日本哲学の最前線

※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 本書は、日本哲学の最前線たる哲学者の思想を紹介します。日本哲学の最も新しい展開を追うための入門的著書でもあるのです。

 「自由のための不自由論」という観点のもとで、複数人の「有機的な」連関のうちに置くことをめざします。

 互いの思想は反響し共鳴するのです。

書籍情報

タイトル

日本哲学の最前線

第1刷 2021年8月1日

発行者 鈴木章一

発行 (株)講談社

ISBN-10 4065242959

ISBN-13 978-4065242957

総ページ数 216p

著者

山口尚

大阪工業大学講師、京都大学講師。専門は、形而上学、心の哲学、宗教哲学、自由意志。

出版

講談社現代新書

二人称的自由

作者: 小松原きより

 分析哲学者の青山拓央は、フランス現代思想を研究する國分と重なり合う議論を展開しています。

 2016年に公刊した『時間と自由意志-自由は存在するか』のなかで、不自由論を含んでる点で意義深いです。

 青山によれば、深い意味の自由は二人称的な次元において現れます。

 例えば、ひとのいない丘で寝そべって自然の中を満喫する若者のように、私は喫茶店の孤独の中で自由を楽しんでいます。この私の自由に亀裂が入るのは、「あなた」といえるくらい近しい関係の他人がいるときです。「こんにちは」とあなたがやってきたら、あなたを気にしないわけにはいきません。あなたの行為に反応しなければならず、私はあなたの自由に振り回されます。それにより、私は自己の自由の楽園を追い出されました。_以上が青山の着想です。

 あなたと関わり合うという二人称的コミュニケーションに参与することがまさしく自由意志のぞんざいを認める第一歩としています。

こだわりの偶然性

作者: サウナ猫

 自分の望むものを生み出すことを意図して行為する、などと言えるくらいに人間は自己をコントロールしているのでしょうか。千葉雅也によれば「否」です。『意味がない無意味』(河出書房新社、2018年)の序文で曰く、

 考える人は何もできない。頭を空っぽにしなければ、行為できない。

 千葉によれば、意味のあることをおこなおうとすることは、しばしば自分の行動の意味を最大化しようとする「パラノイア的な」状態を招来し、それによって自縛を引き起こすのです。

 それゆえ、行為するためには、どこかの段階で自分の意図や思惑を放棄せねばなりません。そして、自らを偶然性へ委ねなければならないのです。

 押さえるべきは千葉が「こだわりの偶然性」を強調している点です。

 千葉によれば、ひとは誰しも何かしらの「こだわり」を有しているからです。ユーモアに方向与える各自のこだわりが根本的には理由のないものとしています。それゆえ独自のユーモアは決して主体の意図的コントロールの純然たる結果ではありません。

 ユーモアを実践することは楽しく、勉強を加速させる原動力はこうした享楽です。千葉は、ひとのこだわりが変化しうると考えていることを看過してはなりません。

運に左右される存在

UnsplashEdge2Edge Mediaが撮影した写真

 吉田徹也はしばしば「運」を論じています。「私たちは運というものに翻弄されながら生きている」というのが、この哲学者の人間観の一部です。

 運には幸運や不運の違いが認められているけれど、それらは個人のコントロールを越えていると言っています。

 不運な事故が起きたときに、運と自責はそれほど「割りきれる」関係になく、重荷となってひとを苦しめます。

 実際に運と責任をめぐってわりきれない想いを抱きながら現実を生きているので、「割り切った」理論を構築しようとする道徳説は、現実から遊離しているから不十分であるとしているのです。

不自由論は人間を自由にする

Image by Angeles Balaguer from Pixabay

 苫野一徳は教育学を専門としています。苫野は不自由論の見極めたうえで、それでも可能な「自由なる意志」へ目を向けているのです。

 美味しいものを食べるという自由があったとして、そのためには働いてお金を稼がなければなりません。実際の人生は束縛の経験の方が多いけれど、乗り越えてられるかもしれないと感じたときに「自由」を感じることができるという理論です。

 制約の中にあり、制約を乗り越える実感が苫野の「自由」の概念になります。

あとがき

 紹介した哲学者たちに共通することは、不自由論を展開していることです。

 哲学の個別的活動は、時代の特性に多かれ少なかれ縛られるので、不自由な世代の私たちはどうしても不自由を無視することができません。

 哲学には時代を超越する面があり、それぞれ「不自由」をめぐる根源的洞察を提示しています。それゆえ2010年代の不自由論は時を経ても繰り返しみられるはずです。

 哲学はつねに人間生活とのかかわりの中で実践され、私たちの生き方や社会の在り方を変えます。「自由のための不自由論」は専門の枠を超えて実践の現場で役立てられる期待があると考えているのです。

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