島はどうしてできるのか/著者:前野深

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書籍情報

タイトル

ブルーバックス B-2267

島はどうしてできるのか

火山噴火と、島の誕生から消滅まで

発刊 2024年7月20日

ISBN 978-4-06-536564-9

総ページ数 254p

著者

前野深

東京大学地震研究所准教授。理学博士。
専門は火山学。
火山にまつわる研究を進めている。

出版

KODANSHA

もくじ

  • まえがき
  • 第1部 島の誕生から成長へ ~「若い島」では何が起こっているのか
    • 第1章 目のあたりにした火山島の誕生 _西之島ができていくプロセスを目撃できる幸運
      • 火山島として生き残る島、消滅する島
      • なぜ西之島が注目されているのか?
      • 1702年にはすでに島があった
      • みるみる成長した新島
      • 高温の世界と地下で起きていること
    • 第2章 成長し続ける火山島 _西之島の噴出したての岩石から見えてきたもの
      • 西之島が生き残った理由
      • いよいよ上陸!
      • 岩石に残されていた、噴火を読み解くためのヒント
      • コラム1 赤いマグマの飛沫が噴き上がる _ストロンボリ式噴火とハワイ式噴火
    • 第3章 海底火山の爆発的噴火 _派手な噴火と短命な島だった福徳岡ノ場
      • 呑気な火山と短気な火山
      • 軽石を撒き散らし、派手な噴火を起こす理由
      • 寺田寅彦も観察していた _駝鳥の羽毛のよう?
      • 推進が生み出す噴火の多様性とリスク
    • 第4章 薩摩鬼界ヶ島沖に出現した新島 _人が済む場所近くの海域噴火に目を向ける
      • 暮らしのすぐ傍らで起きた噴火 _平安末期より噴煙を上げ続ける火山
      • 記録に残る漂流軽石やマグマ水蒸気爆発
      • 昭和硫黄島、現在の姿 _軽石生産工場⁉
      • 噴火が語る現代へのメッセージ
    • 第5章 何が火山噴火の様式を決めているのか
      • ガスをうまく逃がせるかどうか 粘性が低いからといって安心できない
      • 無視できない外来水の影響
      • 浅い水域で最も爆発的になる
      • スルツェイ式噴火
      • 航空産業界も気が気でない
    • 第6章 噴火による破壊と創造 _地球規模の影響を及ぼすクラカタウの大噴火
      • 繰り返される巨大噴火
      • 地球観測黎明期の日本でも記録されていた
      • 新たなクラカタウの誕生
      • 変わり果てた5年後の姿 _なぜ崩壊したのか
    • 第7章 古代文明滅亡の謎を秘めたエーゲ海の火山島 _サントーニ
      • エーゲ海に浮かぶ、歴史に刻まれた火山島の誕生と成長
      • 文明を崩壊させた? 超巨大噴火の痕跡
      • 地質学の教科書のよう _サントリーニへ
      • カルデラ壁を境にして白から黒に変わる世界 _ネア・カメニ
      • コラム2 灰色の雲が渦巻く _プリニー式噴火とブルカノ式噴火
    • 第8章 巨大化した火山島「西之島」 _マグマの変化で噴火様式が激変
      • 息を吹き返した西之島
      • 地下で起きた大きな変化
      • さまざまな火山島のでき方とそこに生じる脅威
    • 第9章 溶岩流・噴煙・火砕流 _火山の成長を支える、多様な表面現象
      • 島の形成に欠かせない「溶岩流」
      • 爆発的噴火が生み出す「噴煙」と「降灰」
      • 地表を流れ襲ってくる「火砕流」「火砕サージ」
      • 流れの性質を決める粒子濃度と温度
      • 火砕密度流の破壊力
      • どのように発生するのか
  • 第2部 島の成熟から崩壊へ ~「変化し続ける島」を探る
    • 第10章 街を丸ごと飲み込んでしまう火山灰 _活動を続けるモンセラート
      • 変わる続ける火山島
      • カリブ海の硫黄の名を持つ島
      • 溶岩ドームの成長と火砕流 _スフリエールヒルズの目覚め
      • 堆積物に埋もれた街
    • 第11章 江戸時代の山体崩壊と大津波の痕跡 _日本海に浮かぶ絶海の孤島「渡島大島」
      • 火山はいつか崩れる
      • シミュレーションでわかった、18世紀の大津波とその正体
      • 日本最大の無人島に残る噴火の痕跡
      • 江戸時代には繰り返し発生!
      • 噴火中に起きた山体崩壊
      • コラム3 堆積物から噴火を復元する
      • 「破砕」と「分散」が噴火様式を決める
      • 生き続けるウォーカーの提案
    • 第12章 噴火で再び無人島に _戦争から立ち直った小島、アナタハンの災禍
      • 噴火により無人島に帰した島
      • 航空路を遮断した大噴火
      • カルデラが広がる、火山灰に覆われた島と活発な最新火口
      • かつての居住者たち
      • 噴火終息と新しい島のはじまり
    • 第13章 海域火山の密集地帯で何が起きているのか _北マリアナ諸島
      • 繰り返される海域での噴火
      • マリアナ最北端の島を目指し出発
      • パイナップルの島、パガンへの上陸
      • 成長中の島、「鳥の岩」ウラカスへ
      • 海底火山の素
    • 第14章 岩屑なだれ・津波・カルデラ崩壊 _火山噴火が生み出す破壊的な表面現象
      • 山体崩壊と岩屑なだれ _最も多くの犠牲者を出してきた現象
      • 山体崩壊の要因
      • 多くの事例がある日本列島
      • 山体崩壊にどう備えるか
      • 津波 _不意をつき、広域的な影響を及ぼす現象
      • 火山性流れの海への流入による津波
      • ストロンボリ島で起きた津波
      • 海底での崩壊に伴う津波
      • 海底でのカルデラ陥没や断層運動に伴う津波
      • マグマ水蒸気爆発に伴う津波
      • 地球を周回する大気波動に起因する津波
      • 地球規模の影響を及ぼす現象 _超巨大噴火
      • 広がる灼熱の世界 _巨大火砕流、広域火山灰、火山ガスとその影響
      • 巨大だったフンガ火山噴火は、全球環境変動を引き起こすのか
  • あとがき

