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目次
書籍情報
語れるようになる 日本の文豪
志村有弘
相模女子大学名誉教授。
伝承文学・古典と近代文学の比較研究を専攻。
成美堂出版
- はじめに
- イッキに押さえる!日本の文豪と近代文学の流れ
- 巻頭特集 文豪たちの東京 1
- 文明開化の音がする!? 文豪たちがめざした明治の東京
- 巻頭特集 文豪たちの東京 2
- 大正浪漫の嵐吹く 激動の時代へと突き進む大正と昭和前期の東京
- 巻頭特集 文豪たちの東京 3
- 焼け野原からの復興 アメリカ占領下で変革が進む戦後間もない東京
- 第1章 明治前期から明治中期の文豪
- 明治前期から明治中期の時代背景
- 文豪相関図 1 明治編
- 坪内逍遙
- 二葉亭四迷
- 尾崎紅葉
- 幸田露伴
- 泉鏡花
- 樋口一葉
- 島崎藤村
- 田山花袋
- 国木田独歩
- 徳田秋聲
- 森鷗外
- 夏目漱石
- 小泉八雲
- 訪ねてみたい名作の舞台―明治編
- 第2章 明治後期から大正前期の文豪
- 明治後期から大正前期の時代背景
- 文豪相関図 2 明治後期から大正前期
- 永井荷風
- 谷崎潤一郎
- 武者小路実篤
- 有島武郎
- 志賀直哉
- 訪ねてみたい名作の舞台明治後期・大正前期編
- 第3章 大正後期から昭和前期の文豪
- 大正後期から昭和前期の時代背景
- 文豪相関図 3 大正後期から昭和前期
- 芥川龍之介
- 菊池寛
- 小林多喜二
- 横光利一
- 川端康成
- 井伏鱒二
- 梶井基次郎
- 堀辰雄
- 中島敦
- 宮沢賢治
- 江戸川乱歩
- 訪ねてみたい名作の舞台大正後期・昭和前期編
- 第4章 戦後の文豪
- 戦後日本の時代背景
- 文豪相関図 4 戦後
- 太宰治
- 坂口安吾
- 三島由紀夫
- 大岡昇平
- 吉川英治
- 訪ねてみたい名作の舞台―戦後編
- 文豪の偉業に触れる! 訪ねてみたい全国文学館 MAP
- コラム
- 文豪への道1 弟子入りと作品の発表まで
- 文豪への道2 雑誌文化と文庫
- 文豪への道3 文学賞
書籍紹介
本書は、文学を通じて日本の歴史や文化を深く理解することを目指す読者にとって必携の一冊です。この書籍は、日本の文豪たちの人生と作品を通じて、彼らの時代背景やその思想、そして作品が生まれた背景を詳しく解説しています。明治から昭和にかけての約40人の文豪が登場し、各々のエピソードや作品紹介、そして彼らがどのようにして文学界に影響を与えたかが丁寧に描かれています。
文豪の魅力
本書の魅力は、文豪たちの個々の物語が、単なる伝記にとどまらない点にあります。志村氏は、文豪たちの人生を通じて、その時代を生き抜くことの意味、そして文学が持つ力について読者に考えさせる巧みなストーリーテリングを行っています。各章は、作家の生涯、代表作の背景、そして彼らの人間性や思想を探ることで構成されており、読者はただ作品を知るだけでなく、作家自身の心の内面や時代背景に触れることができます。
また、非常に読みやすく、豊富なエピソードとイラストが挿入されていて楽しめる内容となっています。イラストが加わることで、物語がより生き生きと感じられ、文学作品が生まれるまでのドラマティックな過程を視覚的に楽しむことができます。
文学と文化
「語れるようになる 日本の文豪」は、文学をより深く理解し、他の人々とその知識を共有するために最適な書籍です。文学というレンズを通して、日本の歴史や文化を学ぶことで、読者はこれまで知らなかった新たな視点を得ることができるでしょう。いわば、この本は、文学愛好家のためのガイドであり、各文豪の物語を通じて、日本文学への理解を深めるための旅を提供します。これは、ただ知識を得るだけでなく、心を豊かにし、文学への愛を再確認する機会でもあります。
このような書籍を通じて、志村有弘氏は、文豪たちの人生と作品を再評価し、それらが現代にどのような意味を持つかを問い直すきっかけを与えています。この本は、文学が単なる物語以上のもの、人間の本質や社会の反映であることを示す一助となるでしょう。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
坪内逍遙
※イメージ
坪内逍遙は、明治維新後に名古屋に移住しました。兄たちから読み書きを学び、母の影響で戯作や歌舞伎に親しんだことが、のちの執筆活動や演劇研究に大きな影響を与えています。
愛知外国語学校進学後、シェイクスピアの『ハムレット』と出会い、現代にも通じる不変の心理を表現する外国文化に惹かれました。東京開成学校(のちの東京大学)に進学して、西洋文学を学び、イギリスの作家スコットの『ランマムーアの花嫁』の一部を意訳した『春風情話』を刊行しています。
西洋との小説観の落差を実感し、勧善懲悪の小説を評論『小説神髄』で否定しています。人間の内面を描くべきと説いて近代文学への道を開きました。
逍遙は、二葉亭四迷との出会い後、後進の指導に力を入れています。東京専門学校(現・早稲田大学)の講師となり、文学科を創設し、「早稲田文学」を主宰しました。
『桐一葉』など数多くの戯曲の制作、シェイクスピアの全作品の翻訳という偉業を成し遂げ、熱海で病没しました。
吉川英治
※イメージ
父の事業が傾き、小学校高等科を中退して船具工などの食を転々とした貧困のなかで育ちました。そんななか川柳に親しみ句会に積極的に参加し、やがて文学に目覚めます。大正3年に『講談倶楽部』の懸賞小説に『江の島物語』が当選し、頭角を現しました。
長編小説『親鸞紀』、雑誌に投稿されていた『剣難女難』、伝奇的時代小説『鳴門秘帖』で、人気作家となりました。史実を織り交ぜながら描く、壮大な物語です。世のため、身を捨てて働く人物を主軸に置くことで、大衆小説として人気を博していたようです。
吉川の転換期は昭和10年の『宮本武蔵』です。本作を機に伝奇小説から伝記を元にした歴史小説へと作風が変化しています。『三国志』、『檜山兄弟』と、人物の確立と社会的背景を軸にリアリティのある物語を展開するようになりました。