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目次
書籍情報
ゴミうんち
循環する文明のための未来思考
竹村眞一
京都芸術大学教授、NPO法人LEP(Earth Literacy Program)代表。
グラフィック社
- イントロダクション
- part1 地球のPoopLoop小さなエッセンシャルワーカーたちが大きな地球を支えている
- 誰かのうんちは、誰かの宝物
- 糞虫が世界を甦らせる
- ミミズが歩いたあとに「土」ができる
- シロアリがいなければこの世はゴミだらけ⁉
- キノコを栽培するシロアリ
- 森の空き家リユースの「環」
- 「森は海の恋人」
- PoopLoop うんちがつなぐ地球の「環」
- サケは海と森をつなぐ
- カバは水域と陸をつなぐ
- うんちは種子のデリバリー
- ホエールポンプ
- 海の森 利他的「排泄」経済学
- サンゴ礁も利他的経済?
- “藻類のおなら”が雨を降らせる?
- part2 この美しい循環PoopLoopはどうやって出来た?
- 誘導な廃棄物の再利用で共進化してきた地球と生命
- 鉄サビの地球史
- 緑の樹木も3億年前のプラごみだった?
- キノコやカビが回す地球の「環」
- 「発酵」というギフトエコノミー
- 「分解と循環」のグルコース経済
- 酵母の排泄物を飲む私たち
- 私たちは「歩く糠床」⁉
- 牛の胃のなかの循環 PoopLoop
- 窒素循環の仕組み
- 陸と海をめぐる窒素の「環」
- 地球史上2回目の「鉄の大濃縮」
- 現代文明を支える地球のゴミうんち 石油・炭素・石灰岩
- プラスチックの石油から作られる?
- 森のゴミうんちのミルフィーユが地球史の標準年表に
- part3 ゴミうんちから見た日本の歴史と文化
- 100万都市・江戸のPoopLoop
- 針供養 捨てる道具に仏がやどる
- 金継ぎ 壊れることで生まれる新たな景色
- 鉄砲を捨てた日本人
- 日本の国土は女神のうんち?
- 漢字という創造的なジャンクDNA
- ゴジラ、ヘドラ、くされ神
- part4 ゴミうんちと人類
- ゴミうんち問題の起源は「定住革命」にあり?
- 感染爆発の温床となるシステムリンク
- ベルサイユ宮殿は糞尿公害の産物?
- 鳥のうんちと食料生産革命
- 小さな地球、巨大化した人類
- 99%ムダ=伸びしろ?
- 地球人、明日は今日より21万人プラス
- 海を巡回する見えないLoop
- 着るより早く、捨てる服?
- シェアリングエコノミー 凸凹マッチングでムダを減らす
- part5 地球の循環OSのアップデート
- 生物素材の着衣、石油文明の脱衣
- 森が循環する都市
- 転生するプラスチック「トランスウッド」
- ゴミに価値を持たせる
- おむつ問題を「地球目線」で解決
- めぐる「環」の再設計
- 廃棄物のアップサイクル
- ブラックボックスを「ホワイトボックス」に
- <排便>地球標準のトイレ
- <排水>もう水に流さない
- <排気>大気のゴミ袋の容量
- <排熱>「光電融合」というゲームチェンジ
- 健便、検便、献便
- あなたの腸内会
- おいしい牛乳は、おいしい牛糞から?
