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目次
書籍情報
金融詐欺の世界史

ダン・デイヴィス
元イングランド銀行の規制エコノミスト。数々の投資銀行のアナリストを勤め、あらゆる形態の金融詐欺への対策に取り組んできた。
原書房
- イントロダクション メイフェアのスキャンダル
- ポヤイス国領主
- カナダのパラドックス
- LIBORスキャンダル
- 信頼とその濫用
- 四種類のホワイトカラー犯罪
- 陽動作戦
- 第1章 基本原則
- 支払い条件と企業間信用
- 与信管理
- 破産
- 担保とザ・ゴールデンブーズ
- 分割払い詐欺と保険金詐欺
- 罰せられない犯罪
- 第2章 ロングファーム詐欺
- 出口詐欺
- サラダオイル王
- 他人の金
- ショートファームと1980年代のメディケア
- 罪を免れる
- 第3章 雪だるま効果
- ポンジスキーム
- ピラミッドスキーム
- 膨らみ過ぎて破綻する
- ハトの王
- ヘッジファンド詐欺
- ベイユー・キャピタル
- 信頼の輪
- ボストン・レディーズ・デポジット・カンパニー
- 第4章 偽造
- ポルトガル銀行券事件
- 鉱山詐欺とブリエックス事件
- 証明と医療詐欺
- 偽造医薬品
- バイオックス
- 第5章 粉飾決算
- 会計詐欺の手口
- 完全な架空売上
- 経済的に無意味な取引による架空売上
- 商品販売前の収益認識
- 費用の遅延認識
- 完全な架空資産
- 未報告債務
- 期待外れの会計監査人やアナリスト
- アナリスト
- 第6章 コントロール詐欺
- ニック・リーソン
- 貯蓄貸付組合危機
- 分散型コントロール詐欺
- 返済保証保険適切販売事件
- 第7章 詐欺の経済学
- ささやかな文化史
- 多様性とコントロール
- 詐欺とリスク
- リスクと品質
- 第8章 未解決事件
- 古代の詐欺と相続
- ヴィクトリア朝の有名詐欺師
- ロロ対スレッジドライバー
- 第9章 市場犯罪
- カルテル
- 有毒廃棄物不法投棄
- ピグリー・ウィグリー株の買い占め
- 第10章 政府に対する詐欺
- 付加価値税未納詐欺
- マネーロンダリング
- 第11章 結論
- 不正のトライアングル
- 時期と規模
- 実際はもっと複雑である
書籍紹介
この本は、金融の世界で繰り広げられてきた詐欺の手口や歴史的事件を、専門家の視点から紐解いた一冊です。著者のダン・デイヴィスは、元イングランド銀行の規制エコノミストであり、投資銀行のアナリストとしての豊富な経験を持つ人物です。彼はLIBORスキャンダルや外国為替スキャンダル、アングロ・アイリッシュ銀行の破綻、スイス銀行のナチス金塊事件など、数々の金融犯罪対策に携わってきた実績があります。
詐欺の数々
本書では、ポンジ・スキームやねずみ講といった古典的な詐欺の手口から始まり、世間を震撼させた巨額詐欺事件、投資スキャンダル、架空取引、ホワイトカラー犯罪、金利の不正操作まで、幅広いテーマが取り上げられています。金融のスペシャリストである著者が、これらの事件の背景や仕組みを丁寧に説明してくれるので、専門知識がなくても読み進めやすいのが特徴です。詐欺師たちがどのようにして人々を騙し、経済に影響を与えてきたのか、その歴史が生き生きと描かれています。
色んな視点から詐欺を深掘り
詐欺の経済学や市場犯罪、政府を欺く手法など、理論的な視点から分析が加えられているので、読み終えた後には金融詐欺に対する理解がぐっと深まります。また、未解決事件についても触れられており、現代の金融システムに潜むリスクについても考えさせられる内容となっています。メイフェアのスキャンダルに始まり、ロングファーム詐欺や粉飾決算といった具体的な事例を通じて、詐欺の進化の過程が追えるのも興味深いです。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
現代版ポンジスキーム

現代版ポンジスキームの中で特に興味深い例に、農業や家畜への投資があります。鳥類の販売は、たとえ投棄目的であってもの規制対象外で繁殖率も高く2桁の高い収益率が期待できると、海外の島々を夢見た投資家の判断能力を鈍らせられます。
たとえば、レース鳩の繁殖で生計を立てている人がいるのは確かではありますが、この鳩の育成で億万長者になった人はいません。レース鳩の世界市場が大きくないため、市場が成長する余地がないのです。ごく少額の投資で、収益が得られるもの事実です。
10万ドルで繁殖プログラムを売り、ひとつがいの繁殖用鳩を165ドルで売ったあと、生まれた鳩をその値段で買い取りますといった詐欺です。数年間165ドルの取引があったたと、その約束を反故にされるというポンジスキームとなっています。
詐欺による損失

アメリカン・エキスプレスがベイヨンにあるティノ・デ・アンジェリスの貯蔵タンクの調査に3倍の費用を払っていても、偽造タンクに細工が仕掛けられただけでしょう。システムの脆弱性を突いて、大物の詐欺師たちは逸話を残しています。
詐欺による損失の統計学的記録について私たちが知っていることは、損失の大部分が大規模であり、滅多にない事件によって占められていることです。大規模のコントロールシステムの弱点を発見して悪用するものであり、連続して起こる傾向にあります。
重要な経済システムが今の形になっているのは、悪用する詐欺に対処してきたからであり、安心できる資本主義を形成してきた歴史でもあるでしょう。商業の歴史の裏に、商業犯罪の歴史もあるのです。