キツネのせかい/著者:塚田英晴

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書籍情報

タイトル

野生動物学者が教える

キツネのせかい

発刊 2024年2月10日

ISBN 978-4-89531-938-6

総ページ数 291p

著者

塚田英晴

麻布大学獣医学部動物応用科学科教授。博士(行動科学)。
野生動物学、動物行動学、野生動物保全管理学が専門。

出版

緑書房

もくじ

  • 第1章 キツネのイメージ考
    • 1キツネの昔ばなしと化けるキツネ
      • 昔ばなしの中のキツネたち
      • 中国からやってきた化けるキツネ
      • 『日本霊異記』の中のキツネ
    • 2なぜキツネは〝化ける〟のか
      • 女の人に化ける
      • 地蔵や墓石に化ける
      • 狐火の正体
    • 3キツネと稲荷
      • 神社にいるキツネ
    • 4西洋のずるがしこいキツネ
      • 西洋のキツネの昔ばなし
      • かしこいキツネ
      • 猟師をだます
    • 5映画になったキツネ
      • ディズニーアニメのキツネ
      • 『きつねと猟犬』
      • 『ズートピア』のニック
      • 日本のアニメでのキツネたち
      • かいけつゾロリ登場
      • 実写映画に見るキツネの姿
      • アニメーションや映画におけるキツネ像の変遷
      • コラム「キツネ憑きとは?」
  • 第2章 キツネのキホン
    • 1キツネってどんな動物?
      • キツネはイヌのなかま
      • 日本のキツネ
      • 世界のキツネとそのなかまたち
    • 2キツネの住むところ
      • キツネの分布~世界が舞台~
      • 草原がキツネのふるさと
      • 巣穴は子どものゆりかご
      • キツネも都会暮らし?
    • 3キツネの一生
      • 交尾から出産
      • 子ギツネの成長
      • 巣穴のひっこしと実習旅行
      • 旅立ちからおとなへ
      • 老いと死
    • 4キツネの毎日
      • キツネの夕方
      • キツネの夜
      • キツネの朝
      • キツネの昼
    • 5キツネのからだ
      • 意外と小さくて軽い
      • 長いしっぽと大きな耳
      • 美しい毛皮
      • 走りが得意
    • 6キツネの感覚
      • 視覚
      • 聴覚
      • 嗅覚
    • コラム「キツネの年齢はどうやってわかる?」「黒いキツネは日本にいるの?」
  • 第3章 キツネの食事
    • 1キツネが食べるもの
      • キホンの食べもの
      • 食べものは風まかせ
      • 食べものの好ききらい
      • 子育ては大変
      • もしものときのために
    • 2狩りの方法
      • 空からミサイル攻撃
      • どこでバッタが捕れる?
      • 鼻がききます
      • いろいろな狩りの仕方
    • 3同じ食事を狙うライバル
      • コヨーテやオオヤマネコは苦手
      • キツネ界ではいじめっ子
      • 親類たちとはご近所づきあい
      • キツネの天敵は?
      • コラム「キツネの食べものはどうやって調べる?」「キツネはなぜ靴を盗むの?」
  • 第4章 キツネの社会
    • 1恋するキツネ
      • 恋のはじまり
      • 離れられないふたり
      • 仲良し夫婦
      • 妻のためにエサをお届け
    • 2キツネの家族生活
      • キツネは子だくさん
      • きょうだいはライバル
      • お父さんは働きもの
      • お姉さんは親代わり
    • 3子別れの儀式
      • それは一瞬のできごと
      • お母さんが鬼になる
      • 親と子の複雑な関係
    • 4キツネの旅立ち
      • 秋は旅立ちの季節
      • 何百㎞もの長い旅
      • オスは旅立ち、より遠くへ
      • まだ見ぬ恋の相手を求めて
      • 旅立ちの理由
    • 5キツネのなわばり
      • おとなりはライバル
      • ひとりが好きだけど、群れるのも平気
      •  コラム「キツネをどうやって追跡するの?」
  • 第5章 キツネと人とエキノコックス
    • 1エキノコックス症とは
      • 小さなサナダムシがやっかいもの
      • エキノコックスの複雑な生活
      • 卵で人に感染
      • 病気の診断と治療
    • 2なぜ問題になったのか
      • 日本にはいなかったエキノコックス
      • 礼文島での流行
      • 流氷に乗って北海道本土へ
      • キツネと人で感染が拡大
    • 3エキノコックス対策と成果
      • 駆除からはじまった対策
      • 対策がうまくいかなかった背景
      • 虫下し作戦の開始
      • 虫下し作戦の成功
    • 4新たな心配
      • 本州でも広がる?
      • 知多半島の野犬での発生と定着
      • 知多半島のエキノコックスの謎
      • コラム「エキノコックスにかかっているかを調べるには?」
  • 第6章 現代のキツネと人
    • 1害獣としてのキツネ
      • ニワトリはご用心
      • ウシへの被害
      • トウモロコシ大好き
      • 野菜や果実も被害に
      • 錯誤捕獲とは
    • 2キツネと交通事故
      • 北海道がワースト
      • なぜキツネがロードキルにあうのか
      • 人も不幸になる
      • キツネにも人にもやさしい道路とは?
    •  3餌付けと観光ギツネ
      • 北海道の観光ギツネ
      • 「北の国から」が餌付けブームのはじまり?
      • ご先祖さんも餌付け?
      • 餌付けのもたらす影響
      • 節度のある付き合い方とは
    •  4キツネと人のこれからを考える
      • 身近な隣人としてのキツネ
      • 病気との付き合い方
      • 野生動物と人との距離感
      • コラム「毛の抜けた、お化けギツネの正体は?」「キツネはペットになるか?」

