目次
ロボットか労働者か
監修
UnsplashのPaul Hanaokaが撮影した写真
無用なテクノロジー
多くの富裕国は、生産年齢人口の減少や労働所得格差の拡大を補うためにオートメーションを必要としていると考えています。
テクノロジーの進化が、人口動態が作り出す問題を一掃してくれるだろうとみているのです。
オートメーションは解決策であっても、別の問題を作りだします。アメリカではトラックドライバーが不足しています。現役ドライバーの年齢を考えると、今後10年間で100万人以上を新たに雇用しなければなりません。
テクノロジーの大企業家は、自律走行車の開発に多額の投資をしています。低コストで運送できて、人材問題を解消できるかもしれないからです。
しかし、技術は人々の選択であり、必然でも、必要性でもありません。ドライバーとして働きたい者は100万人といます。けれど合法的に外国人労働者を採用できないから困っているのです。
規制があるため、必要のないテクノロジーへの投資を余儀なくされています。
他にもホームヘルパー、看護助手の不足なども深刻です。
移民規制という浪費
どこに移動できるかは、その人が生涯にどれだけ稼げるかを根本的に左右します。
同僚との共同研究で42の異なる国で生まれ、教育を受けた労働者の所得を調査したことがあります。母国にとどまった労働者とアメリカで働いた労働者の収入をわれわれは比較したのです。同程度に生産性の高い労働者の賃金を調査対象の42か国とアメリカで比較すると、アメリカの労働者は調査対象国の2倍から10倍、平均して4倍程度の賃金を得ています。
移民の流れを阻む障壁は、人為的な労働力の欠乏を生み出しています。アメリカの多くの企業は負担できる人件費で労働者を見つけるのに苦労しているのです。
経験から判断しても、より多くの労働者を国内に受け入れると、イノベーションのパターンは変化します。20世紀半ば、メキシコからの農業ゲストワーカーの滞在を許可しました。その後、政府はそのプログラムを縮小し1964年には完全に停止しています。その結果、農業分野における国内労働はの雇用はまったく増えていません。
労働者の受け入れを
当面の課題は、必要な雇用を埋め合わせるのに十分な労働者を確保することにあります。日本のように、伝統的に移民を歓迎してこなかった国も、いまや外国からの労働者を積極的に受け入れているのです。
移民が必ずしも国内労働者の賃金を低下させるわけではないことを知った上で、労働力を確保できます。2017年の米科学アカデミーのレビューでは、平均賃金に少しプラスになる影響があることを明らかにしました。
もちろん、不利な立場にある米労働者のなかには、移民と直接的に雇用を奪い合う人も出てくるかもしれません。けれど、移民を禁止することで生じる経済的損失に比べれば微々たるリスクです。
シンガポールの研究によると、家庭内の仕事を引き受けてくれるケアワーカーがいれば、高スキルの女性が労働力に参加できる可能性が高くなるようです。より小さなコストで質の高い生活が送れるようになります。
イランとロシアのパートナーシップ
監修
Image by Stefan Schweihofer from Pixabay
ビジネスパートナー?
イランとロシアが協力すれば、大きな成果が得られるでしょう。お互いに、都合の良いときに手を組むことがうまくなっています。
その領域は経済から政治、軍事領域まで及んでいます。
イランもロシアも、相手には多くの魅力があることをいまや認識しているようです。
われわれはともに制裁にはんたいであり、欧米が外国の問題に介入してくることに反対している。両国のパートナーシップは必然に導かれていた。
と、あるイラン人外交官は匿名で答えてくれました。
ウクライナ侵攻後の協力関係
ロシアがウクライナに侵攻すると、イランとロシアの協力関係は新たなレベルに達しています。
政府高官級の会合が何度も開かれています。2022年7月のイラン最高指導者アリ・ハメネイとプーチン大統領の首脳会談もその1つです。
ロシアのイラン向け輸出は前年同期比27%増となり、イランからの輸入も10%増となっています。
両国は二国間貿易をドル以外の通貨で決済しはじめ、ロシアはイランのガス油田開発に約400億ドル投資する覚書に調印しました。
特に、両国の軍事関係は大きく拡大し、イランはシャヘド136(自律走行ドローン)に加えて無人攻撃機「モハジェル6」もロシアに供給しています。更に、短距離弾道ミサイルと戦車なども供給することを約束しているようです。弾薬や防弾チョッキなども供給されています(証拠はないとされています)。ロシアの司令官をイランの軍事顧問がサポートすることもあるようです。
イランとロシアは、引き続き、欧米の影響を押し戻し、孤立から身を守り、可能な時はいつもアメリカ主導の秩序に対抗する連合の構築を模索するでしょう。
大国間競争とドルの命運
監修
UnsplashのKenny Eliasonが撮影した写真
経済制裁とドルの覇権
ロシアのウクライナ侵攻を前にワシントンが経済制裁を発動したことで、ドルへの依存レベルをさらに引き下げた国もあります。
通貨秩序が多極化すれば、アメリカの特権は後退し、世界経済への影響力も、国際秩序に規律をもたせるためにドルを使用する能力が低下します。
それでも、ドルの支配体制に終止符が打たれる可能性は低いようです。対ロ制裁に参加している国が、ドルから他の通貨へと準備通貨を多様化させていくインセンティブをもつことはありません。欧米の制裁に反対する国も、地政学的情勢が硬直するなかで、自国の安全を保証することに期待して、ドル体制の維持を心がけるはずです。
人民元とルーブル
中国とロシアは、国際経済取引や外貨準備という領域でも自国通貨の魅力を高め、人民元やルーブルによる貿易や投資を促し、多国間金融インフラの再構築を試みています。
ニューデリーも、インドとの貿易・投資のルピー決済を促進しようと、各国が利用できるルピー建てのボストロ口座を創設しました。インドとロシアは、2022年に対ロ制裁が発動された直後、冷戦期のルピー=ルーブルの通貨メカニズムを再導入し、自国通貨建て貿易を促進しようと試みています。
最近では、国際決済銀行と協力して、緊急時に各国の中央銀行を支援するために、人民元の流動性供給アレンジメントを導入しました。チリ、香港、インドネシア、マレーシア、シンガポールの中央銀行は、国際決済銀行が本部を置くスイスのバーゼルにそれぞれ150億人民元の資金を準備金としてプールすることを約束しています。
人民銀行が決済オプションとして導入したデジタル通貨の導入を加速させているようです。人民元の利用をしやするくする目的があります。
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのブリックス5か国は、ドル離脱に向けた共同作業を検討しています。
人民元、ルーブル、ディルハム、ルピーは主要国際通貨になる可能性は低いものの、第三者による利用によって国際的な役割が高まっていくかもしれません。
国際秩序とドル外交
ドル中心の金融システムがカバーする世界は小さくなっているかもしれません。しかし、ドル体制はより深く定着しています。
通貨体制の多極化への長期トレンドを抑えるには、アメリカはリベラルな国際秩序の公共財を強化する形で経済外交を展開しなければなりません。
主要な同盟国や国際社会の多くを離反させれば、アメリカはドル支配体制を維持できなくなるのではないでしょうか。
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