※読んだ本の一部を紹介します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
はじめに
「正義」は時として甚大な被害をもたらします。20世紀半ばに起こったアジア太平洋戦争では、「生鮮」や「大儀」という名のもとで、日本だけで300万を超える人命が失われています。同時代にどれほど素晴らしく見える正しさも、絶対視するべきではありません。
熱く正義を語る人の横顔に、好戦的な表情がのぞいた時には注意です。多くの「正義の味方」が、敵を倒すために暴力の行使を辞さないように、正義と狂気は容易く結びつくものになります。
書籍情報
正義の味方が苦手です
第1刷 2023年1月20日
発行者 佐藤隆信
発行 (株)新潮社
装幀 新潮社装幀室
イラスト k.nakamura
印刷 大日本印刷(株)
製本 加藤製本(株)
ISBN 978-4-10-610980-5
総ページ数 221p
古市憲寿
社会学者。コメンテーター。
同世代を代表する論者としてメディアで活躍しています。
新潮新書
会ってつまらない人はヒット生み出せない
偉人の多くは、人物としても魅力的なことが多いと思います。iPS細胞で有名な山中伸弥さんのスピーチは、いつもユーモアにあふれています。
ヒットメーカーは実際に会っても面白い人ばかりです。朴訥として語り口であろうとも、話す内容が知性やアイディアにみちています。
会ってつまらないのに、成果物が非常に素晴らしい人物に遭遇したことはありません。
一人旅は寂しくない
一人旅は他人との関与が不可欠です。見知らぬ誰かに道を聞いたり、ホテルのフロントで盛り上がったり、出会いがあります。
私自身の経験を振り返ってもそうです。ロンドンで留学時代の友人に出くわしたり、ローマのタクシー運転手に口説かれたり、ヘルシンキで社会運動家の女性に「アジト」へ案内されたり、事件は一人旅のほうが起きやすい気がします。
物理的には1人になることは簡単です。スマートフォンを開くと、誹謗中傷、噂話と他者で溢れています。意地悪な同僚や、むかつく知人の顔がうかんでしまう人もいるかもしれません。人間はなかなか孤独にはなれないものです。
しかし、孤独感を抱くのは簡単です。会話が途切れたり無言だったり、話が合わなかったりするだけで、寂しいと思ってしまいます。孤独を感じる基準が低くなっているのかもしれません。
その孤独感を感じる解決策が、旅の思考なのかもしれません。寂しければ、旅に出ればいいのです。
余所者だと思って生きていく
日本は衛生観念の高い国だと言われています。しかし、去年の終わり頃、東北新幹線に乗った時、夕方の便では決まってトイレの石鹸が切らしていたのです。
ポスターで手洗いを啓発しながらも、トイレに石鹸を置いていない駅も多くあります。
石鹸くらい補充して欲しいと思うが、いちいち文句をつけていると疲れてしまいます。最近は、サービスに不満がある時は、「この国や地域ではそういう流儀なんだな」と思うようにしているのです。
極端に言えば、「外国だ」と思えば許せることが増えます。自国の社会もにたようなものです。海外に移住せずに暮らしても寿命は100年くらいなものです。その国の歴史と比べれば、人間の一生は狭い範囲になります。世界にとって、我々は余所者のような存在です。
年に何度かしか乗らない東北新幹線の、ただの石鹸切れは大きな問題ではありません。大方のサービスには満足しています。
宇宙人襲来で人類は団結できるか
共通の敵を前にすると人は団結できる、と言われています。本当でしょうか。
宇宙人が地球に襲来した場合、世界中の国々が直ちに戦争を止めて、共に戦うことができるでしょうか。
歴史を振り返ってみても、「征服された側」は壱枚岩ではありませんでした。裏切り者も現れるでしょう。
スペイン人の新世界征服でも、ナチスドイツ侵略でも、似たようなことは起こってきました。誰もが組織や国家の大義のために行動できるわけではないのです。
その裏切りの行動は、必ずしも「悪」だとは言い切れません。地球が制服されたあとも、宇宙人の支配下で、より反映した文明を築く可能性もあります。もちろん、一生奴隷のように扱われるなら、あっさり支配に屈するのは得策ではないでしょう。
なんにせよ、人は極限状態でも、簡単に団結できるものでもないし、分断する可能性もあります。
現代人の多くは、戦争を憎み、平和を求めているでしょうが、戦争で得をする人もいるのです。軍需企業はもちろん、自身への注目が減るスキャンダルを抱えた有名人にも恩恵があります。
世界中が平和になるのは、難しいのです。
あとがき
テレビのコメンテーターが一度に話せる時間は、おおよそ1分程度です。そのことに対して、見出しがつけられ、ネットニュースとして配信されます。
ネットニュースで評価されることに、難癖をつけるつもりはありません。そういう役割なのだから仕方がないのです。
だいたいのことはYouTubeの動画などで、10分もあれば解決できることがおおでしょう。それだけでは物足りないのなら、書物の出番です。本の1つの役割は、複雑な世界を、ある視点で切り取ることです。
この『正義の味方が苦手です』には65の文章が収録されています。言い換えれば、現代世界を65の角度で切り取った本ということになるのです。
テレビでも自由に発言しているつもりですが、時間の制約があります。
この2年間、テレビでは言えないことをまとめた書籍が、多くの人に読まれたならば嬉しく思います。
感想
サイト管理人
まあ、手洗いに石鹸は必要ないかもしれません。どれだけシッカリ洗うかによって、予防効果が期待できるのではないでしょうか。著者自身も正義があることを認めて、柔軟に切り替えている様子が文章になっています。
頭の柔らかい古市さんだからこそ、コメンテーターが務まっているような気がするのです。司会者から興味のない話題を振られて、応えられるかと言えば、面白くない答えした言うことができないでしょう。私にはムリです。視聴率を取れません。
視聴者が望むような回答するのもムリですし、全ての事柄に対してユーモアとセンスのあるコメントを返すのもムリです。
そう考えると、コメンテーター凄いなと思います。
コメンテーターの頭の中を覗きたい人は、下の購入リンクから本書を購入して読書を楽しんでも良いのではないでしょうか。
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