※ 毎朝、5分以内で読める書籍の紹介記事を公開します。
目次
書籍情報
鬼時短
電通で「残業60%減、成果はアップ」を実現した8鉄則
発刊 2024年3月12日
ISBN 978-4-492-55832-4
総ページ数 228p
小柳はじめ
Augmentation Vridge(AB社)代表、元電通「労働環境改革本部」室長。
前者の労働時間の大幅短縮に成功、53歳で電通を早期退職し独立。
東洋経済新報社
- はじめに 経営陣のみなさん、いまこそ「時短」すべきです
- 序 章 「社長特命」が下った日
- 「時短」の特命が下った日
- 電通のグループ会社で「労働環境の改善」を実現
- 改革に参加するにあたって出した「条件」
- 「文化」は変わらないし、変えようとしてはいけない
- 優秀なメンバーを改革チームに巻き込んでいく
- 夜10時、電通ビルの灯が消えた
- 2年間で残業時間を40%以下に短縮
- 長時間労働=カッコ悪い=若い人が寄りつかない
- 「時短」ができる会社は、他の目標も成し遂げられる
- プロジェクトを成功に導く「8つの鉄則」
- 鉄則1 社長は「私欲」で訴えよう
- いつまでも平時の「タテマエ」では誰も働かない
- 経営者の「心の底からの欲求」
- 新社長が会社に発信したメッセージ
- 人材が集まる会社にする
- 「アスリートは試合の前日に徹夜しない」
- 「面従腹背」はやめてくれ
- 役員の処遇は社長にしかできない
- 社長が言ってはいけないNGワード「現場で考えろ」
- 日本の《現場》は治外法権
- 社長が発信すべきメッセージの3条件
- 「働き方改革」ではない、雇う側の「働かせ方改革」である
- 鉄則2 現場が抵抗する「本当の理由」を理解しよう
- みんなが家に早く帰りたいわけではない
- 長時間労働になりやすい構造
- 接待店のトイレまで下見する「電通スタイル」
- 長時間労働前提の業界を変えていく
- 「現場=現状維持を望む」という誤解
- 「残業代目当て」問題と向き合う
- 「時短=残業代削減」のイメージを払拭する
- 「DXによる業務効率化」が嫌がられた理由
- 鉄則3 現場の主は社長が自分で口説こう
- 日本の経営者は「工場の時短」は全力でやってきた
- 現場の「主」は誰か
- 「時短できない理由」を主張する人
- まずは「主」への根回しから
- 「説明会」の開催
- 改革に「協力的すぎる人」は要注意
- 社員が恐れる「職場での村八分」
- 時短のプロセスを時短してはいけない
- 鉄則4 現場の「すべて」を肯定しよう
- 「ムダな業務のリストアップ指示」は最悪手!
- 「何の業務に、何時間使っているか?」をリストアップ
- 業務はどれくらい分解すべきか
- 各業務工程を「棚卸し」する
- 「いまやっていることは正しい。ただ時間を短縮するだけ」
- 「非コア業務」をRPA(業務自動化)にシフト
- 「職人仕事」を貫いてきた現場との軋轢
- 鉄則5 トラブル処理は「すべて」引き受けよう
- クライアントが激怒! さあどうする?
- ライバル会社からの攻勢
- 日常業務でもトラブルにトップが対応
- 現場にトップの「覚悟」を見せる
- 現場から不満が出たら好機
- ミスを減らすには「ミスは責められる」と考えさせないこと
- 会社が現場に押し付けてたムダの正体
- 鉄則6 改革の「本質的価値」は語らない
- 哲学論争で時短はできない
- 「小さな成功」の例:タッチタイピング
- 小さな成功が生み出す「熱」
- 上からの押しつけは傲慢、「謙虚さ」が最大の美徳
- 日本人に「トランスフォーメーション」は向かない
- 「漸進的な拡張」のプロセスによって人は共感する
- 鉄則7 「結果」で納得を得よう
- RPA導入のインパクトはかつてのFAXに匹敵した
- 「手書き」のお客様カードがもたらしていた問題
- 効果を感じれば、現場激変する
- KPIを適切に設定して成功体験を重ねる
- 日本の管理職は目標設定が下手
- 「一律カット」の目標は立てない
- 鉄則8 「内部統制」という言い訳を封じよう
- コンプライアンス編重の15年間
- 「持ち帰って検討します」が決まり文句に
- 「内部統制の演技」で増大したブルシット・ジョブ
- 性善説でも性悪説でもなく「性弱説」
- 永久凍土になりつつある内部統制
- 「重要性」という概念が重要
- 内部統制担当者もじつは効率化を求めている
- 「噴水型稟議システム」
- 「3営業日オプトアウト(自動承認)」のすすめ
- 「噴水型」はプロを見分けるフィルターになる
- おわりに 「時短」の向こう側にある世界
紹介文
電通という日本を代表する大手広告代理店での実体験に基づき、労働時間を削減しながらも成果を向上させる方法を提案しています。本書では、著者が直面した過酷な労働環境を背景に、具体的かつ実行可能な「8つの鉄則」を紹介しています。
