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目次
書籍情報
家系と政界情勢の関係がまるわかり!
暮らしと物価の地政学
小山堅
日本エネルギー経済研究所専務理事・主席研究員。東京大学公共政策大学院客員教授、東京工業大学科学技術創生研究員特任教授を兼任。
古橋元
放送大学教養学部教授。農学博士。農林水産政策研究所の食料需給分析チーム長。
山田周平
桜美林大学大学院特任教授。専門は中華圏の産業動向や経済安全保障。
ナツメ社
- はじめに
- 第1章 世界経済のしくみ
- 自由貿易と世界経済の成長
- WTOの役割と関税の種類
- 二国間の経済連携協定
- 地域連合と関税同盟
- EUによる欧州の統合
- 基軸通貨となる米ドルの信用
- 経済制裁と金融制裁
- 第2章 国際貿易の基礎知識
- 国際貿易が支える安全保障
- 4大安全保障のバランス
- サプライチェーンリスク 28
- 資源メジャーと穀物メジャー
- 海上輸送のチョークポイント
- 海上輸送の地政学リスク
- 先物取引と指標価格
- 輸入品の価格が決まるしくみ
- 主要国の貿易収支
- 第3章 現代世界の地政学
- ランドパワーとシーパワー
- 拡大を続けるNATO
- 中国の一帯一路と海洋進出
- アメリカ軍による地域安全保障
- アメリカの地政学
- 中国の地政学
- 日本の地政学
- インドの地政学
- ロシアの地政学
- EU(欧州連合)の地政学
- イギリスの地政学
- 第4章 鉱物資源の地政学
- エネルギー資源 1
- 石油 シェール革命でアメリカが中東やロシアに並ぶ産油国に
- 石油の基礎知識 燃料からプラスチックまで万能な石油製品
- 世界の石油情勢 ロシアとOPECプラスが絡んだ原油の高騰
- 日本の石油事情 サウジアラビアとUAEから約80%を輸入
- 石油の地政学 ロシアの原油がインドを経由してEUへ
- エネルギー資源 2
- 天然ガス アメリカがロシアに並ぶ天然ガス大国に変貌
- 天然ガスの基礎知識 輸送方法が異なる天然ガスとLNG
- 世界の天然ガス情勢 天然ガスをめぐるロシアとウクライナの確執
- 日本の天然ガス事情 日本の発電構成は天然ガスの火力発電がトップ
- 天然ガスの地政学 EUが天然ガスの不足分をLNGで穴埋め
- エネルギー資源 3
- 石炭 アジアの3カ国で総生産量の約70%を占める
- 石炭の基礎知識 発電燃料の一般炭と鉄鋼業で使われる原料炭
- 世界の石炭情勢 電源別発電量は石炭火力発電が世界でトップ
- 日本の石炭事情 エネルギー安全保障と気候変動対策の板挟み
- 石炭の地政学 世界の気候変動対策と化石燃料の位置づけ
- エネルギー資源 4
- ウラン 脱炭素社会に向けて重要視される原子力発電の燃料
- ウランの基礎知識 原子力発電の有用性と課題
- 世界のウラン&原子力発電情勢 温室効果ガス削減に向けて原子力発電が拡大
- 日本のウラン&原子力発電事情 原子力発電所の稼働率が電気料金に影響
- ウラン&原子力発電の地政学 欧米も依存するロシアの低濃縮ウラン
- 鉱物資源 1
- 鉄鉱石 輸出される鉄鉱石の70%近くを買い占めている中国
- 鉄鉱石の基礎知識 鉄鉱石が原料の高炉と鉄スクラップを使う電炉
- 世界の鉄鉱石&鉄鋼情勢 圧倒的生産量の中国に対し日本が高級鋼で対抗
- 日本の鉄鉱石&鉄鋼事情 脱炭素に向けて電炉生産のシェア拡大を推進
- 鉄鉱石&鉄鋼の地政学 鉄鉱石と石炭の高騰で日本の建設コストも上昇
- 鉱物資源 2
- リチウム EVや携帯電話のバッテリーに不可欠なレアメタル
- リチウムの基礎知識 重要物資であるリチウムイオン電池の主原料
- 世界のリチウム情勢 リチウム精製で中国が世界シェア60%を占める
- 日本のリチウム事情 中国に依存しているリチウムの調達
- リチウムの地政学 米中が狙う南米のリチウムトライアングル
- 鉱物資源 3
- コバルト コンゴ民主共和国で全世界の70%以上が採掘される重要鉱物
- 世界のコバルト情勢 コバルト精錬で中国が世界シェア75%を占める
- 日本のコバルト事情 総輸入量の約50%をフィンランドから調達
