人生は苦である、でも死んではいけない/著者:岸見一郎

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※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

書籍情報

タイトル

人生は苦である、でも死んではいけない

発刊 2020年3月1日

ISBN 978-4-06-519213-9

総ページ数 240p

著者

岸見一郎

哲学者、心理学者。専門は、ギリシア哲学、アドラー心理学。

出版

KODANSHA

シリーズ:講談社現代新書

もくじ

  • はじめに
  • 第1章 人生は苦である
  • 第2章 病
  • 第3章 老い
  • 第4章 「有用性」に意味はない
  • 第5章 死は忘れてもいい
  • 第6章 死んではいけない
  • 第7章 他者との結びつき
  • 第8章 今ここを生きるために
  • おわりに
  • 参考文献

はじめに

 「今」を生きることが大切です。何かを達成するためにの準備期間ではありません。すなわち、「今」は何かのリハーサルの時間などでは決してなく、常に本番です。

 ともかく、前に進んでいこうとします。たとえそれが小さな一歩にすぎなくても。そう思うと、生きることも辛くなるでしょう。

 現代社会には苦しみが満ちていて、生きていれば苦もあれば楽もあるというよりも、生きること自体が苦です。

 太宰やギリシア悲劇のコロスが歌うように、生まれてこないことがいちばんいいことなのでしょうか。

 私はいいたい、「死んでしまうよりも、生きた方がいい」たとえ、いずれ死んでしまう定めであっても。

当たり前の喪失

 多くの人は、漠然とであれ、これからの人生をどういきようかと考えています。それだけでは飽き足らず、遠い将来までも見据えて人生設計をする若い人もいるようです。

 ところが、病気になるとその人生計画はたちまち狂わせれます。重い病気であれば、学業や仕事をやめなければならないこともあるでしょう。

 仕事ができなくなって、収入が減れば生活は一変します。それが、対人関係の問題を生みます。介護が必要な親を引き取ると、親がやってきた途端に家族の関係が変わってしまうのです。

 必ずしも、悪影響を及ぼすとはかぎりません。むしろ家族の結束が強くなることもあります。

老いてからの学び

 英語、ドイツ語、フランス語、ラテン語、ギリシア語を順々に若い頃に勉強し、大学では哲学を専攻しました。大学院を終える頃には、私が学びたいと思っていた哲学を少しも面白いとは思えなくなっていたのです。哲学研究者ではなく哲学者になりたいと思っていました。

 本当の学びは有用性や生産性から離れなければなりません。他社と競争して生きているときには難しいものです。

 ありがたいことに、歳を重ねると競争や評価からは自由になれるので、若い時とは違って学ぶ喜びを感じられるようになります。時間もあり、いつまでに書き上げなければならないということもないのです。

よく思われなくてもいい

 アドラーは次のように言っています。

認められようとする努力が優勢となるや否や、精神生活の中で緊張が高まる

 勉強を親のためにするわけではないが、親から褒められて育った子どもにとってはそうではありません。そのような子どもであれば、誰かも認められたいと思って勉強するはずです。

 親の期待通りに特別になることができないとわかったら、悪くなろうとする子どももいます。

 人からどう思われているかは、自分の価値や本質とは何の関係もないことを知らなければなりません。仕事での評価でさえ、絶対のものではないのです。古来、芸術家が生存中に正当に評価されなかった例は枚挙にいとまがありません。

 詩人にとって大事なことは、「書かずにはいられないか」だけであり、そのように思って詩を書く人にとって他者からの評価などは問題にならないでしょう。

不断の決断

 生きることには、どこに向かうかという目標はなくていいでしょう。ただし、生きる以上は、不断の選択は必要です。

 今の時点で選べる選択肢を探すというのが1つの方法で、決断に遅すぎるということは存在しません。

 できれば、自分の存在が他者に貢献していることを意識すると良いでしょう。他者と自分を分別せずにいると、他者と結びついていると感じれるからです。

 成功することを人生の目標にしないことは必要です。生きているだけで他者に貢献することはできます。

 あらゆる決断をしたとしても、今度はその決断に固執しないことも大切です。他者貢献と幸福を目指す道は1つではありません。

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