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目次
書籍情報
凋落と再興の軌跡
ジョンブル魂とサムライの復活
発刊 2024年3月20日
ISBN 978-4-344-04243-8
総ページ数 227p
石田建昭
東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社代表取締役会長。
東海銀行で国際部門に属し、バンコク、ロサンゼルス、ロンドン、アジア各国の首都、欧州の主要都市に勤務する。国内及び国際銀行業務、投資やトレーディング等市場業務を歴任。
幻冬舎
- まえがき
- 運を引きつけるのも能力
- イマジン ロータリー
- 第一章 イギリスのスポーツ
- ロンドンの夏
- ロンドンの夏②
- ロンドンの夏③
- 第二章 世界の夏
- タイの夏
- アメリカの夏
- ヨーロッパの夏
- 函館の夏
- 第三章 芸術の秋
- オペラの思い出
- ニューヨークのジャズ
- 名画に触れる
- 忘れ得ぬ演奏家
- 第四章 身構える秋
- ポンドの危機
- アジア通貨危機
- 日本の金融危機
- リーマンショック
- 第五章 国際金融機関総会
- 米州開発銀行
- 世界銀行総会 ペルー
- 世界銀行総会 バリ
- 世界銀行総会 ワシントンDC
- 第六章 イギリスの天才たち
- チャーチル
- カーベイ・アラムーティ
- アラン・ハワード
- 日本人の天才
- 第七章 世界の要人
- 元FRB議長 ベン・バーナンキ氏
- 火中の栗
- トリシェ氏の教訓
- エドワード・ジョージ氏
- 第八章 タイの思い出
- 微笑みの国タイ
- 賭博禁止のタイ
- タイのクーデター
- 第九章 恐ろしい米国
- カリフォルニアの教訓
- カリフォルニアの教訓②
- アメリカの恐怖
- 第十章 世界のゴルフ場
- タイのゴルフ場
- アメリカのゴルフ場
- ヨーロッパのゴルフ場
- 世界のゴルフ場100選
- 第十一章 危機の時代
- 世界の金融危機
- 世界の金融危機②
- 世界の金融危機③
- 第十二章 日本の黄昏と再興
- 日本の黄昏
- 日本の黄昏②
- 日本の黄昏③
- 日本の再興
- あとがき
書籍紹介
現代社会において、伝統と革新の間で揺れる国々の姿は興味深いテーマです。石田建昭氏の『凋落と再興の軌跡 ジョンブル魂とサムライの復活』は、そのようなテーマを深く掘り下げ、イギリスと日本の歴史的背景と現代の挑戦を描き出しています。
イギリスと日本、二つの国の対比
本書は、イギリスと日本という異なる文化を持つ二つの国の盛衰と復興の過程を対比しながら、両国の特質や共通点を浮き彫りにしています。「ジョンブル魂」と「サムライ精神」という言葉が示すように、両国にはそれぞれの歴史と誇りがあります。石田氏は、これらの精神がどのように時代の波に翻弄され、そしてどのように現代に蘇ったのかを詳細に描写しています。
歴史と現代のリンク
著者は、歴史的な視点から現代の課題に光を当てています。例えば、イギリスの産業革命からの経済発展とその後の衰退、日本の明治維新からの急速な近代化と戦後の復興など、それぞれの国が直面した困難とそれを乗り越えるための努力が詳述されています。石田氏は、これらの歴史的な出来事が現代の政治、経済、社会にどのように影響を及ぼしているかを鋭く分析しています。
ジョンブル魂とサムライ精神の現代的意義
さらに本書は、伝統的な精神が現代社会にどのように適応し、生き続けているかを考察しています。イギリスのジョンブル魂は、ブレグジットや多文化社会におけるアイデンティティの模索として、日本のサムライ精神は、企業文化やスポーツマンシップとして現れています。著者はこれらの事例を通じて、伝統的な価値観がいかにして現代の問題解決に役立つかを示しています。
どんな人にオススメか?
