に深刻な憂慮を表明する記事や芸術作品が数々と生まれています。
どうやら、男性社会から女性の生活を守るものと考えられていたようです。
税
1842年、サー・ロバート・ピールはナポレオン戦争後に廃止された所得税を復活させ、年収150ポンドを超えた部分に課税しました。
課税したのは350ポンドに対してわずか10ポンド4シリング3ペンスほどです。まんぞくに食事や衣服を揃えられないような課税金額でした。今となってはささいに思えるようなものでも、やはり負担だと考えられていたのです。
平均所得として報告したものがすべてだと、土地などからの所得は可処分所得であると断固として認めない、数ポンドの支払いを拒む人はいました。
ビールを飲み続けて
1841年、ビールの値段はかなり安く、1日1パイントほどで十分な飲酒ができました。けれど、収入の20%も酒に使う仮定もあったほど、パブは娯楽の一部としてにぎわっていたのです。
1849年でビールの年間消費量は1人当たり19.4ガロンという調査結果がありますが、禁酒している人や子ども、老人が数に含まれていることを考えると、多くの人々が平均よりもずっと多くの酒をジン御殿で飲んでいたことがわかります。
コンサート、ミュージカル、曲馬、サーカスと、幅広い娯楽が提供されていたて、ビールや蒸留酒を飲みながらガヤガヤと楽しんでいました。
本質は変わっていない
1832年、コレラの流行がロンドンを襲った後、医者のエゴであるとワクチンを拒む人が多くいました。
衛生委員会は無視され続け、過激に施設を破壊したり、病棟を壊して家族を無理やり連れ戻した騒動も起こっています。
現代でも麻疹や百日咳といった、必然的に接種しているワクチンですら拒否し続ける人もいます。新型コロナウイルスに関してもワクチン接種を拒んでいることでしょう。
この拒絶は政府とロンドンの行政が頭を抱えている問題です。今も根強く拒否民が大衆をなしています。その新しい出来事に対しては2世紀経っても、ほんの少ししか改善されないのに、王室行事や国家行事での大衆の行動は、今も妙に模範的です。
さまざまなことがすっかり変わった一方で、大衆の考え方が昔のままとなっています。歴史とはそういうものなのかもしれません。