- KET技術メカニズム
- 「空き家」リフォームにようる「空間倍増計画」
- 「宇宙を包含した地球」への進化
- 結び
書籍紹介
この書籍は、21_21 DESIGN SIGHTで開催された「ゴミうんち展」のコンセプトブックでもあり、自然界における「ゴミ」や「うんち」という概念の再定義を通じて、循環型社会への移行を促す意図が込められています。
自然界の無駄のない循環
本書は、自然界では何もが無駄なく循環しているという前提から始まります。私たちが「ゴミ」や「うんち」と見なすものであっても、自然のサイクルでは再利用や分解という形で新たな資源となります。この視点から見ると、社会が「ゴミ」や「うんち」を忌避する姿勢は、循環型社会への理解を阻害していると指摘します。
社会デザインの失敗とその反省
竹村氏は、現代社会の「ゴミ」への対処法が社会デザインの失敗であると論じます。排出されたものを再度循環させる自然の仕組み、人類の社会と文化、そして最新の技術をビジュアルに紹介し、「人類の社会OS」を更新する方法を探るこの書籍は、私たちがどのように環境と共存し、互助するべきかを示唆しています。
展覧会と書籍の関係性
この書籍は、21_21 DESIGN SIGHTでの「ゴミうんち展」のコンセプトブックとしても機能します。展覧会では、身の回りから宇宙までを見渡し、さまざまな「ゴミうんち」を扱います。この取り組みは、世界の循環に向き合う実験の場とも言えます。書籍はその思想を深堀りし、我々が直面する環境問題への具体的な解決策を模索します。
未来への思考
『ゴミうんち』は、未来思考の観点から、私たちがどのように物事を見直し、新たな価値を見出すかを問います。循環型社会への移行は、単にリサイクルを増やすことではなく、思考そのものを再構築することであると主張します。
本書は、読者に自然と社会の関係性を再考させるきっかけを提供します。デザイン、社会学、環境学の観点から見ても価値ある一冊であり、持続可能な社会を築くためのインスピレーション源となることでしょう。この書籍が、私たちが「ゴミ」から「資源」へと認識を変えるきっかけとなり、未来の循環型社会の実現に一助となることを期待します。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
発酵というギフト
麹と呼ばれる菌類が活躍する発酵食品に醤油があります。大豆のたんぱく質をアミノ酸のうま味成分に分解するプロテアーゼ酵素が活躍しています。発酵微生物は糖を食べてエネルギーを獲得し、乳酸やアルコールなどの副産物を発生させます。この副産物が他の生物に役立つ贈り物となります。
菌類は自分が糖を食べたくてデンプンやセルロースを分解します。そうしてできた乳酸やアルコールのおかげで腐りにくくなり、保存が利くようになります。それをさらに分解することで栄養源になる発酵食品が生まれます。
お互いの廃棄物・排泄物を「宝物」として活用し合う「PoopLoop(ゴミうんちの環)」と呼べるのではないでしょうか。
金継ぎ
バラバラに割れてしまったお皿は、ゴミとして捨てるしかないでしょうか。日本人は、その割れた断片を継ぎ直して器として再生し、傷跡を残したまま「景色」として愛でるという方法を育んできました。
「金継ぎ」という室町以降に発達した技法では、割れた陶器などの割れ目に金で装飾し、接着することで新たな芸術作品であり長く使う食器としてゴミが生まれ変わります。
震災の瓦礫の中から、捨てられない思い出の品を金継ぎで修復したとき、まるで自分自身が修復された気持ちなったという体験を語る人がいます。日本の伝統は次代の分化のヒントが隠されているのではないでしょうか。
おいしい牛糞
惑星の「窒素循環」を撹乱している問題の一つに、家畜の糞尿汚染があります。
2023年の秋、イタリア公共放送が北海道・標津町を訪れました。彼らは、牧草だけで育った牛から得られるグラスフェッドミルクの生産と、その牛糞の循環利用を見学するために来たのです。
欧州の国々は、日本よりもはるかに食肉やバター、チーズなどの乳製品に依存してきました。しかし、酪農家の減少に対抗するため、今度は日本から学ぼうとしているのです。
牛糞の循環利用は、実際に革新的な技術です。牛糞スラリータンクに独自開発の鉄触媒液を加えることで、牛糞が有効な肥料に変わります。これにより、牧場特有の悪臭が消え、窒素分の硝酸化を防ぎながら肥料としての成分を保持することができます。また、牛糞を散布した牧草地では、糖度の高い牧草が生い茂るという循環が生まれます。