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目次
書籍情報
地図とデータで見るリスクと危機の世界ハンドブック
発刊 2023年8月5日
ISBN 978-4-562-07281-1
総ページ数 177p
リシャール・ラガニエ
ソルボンヌ・パリ・シテ大学地理学教授でPRODIG研究所に所属している(UMR CNRS 8586)。グラン・エスト大学区区長、事務総長をつとめ、これまでにフランス全国地理委員会会長、フランス自然・科学技術防災協会(AFPCNT)科学顧問、ロワール・プラン科学顧問を歴任。
イヴェット・ヴェレ
パリ=ナンテール大学地理学名誉教授。地理学教授資格、文学博士号を取得している。2000年代にフランス全国地理委員会の会長職につき、AFPCNT科学審議会副会長を歴任。研究テーマは古環境と現在の環境。
マリー=ロール・ガシュ
ニース大学区の歴史・地理審議官、大学教育資格審査委員。地理学を専攻し、社会動態と農村空間の再編成について研究する。
ジャン=マルク・ノアイユ
ニース大学区の歴史・地理審議官で、持続可能な開発ミッションのリーダーもつとめる。地理学と地形学を学び、地中海地方の気候温暖化の影響について研究している。
原書房
- 序文
- はじめに
- 世界のリスクと危機
- 災害、リスク、危機、カタストロフィ
- リスクと危機の類型論
- 脆弱性、適応、レジリエンス
- リスクと危機、地球規模から地域まで
- 自然由来の災害とリスク
- テクノロジーのリスクと危機
- 原子力の大事故の影響
- パンデミック
- 危機のコストと影響
- メガ都市とメガ危機
- 危機と都市の持続性、過去の教訓
- 火災、森林の消失と危機
- 緊迫した状況にある海と沿岸地帯
- 北極のリスク
- 身を守る、リスクと危機への対応
- 身を遠ざける、リスクと危機から逃げる
- リスクと危機に適応する
- テクノロジーのリスクと危機の移転
- リスク管理と危機管理のアクターたち
- 危機後と復興
- フランスのリスクと危機
- 河川のリスク
- ガロンヌ川の事例
- 水のリスク
- 山岳地の導水
- 沿岸部
- フランス海外領における自然関連のリスク
- 気候変動のリスクのある森林火災
- 猛暑と乾燥
- テクノロジーのリスク
- 自然とテクノロジーのリスク管理
- 自然とテクノロジーの危機管理
- 原子力のリスクと危機の管理
- メガ都市のリスク
- パリ
- リスクと都市、大気汚染と健康
- 水に関係するリスクと危機への対応
- 海外領のリスクと危機への対応
- 情報、教育、リスクと危機の記憶
- そして将来は?
- 河川のリスク
- おわりに
- 付録
- 略語一覧
- 参考文献
- ウェブサイト
はじめに
より教育を受けている人々は、リスクや危機にもより適切に対応できます。犠牲者の数が豊かな国では減っていますが、南の国々ではそれほど減っていません。
気候変動、大都市化、沿岸部への人口集中、リスクを低減するために、社会の脆弱性とレジリエンスについて考える必要があります。
危機にひんした人々が暮らしていけるように、システムの主要な機能を早く回復させるために、地域との付き合い方や生活様式を見直さなくてはならないこともあるでしょう。
リスクと危機について考えることは、社会に必要不可欠なのです。
テクノロジーの危機
1960年代以降、石油・ガス関連の大事故が40件ほど起きています。製油所、石油貯蔵施設、ガスパイプラインの爆発、ジャワ島のバロンガン製油所の火災(2021)、重油流出(アモコ・カディス号、1978)、タンカーや列車の爆発炎上(メガンティック湖、カナダ、2013)、会場の石油採掘施設の爆発・原油流出(ディープウォーター、ホライズン、メキシコ湾、2000)などです。