はじめに

 キツネはキャラクターだったり、ダンスのモチーフだったり、とても身近な動物の1つです。

 けれど、キツネがどこに住むのか、何の仲間なのかを聞かれたら答えられない人がほとんどでしょう。

 北海道に暮らす人にとっては、よく見かける動物かもしれません。自宅や旅行先で狐に出会ったり、庭を荒らされて困っていたり、病気をうつされるのではと心配したりします。

 ところ変われば、キツネに関する経験や知識もさまざまであり、キツネのイメージも違っているかもしれません。

キツネの毎日

 キツネは日が暮れるころに置きます。巣穴の前であくびや、けのびをしておもむろに歩き始めます。

 暗闇になっても歩き続け、獲物を見つけては捕まえ、おなかの中におさめていきます。

 いつもの巡回コースを歩いて、ある程度の食事をすませると、昼寝をします。寝場所は行き当たりばったりで、知り合いのキツネがくると仮眠をやめて遊んだりします。

 日が明るくなってくると、身をかくして本格的にねむる場所に移動していきます。

キツネが食べるもの

 キツネが何を食べているのかを答えるのは簡単ではありません。

 ネズミ、鳥、ウナギ、昆虫、ミミズ、魚、トカゲ、ヘビ、果実、野菜、穀物、動物の死体など、あげていくとキリがないのです。

 日本のキツネが最も多く食べていたのは哺乳類で全体の35%です。次に多かったのが果物で21%です。昆虫などの無脊椎動物は19%ほどで、13%は人間の食べ物をあさって食べています。鳥類や魚類を食べるキツネは少ないです。

害獣としてのキツネ

 ニワトリを屋外で放し飼いにして育てている農家にとっては、キツネは今でもやっかいな存在です。アイガモ農家も被害を受けています。

 キツネにとっても農家からニワトリやアイガモを狩るのは命がけです。罠にかかれば殺されてしまいます。そんな危険をおかしてまで、キツネはニワトリを襲わなければならないのです。

 子どもを食べさせていくために、5月~7月は必死になって餌をかき集めなければなりません。飼料などにキツネの好物となるものがある場合も、農畜場所にふらふらとくることがあります。

 子牛がキツネに食べられる被害が出るのは、農耕飼料にトウモロコシが含まれていて、つられてキツネがやってきてしまうからです。

キツネにもやさしい道路

 道路を車で走ると、道のわきに動物の絵が描かれた標識を見かけることがあります。事故を防ぐ工夫として、野生動物との事故が起こりやすい場所を運転している人に知らせています。

 道路のわきにライトを増やしたり、動物が道路に近づくとセンサーが感知してランプが点滅するなどの仕組みを取り入れています。動物事故の多い場所では、速くはしれないようにデコボコな道路にしている場所のあります。動物用のトンネルを道路を挟んで設置している場合もあります。こうした対策は道路のほんの一部でしか行われておらず、まだまだ不十分です。

 道路は、私たちが便利で豊かな暮らしをするためにつくったものです。それをなんとかするのも私たちの責任であるといえます。

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