『凋落と再興の軌跡 ジョンブル魂とサムライの復活』は、歴史と現代をつなぐ視点を提供する一冊です。石田建昭氏の緻密な研究と鋭い洞察が詰まっており、イギリスと日本という二つの国を通じて、読者に多くの示唆を与えてくれます。伝統と革新のバランスを探る過程で生まれる葛藤や希望を、豊富な事例とともに描き出す本書は、歴史好きだけでなく、現代社会に興味を持つすべての人におすすめです。
興味深い歴史の物語と現代の挑戦が交錯する『凋落と再興の軌跡 ジョンブル魂とサムライの復活』、ぜひ手に取ってみてください。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
アメリカの夏
1980年にカリフォルニアに赴任しました。当時の日本は高度経済成長に湧き、『Japan as No.1』という書籍がベストセラーになるほどの自信に満ちていました。
日本の銀行はカリフォルニア州で地方銀行を次々と買収し、東銀、住友、三和、三井などが現地の銀行業界で存在感を示していました。
しかし、オイルショックや労働者の賃金大幅引き上げ、ベトナム戦争の後遺症などが重なり、物価が年間15%も上昇し、GDPはマイナス成長というスタグフレーションに見舞われました。
景気が後退し、カリフォルニアでは不動産価格が暴落する悲劇的な状況となりました。加州東海銀行も不動産融資を多く行っていたため、破産寸前と思われるほどの不良債権を抱えていました。カリフォルニアには不動産ローン専門の「Saving&Loan」という大きな金融機関が多数あり、その全てが倒産しました。
バブルで膨らんだ日本経済に驕っていた邦銀の末路です。バブル崩壊によって日本の銀行は奈落の底に突き落とされ、結果的に銀行再編成によって現在の三メガバンク体制が築かれました。
日本人の天才
私が欧州東海銀行の頭取をしていたころ、日本の国際ビジネスの成績が上がらなかったため、救世主として東海銀行から浅井将雄さんに来ていただきました。浅井さんは、日本で円債取引の三大トレーダーと言われるほどの人物で、欧州東海銀行でも期待通りの実績を上げています。
アメリカのプリンストン大学で理系の博士号を取得した天才的トレーダーのヤンさんと浅井さんが、三菱東京UFJ銀行の天安に応じて新しいヘッジファンドを立ち上げました。その名は「キャプラ・インベストメント・マネジメント」です。
浅井さんは全財産を銀行に担保として差し入れ、ファンド会社の資本金を充当したと言われています。このヘッジファンドは驚異的な成績を残し、ビジネスを拡大させました。顧客は中東のオイルマネー、世界の年金基金、大手の金融機関などです。極めて安定志向で、金利のデリバティブや債券を活用して確実に収益を上げるスタイルでした。
彼らのファンドは業界で不敗神話が語られるほど、負けないファンドとして名声を得ています。最近では、月次ベースで8割以上という高い勝率を誇っています。世界の投資家は彼らに注目し、今では取り扱い資産が数兆円を超えて世界のヘッジファンドランキングでは15位前後となっています。
アメリカの恐怖
潜在市場が大きいアメリカに進出しようと、欧州東海銀行が一歩踏み出しました。外資系金融機関から移ってきたユダヤ系の社員をヘッドに据え、ニューヨークに現地法人を設立したのです。そのヘッドは、アメリカ市場の開拓にあたり、東海銀行グループのサポートを強く求めてきました。
しかし、結果は散々で、アメリカの現地法人は業績不振に陥り、数年後には解散することになりました。そこから恐怖の連続が始まります。ヘッドだったユダヤ系社員が、東海銀行と私個人を契約不履行で訴えてきたのです。訴訟金額は懲罰的損害賠償を含めてそれぞれ20億円相当でした。
私個人にはそんな巨額の資産はなく、保険にも入っていませんでした。人生が終わりかと思いましたが、訴訟を起こした本人が急に訴えを取り下げたため、九死に一生を得ました。
これ以外にも様々な訴訟に巻き込まれ、敗訴したこともあります。日本人は行動のメモを取らないことが多いですが、外国人は真偽を問わず詳細な日記をつけています。そのため、記録を残している外国人の方が有利に働くのです。
自分の身は自分で守るべきであり、どんなに親しい欧米人であっても安請け合いはしないと誓いました。以来、依頼や協議はノートに記録し、その日の出来事を日記に記載することを学びました。
日本の再興
日本人を勇気づけるために、ドイツ人の女性学者ウリケ・シェーデ博士は次のように述べています。
日本は必ず再興します。すでに復活の兆しが見えています。日本は規律を重んじるタイトな文化を持つ国であり、ゆっくりとした改革を成し遂げる力を持っています。精密な技術力が求められる半導体製造や精密機器などのニッチ分野で、その力を発揮するでしょう。
私はこの話を聞いて、日本の若手アスリートを思い浮かべました。日本は、東京五輪の卓球混合ダブルスのように、協力や個性、繊細さが求められる分野で金メダルを獲得しています。日本の産業界にも、こうしたニッチな分野で活躍できる人材がいることを理解しました。
岸田首相は、官邸に半導体のセブンシスターズのリーダーたちを招待しました。彼らは日本への巨額な投資や、日本企業・研究機関との提携を約束しています。背景には台湾などの地政学的要因や円安がありますが、日本の文化に対する信頼があってこその投資だと信じています。
欧米では日本株の再評価が進んでおり、日本株の復活は本物だと信じています。