書籍紹介

 世界でも稀な新しい火山島の誕生をテーマにしており、小笠原諸島の西之島の例を中心に、島がどのようにして形成されるのか、そのダイナミックなプロセスを解説しています。

火山活動の解説

 火山の噴火から新たな陸地が生まれる過程を、科学的かつ平易な言葉で説明しています。読者は、地球の内部で起こっている壮大な現象を理解することができます。

現地調査の報告

 著者自身が参加した西之島の上陸調査の経験を元に、火山島の成長や変化、そこで見られる生態系の初期形成など、現場の息遣いが感じられる内容が盛り込まれています。

地球のダイナミズム

 島の誕生は地球の活動を直接体験できる場として描かれ、地球が生きている証拠とも言える火山活動の重要性とその美しさを教えてくれます。

多角的な視点

 地質学だけでなく、環境、生物学的な視点からも島の形成を見つめ、読者に新たな島の誕生が何を意味するのかを深く考えさせます。

未来への示唆

 現在進行形で成長を続ける西之島の未来や、他の火山島の事例を通じて、地球の未来を考える材料を提供します。

自然に興味のある方へ

 「島はどうしてできるのか」は、科学書でありながらも、自然の驚異と人間の探求心を刺激する冒険の書でもあります。地学に興味がある方はもちろん、地球の神秘に触れてみたいすべての人にオススメです。

 この本を通じて、読者はただ知識を得るだけでなく、地球という惑星の息吹を感じ、自然の力強さと美しさを再認識することでしょう。火山島の生成という特定のテーマから、地球全体の理解に一歩近づくことができる一冊です。

試し読み

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

派手な噴火を起こす理由

 福徳岡ノ場では、粗面岩(トラカイト)と呼ばれるアルカリ元素に富む、日本国内ではやや珍しい種類の岩石が産出することが知られています。2021年の噴火で生成された軽石も、同様の性質を持つマグマによるものです。このような岩石の固有の特徴は、海流に乗って運ばれてきた漂流軽石の起源を特定し、どの火山や地域で生まれたかを同定する際に役立ちます。

 福徳岡ノ場の火口が浅海に位置しているため、過去にはマグマ噴出量が少ない噴火でも、火砕物が激しく飛散する現象が発生しています。この現象が激しくなる原因は、海水がマグマと接触・混合した際に瞬時に気化し、膨張するためです。このような現象は、海や湖など外来水が豊富な環境で起こりやすいです。

火山はいつか崩れる

 日本列島には、富士山のように美しい円錐形の成層火山が多く存在します。これらの火山は、何度も噴火を繰り返し、山体を成長させてきました。

 しかし、砂山を高く積み上げていくとある時突然雪崩れるように、火山もまた時折、山体崩壊を起こし、その姿を大きく変えることがあります。

 山体崩壊が発生する頻度は噴火に比べて低いものの、もし起これば甚大な災害を引き起こします。特に、日本国内の火山災害においては、火山島や海に隣接した火山の山体崩壊と、それに伴う津波の被害が深刻です。

 17世紀から18世紀の江戸時代には、山体崩壊とそれによる津波の災害が複数回発生しており、そのすさまじさは歴史に記録されています。

岩屑なだれ

 富士山のような成層火山は、その裾野が広大であるため、一見すると安定しているように見えます。しかし、山体の構成物は火砕物や溶岩で、これらが重層的に積み重なっているため、全体として不均質かつ多孔質な構造をしています。

 山体内部では、帯水層が発達したり、マグマや流体が貫入することで熱水変質が進み、山体全体が弱化しやすい傾向にあります。火山体は常に変質作用を受け、徐々に脆弱化していくという特性を持っています。

 若い火山体でも、条件が整えば崩壊に至ることがあります。崩壊の規模は小さいものでは1立方メートル以下、大規模なものでは数百立方メートルに及びます。

 山体崩壊が発生すると、崩壊物は岩屑なだれとして火山体の周囲に広がり、堆積します。この過程で、流路にあったものはほとんどなぎ倒され、堆積物の下に埋もれてしまいます。

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