電通のような競争が激しい業界で、効率的な時間管理と生産性の向上を実現するための方法論が具体的に述べられています。社員が残業する本当の理由に着目し、業務の効率化を図る意識や方法がストレートに表現されています。小柳は実際にこれらの方法を電通内で実施し、大きな成果を挙げました。特に「残業60%減」は多くのビジネスパーソンにとって魅力的な数字であり、その実現方法は多くの企業や組織に示唆を与えてくれるでしょう。
この本は、現代の労働問題に直面している多くの企業にとって必読の指南書です。効率的で健康的な職場環境を目指す上での具体的な手法を提供し、それが実際に大手企業で成功していることから、その実践性と有効性が証明されています。読むことで、個人はもちろんのこと、組織全体の生産性向上に繋がる知見が得られるでしょう。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
日本の経営者は「工場の時短」は全力でやってきた
戦後から高度成長期を経てバブル期に至るまで、日本の製造業は世界を席巻してきました。その主な要因は『工場』での徹底的な効率化にあります。
工場での時短では、人間や機械の動作1つひとつまでを工程の最小単位として検討します。人が立ち上がる回数や、モノをもって移動する距離を減らす、機械の動作を高速化する、具体的な改善ターゲットです。
工場の時短は日本のお家芸であり、日本の経営者たちはこれを徹底的に鍛え上げてきました。
オフィスの効率化については、日本の経営陣が十分に取り組んでこなかったと言えるでしょう。監視して計測してきた工場とは逆に、具体的な仕事の進め方を、すべてオフィスの現場に「丸投げ」してきたのです。
そのしわ寄せが現場にいき、現場の部署で業務プロセスを構築して、ルールをつくり、ミスを減らす努力をしなければなりません。
その結果、現場それぞれに取り仕切る「主」が存在するようになり、主の同意なしでは、いかなる改革も成功しませんでした。
日常業務でもトラブルにトップが対応
インターネット広告会社での事例です。
メディアに広告を出稿する業務はパソコン上で行われますが、とても複雑かつ大量です。この業務工程の高速化に挑戦していました。すると、速さのトレードオフとひきかえに、発注操作の人的ミスが増加してしまいました。
あらかじめ織り込まれていたことでもあったため、優秀なメンバーの学習効果で人的ミスは次第に激減していきました。
過渡期には、ミスをした担当者や周囲の人間に大きな負荷がかかります。そこで経営陣は強いメッセージを社内に発しました。
- 今、ミスが増えているのは、経営陣による時短改革のせいである。責任は経営陣にある。
- ミスをしたらチームをあげて対応してほしい。取引先にご迷惑をかけたなら、幹部がすぐにお詫びをします。
- ミスをしたら30分以内に経営陣まで報告してほしい。
- 早くミスを報告してくれた場合、会社は担当者を責めることはありません
- 隠し通そうとした場合は、会社の全員をリスクにさらしたとして、厳しく処分する。
小さなミスから被害が拡大してしまわないように、副社長の私自身がミスが元通り減るまでの期間、「事故処理責任者」になりました。現場管理者から中間管理者と全体管理者に同時に報告が入ります。
ミスが収束するまでは、全体管理者となる経営者の負担はかなりのものです。けれど、このような徹底した対応がなければ、社内外の信頼を得ることは難しいでしょう。
ムダの正体
会社では、不思議なことに子供の頃と違い、なぜか「100点が当たり前」とされています。
そのため多くの会社で、起こっては困る事態は決して起こらないようにされます。ミスやトラブルに直面した際には、それを「起こらなかったこと」にするのです。
常に100点満点の答案を書いているかのように振る舞う文化が根強く形成されています。新入社員から役員まで、全社員がミスを隠蔽し、自分の弱さを隠すために多くの時間と労力を費やしています。これが、多くの日本企業のオフィスでの長時間労働の実情です。
そのため、トップは時短を要請する前に、まず罪を認めて謝る必要があります。そして、時短を推進するためには、この100点文化を変革することが求められます。
管理職に目標設定をしてもらう
マネージャークラスには、部下に対する指示を小さなステップに分ける新しい習慣を身に付けてもらいましょう。
日本のオフィスワーカーの多くは、タスクを細分化する経験が不足しています。自身が「うまくやれ」と漠然と指示されてきたため、部下に対しても同様のアプローチを取ってしまいがちです。その結果、「指示待ち人間」と批判されることも少なくありません。
しかし、組織の長期的なメンバーとして必要なスキルを次世代に求めるのは適切ではありません。これからの世代の人材が自社を職場として選ぶためには、明確な指示を出すことが重要です。
具体的なステップに分けて、それを一つずつ達成するサポートを続けなければ、彼らは早々に会社を見切り、他の成長できる環境へと移るでしょう。従業員の成長を支援できない会社は、人材を留めることが難しくなります。