- コバルトの地政学 紛争鉱物が蔓延するコンゴ民主に中国が進出
- 太陽光発電の生産シェア 太陽電池パネルで約80%のシェアを誇る中国
- 鉱物資源 4
- レアアース 中国の生産量が全世界の70%近くを占める希少金属
- レアアースの基礎知識 多方面で重要物資となっているネオジム磁石
- 日本のレアアース事情 レアアースの地政学
- レアアースの調達で中国に依存する日本 重要鉱物の調達で脱中国を目指すIPEF
- 風力発電の生産シェア 風力発電設備でも中国が約50%のシェア
- 鉱物資源 5
- 金(ゴールド) 世界各国の中央銀行が金融資産として保有する黄金の金属
- 世界の金(ゴールド)情勢 不況でも価値が落ちにくい世界共通の安全資産
- 金(ゴールド)の地政学 ロシアが獲得を目指すアフリカの金鉱山権益
- エネルギー資源 1
- 第5章 食料資源の地政学
- 食料資源 1
- 小麦 世界で最も多くの国の主食となっている人類の食料源
- 日本の小麦事情 政府が小麦を輸入して販売価格を調整
- 小麦の地政学 ロシアによる黒海封鎖で小麦の価格が高騰
- 食料資源 2
- コメ アジア各国の主食として食料安全保障を支えている穀物
- 日本のコメ事情 消費量、生産量が減り続けている日本の主食
- コメの地政学 複合的な要因で世界的にコメの価格が上昇
- 食料資源 3
- トウモロコシ 家畜飼料やバイオ燃料の原料としての需要が拡大
- 世界のトウモロコシ情勢 肉類の消費量拡大にともなって生産量が激増
- 日本のトウモロコシ事情 飼料用のトウモロコシは自給率がほぼ0%
- トウモロコシの地政学 中国で需要が拡大しトウモロコシが高騰
- 食料資源 4
- 大豆 ブラジルとアメリカで全世界の約70%を生産
- 大豆の基礎知識 大豆油を搾った残り粕が飼料になる
- 日本の大豆事情 豆腐や納豆の原料も80%は外国産大豆
- 大豆の地政学 大豆がほしい中国と大豆を売りたいアメリカ
- 食料資源 5
- 牛肉 日本は世界3位の輸入量で消費量の約65%が外国産
- 世界の牛肉&食肉情勢 経済成長と肉類消費量の密接な関係
- 日本の牛肉事情 国産牛肉よりも外国産牛肉の消費量が上回る
- 牛肉の地政学 穀物大国から牛肉を輸入する日本と中国
- 食料資源 6
- 豚肉 中国は生産量・輸入量とも圧倒的シェアを誇る豚肉大国
- 日本の豚肉事情 飼料を含めた豚肉の自給率はわずか6%
- 豚肉の地政学 国境を越えて伝染する家畜伝染病のリスク
- 食料資源 7
- 鶏肉 日本は生産量と輸入量で世界のトップ10入り
- 日本の鶏肉事情 国産の鶏肉消費量が外国産を上回る
- 日本の鶏卵事情 鶏卵が安価で安定供給されているしくみ
- 食料資源 8
- 魚介類 中国が漁獲量でも養殖業生産量でも圧倒的なシェア
- 日本の魚介類&漁業事情 世界でも異例となる大幅な漁獲量の減少
- 魚介類&漁業の地政学 各国の漁場エリアを定める排他的経済水域
- 食料資源 1
- 第6章 産業資源の地政学
- 産業資源 1
- 半導体 多分野の高度化、効率化を支える産業の最重要物資
- 世界の半導体情勢 ロジック半導体の微細化で先頭を走る台湾
- 日本の半導体事情 政府が半導体の安定調達に向けて4兆円を支出
- 半導体の地政学 アメリカが日韓台との連携で中国への規制を強化
- 産業資源 2
- 自動車 脱炭素社会に向けて脱ガソリン車の動きが加速
- 世界の自動車情勢 CO2排出量の削減に向けて自動車電動化へ
- 自動車の地政学 アメリカが中国のEVを規制し日韓と連携
- 産業資源 3
- 綿花&衣料品 世界中の綿花がアジアの衣料品生産国に集まる
- 世界の綿花&衣料品情勢 衣料品の生地が綿から化学繊維に移行
- 日本の衣料品事情 衣服の供給量増加に対して販売価格が低下
- 世界の化学繊維事情 化学合成繊維のマイクロプラスチック問題
- 産業資源 4
- 軍事兵器&防衛費 年間130兆円以上の軍事費を投入しているアメリカ
- 世界の核兵器事情 核兵器不拡散条約で 「核兵器国」を認定
- 日本の軍事兵器&防衛費事情 アメリカからの軍事兵器購入コストが増大