化学工場でも大事故がおきており、工場周辺の住民が避難しなければならなくなるような事態になりました。1984年のインドのボパールで、アメリカの企業ユニオンカーバイトの農薬工場から40トンもの有毒ガスがもれ、約5000人が死亡。後遺症に悩む人はその100倍もいると言われています。
1952年から2015年までに起きた20件の原子力事故のうち、深刻なレベルにいたったのは」3件です。アメリカのスリーマイル島、チェルノブイリ、日本の福島です。
また、インフラにかかわる事故もあります。例えば、インドの2012年に6億7000万人が停電にみまわれた文明危機です。
南の国々に進出した北の国々の企業によって危険な現象がひきおこされています。テクノロジーの事故は大きな破壊をもたらします。広い地域に足を踏み入れることができなくなることもあるのです。新興リスクにはグローバルな面もあり、予測困難な影響をもたらします。
沿岸部の魅力とリスク
世界でもっとも大きな都市は沿岸にあります。中国、インド、アメリカ、日本などのメガ都市がそうです。
沿岸部には観光施設、産業・港湾地区があります。それらはグローバル化した経済や貿易の基盤となるもので、いずれもデルタや河口の低地です。季節によって海岸が後退したり拡大したりします。
メコン川のデルタでは局地的に、自然のプロセスによって地盤沈下が起きています。そこに、地下水のくみ上げや、上流に多数のダムがつくられて土砂流入が減ったことから、付近の海面上昇がくわわり住民をおびやかしているのです。ナイル川のデルタは、海面が50センチ上昇すると広く浸水します。
モルディヴやキリバス、ツヴァルといった観光スポットの島国があります。これらの国は暴風雨になるとたびたび浸水し、地下水に海水がまじるのです。そのため、ふるくから、一時的なしは永続的な移民が行われてきました。気候変動の影響により、こうした移民はますます増える可能性があります。
猛暑と乾燥
ヒートアイランド現象が重なり、フランスは水不足になりました。地域によっては激しい雷雨にみまわれ、雹や洪水で大きな被害を受けます。
気象学的乾燥とは少雨の状態が長引くことをいいます。セール=ポンソン湖やロワール川で、地下水位に影響がおよぶ水文学的乾燥をひき起こすのです。このような状況は地下水にとって致命的であり、フランス全土の地下水位が低下しました。農業に影響を与え、場合によっては樹木や植物を枯らしてしまうことがあります。飲料水が足りなくなった自治体もでましたし、発電に使う水の減らして、河川の使った交通インフラのダイヤも乱れました。2022年夏に森林火災が多発したのも、空気の乾燥が原因です。
パリの事情
人間の健康を害する大気物質は、一酸化炭素、オゾン、二酸化窒素、二酸化硫黄、有機塩素系化合物、PM2.5 、いくつかの重金属とWHOによって定義されています。
工場や家庭、運輸によって排出される粒子物質が許容基準を超えているとして、フランスはEUから提訴されています。
主に汚染が酷いのはパリを中心とした広域行政地域圏です。
2004年には、PM10とPM2.5の暴露にかんするWHOの基準を守れなかったために、1年に約1400人が早期死亡し、30歳の平均余命が6か月低下しました。1年に100人ほど早期死亡者が出ており、500人近くが入院していて、18歳未満の新規のぜんそく患者が16%が発作を起こしたと、いわれてしまっています。
おわりに
自然、テクノロジー、宗教、危機のタネが社会に内包されています。危機のいくつかはスピードと威力をもち、意表をつかれます。人々、政府、経済を不安定にする可能性があるのです。
また、スピードの遅い危機は、多くの人々に認識されません。
急激なものであろうと、ゆっくりしたものであろうと、予備の設備を用意したり、適切な建築基準を定めたりすることで、将来の危機の影響を低減することが可能です。その実現は、関係する地域の特性と、周辺地域が適切な行動をとるかどうかにかかっています。
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