- 軍事兵器の地政学 イランが中東の武装組織に対して軍事支援
- 防衛費の地政学 増加傾向にある徴兵制を敷いている国
- 産業資源 1
- 第7章 人とお金の地政学
- 移民・難民 祖国・故郷を追われた難民が全世界で1億人を突破
- 日本の難民事情 難民認定率が先進国の中で著しく低い日本
- 世界の気候難民事情 世界各地で増え続けている気候難民
- お金(資金援助) 先進国が中心となって途上国の発展・成長を支援
- 日本の資金援助事情 資金援助の国民負担は1人あたり年2万円
- 移民・難民 祖国・故郷を追われた難民が全世界で1億人を突破
書籍紹介
エネルギー経済や国際情勢に造詣が深い研究者であり、その専門知識を活かして、世界経済の混乱や気候変動がどうやって日本の家計に具体的な影響を及ぼしているのかを解説しています。本書では、地政学的な視点から見た物価上昇の原因を探り、私たちの暮らしにどう影響を与えているのかを明らかにします。
国際的な動向による生活への影響
単に統計やデータに頼るだけでなく、具体的な事例や歴史的な背景を交えながら、物価の変動が持つ意味やそれに対する対策を考えるきっかけを提供します。読者は、自らの生活環境や消費行動が、どのように国際的な力学と結びついているのかを理解することができるでしょう。
また、小山氏はエネルギー安全保障や脱炭素政策など、現代社会の重要なトピックにも触れ、そうした政策が物価に与える影響を論じています。これにより、読者はより広い視野で物価の問題を捉えられるようになるでしょう。
専門的な内容を一般読者にもわかりやすく伝える努力が見られ、経済学や地政学に興味がある人なら誰でも楽しんで読むことができます。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
経済成長と人口の増加
自由貿易の発展とともに、各国の輸出量(輸出額)も拡大しました。輸出額の世界総計は1970年前後から上昇を続け、2003年から2022年までの間でも約3倍に増加しています。
2022年の輸出額は24兆2400万ドルです。途上国の輸出額だけでも10兆ドルを超えています。こうした経済成長の影には、人口の爆発的な増加があります。
世界の人口は2023年時点で80億人に到達しました。人口と共に労働力人口も増加したため、GDPや国内需要を押し上げました。
しかし、人口の増加に経済成長が追い付かず、失業率の高い国が増えてきているなどの課題もあります。
輸入品の価格
外国から資源や食料を輸入する場合、輸入価格には輸入品の購入額だけでなく、輸送費や諸経費が含まれます。輸入業者は外国の輸出業者に対して、「CIF価格」または「FOB価格」という取引価格で支払うことが一般的です。
日本の財務省が毎年発表している統計では、各品目の輸入額として主にCIF価格が表示されています。FOB価格は、輸送船に貨物を積み込むまでの価格です。
CIF価格は、FOB価格に輸送費と保険料を加えた輸入価格です。これは、輸送船が輸入国の港に到着するまでの料金を含んでいます。
つまり、生産地や工場から港までの輸送費、輸送船への貨物積載費用、海上輸送費(燃料コスト)、海上保険料、これらに輸入品の購入額を加えたものがCIF価格となり、輸入業者が支払う金額です。
さらに、荷下ろし費用、輸入関税、通関手数料、港から倉庫までの輸送費などが別途でかかる経費となります。
日本の衣料品事情
経済産業ショア「商業動態統計調査(2022年)」にようると、日本における衣類品の市場規模は、1990年から2022年の約30年間で、15兆3000億円から8兆7000億円に減少しました。それに対し、衣料品の輸入量は大幅に増加しています。
日本で販売されている衣料品のうち輸入品が占める割合は、2021年の時点で98.5%と報告されています。国内で生産された衣類品はわずか1.5%です。
輸入先は50%以上が中国、次いで2位のベトナムが14%以上を占めています。国内の衣料品供給量が増加にともない1990年から2019年の約30年間で半額以下まで下がっています。(1990年では6848円→2019年では3202円)