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プーチンの戦争からロシアの戦争へ
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UnsplashのKlaus Wrightが撮影した写真
エリートと民衆
プーチン政権のエリートのなかには、逮捕されて裏切者の烙印を押されることを恐れてポストにとどまる者もいれば、その理由を、破壊的な政策がとられるのを内側から抑えるためと主張する者もいます。
ロシア軍のウクライナでの行動を「間違いなく支持する」人が43%、「どちらかといえば支持する」人が33%でした。さらに「戦争継続を支持する」人が48%で、ウクライナとの交渉に賛成する人は45%とやや少なかったようです。プーチンの支持率は82%でした。
プーチンのロシアにおける世論調査の結果の信頼性には疑問がありますが、このデータ結果は戦争期を通してほぼ一貫しています。
ほとんどのロシア人は、戦争による劇的な経済的後退を経験していないし、2022年9月の部分動員も、人々の戦争への態度にほとんど影響を与えていません。
反戦デモがすべて迅速かつ残酷に鎮圧されてきたのは事実ですが、開戦以来、ロシアではデモを組織しようとする試みすらほとんどないのです。侵略そのものに対する怒りではなく、不十分な訓練や装備の不足、徴兵された若者への待遇の悪さに対する不満からの抗議行動などもあります。
歴史の影
ニキタ・フルシチョフは、1956年に共産党指導部を前にした演説でスターリンの「個人崇拝」を批判し、スターリンの労働キャンプで幸運に恵まれて命をつないでいた数百万人を解放しました。しかし、スターリンの名誉は、1960年代にソビエトの公式プロパガンダで部分的に回復され、「第二次世界大戦でソビエトを勝利に導いた偉大な指導者」と賞賛されます。
1991年にソビエトが崩壊に近づいたとき、エリンツィンが共産党を禁止したことです。ゴルバチョフのグラスノスチ(情報公開)運動によって、集団農場の悲劇やウクライナで数百万人の犠牲者を出した飢饉、基本的自由の抑圧など、共産党の失政の遺産はすでに暴露されていたので、その名声が回復することはないように思えていました。
1993年にロシア共産党が再結成され、野党勢力となりました。現在に至るまで党は存続しています。
ロシア社会の驚くほど多くの人々が「欧米の包囲網を押し返すためにこの戦争が必要だ」という性との正当化の理屈を受け入れています。
イランや北朝鮮など他の政権に先端技術を売り込み、サイバー兵器を無差別に利用するなど、ロシアは今後も危険な存在であり続けるでしょう。場合によっては何十年も頭痛の種であり続けるのです。
新作業政策の恩恵とリスク
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競争か建設的な協調か
2021年10月、バイデン政権は、グローバルミニマム課税基準の制定をめぐって約140か国と合意し、大きなマイルストーンを達成しました。
企業に15%のグローバルな最低税率を課す合意は、何十年も続いてきた問題の多い法人税率の引き下げ競争に終止符を打つことを目的としてます。
現行の制度では、多国籍企業が世界で租税を回避するために利益を低税率地域に移転するインセンティブを持っているのです。
バイデン政権は、特定の重要分野での経済活動を促進するための法人税優遇措置の必要性も認識しています。環境対策や中ロとの緊張も踏まえたサプライチェーンの安定供給確保のためのツールとされているようです。
グローバル課税の恩恵
グローバルミニマム課税は強力な実施ルールによって支えられています。税制を変えていない国に拠点を置き、事業を展開している国で最低税率15%を支払っていない企業に対して課税できるといものです。企業は合意実施国に15%の法人税を納めることになるため、合意に参加しないことは国にとって割が合わなくなります。
欧州連合の全加盟国を含む多くの国々が、2023年末までにグローバルミニマム課税を導入するための国内措置をすでに終えています。
しかし、アメリカが参加しなければ、貿易・経済政策をめぐってEU加盟国を含む諸国との緊張が高まる恐れがあります。米議会が行動を起こせば、こうした緊張も避けられるのです。
いま考えるべきは、議会と2025年の米政権が、ワシントンの利益になる合意と闘うのではなく、このままでは合意実施国に徴収される税を回収できるように条約に参加するかどうかでしょう。
中国のグローバル軍事インフラ
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Image by Markus Winkler from Pixabay
コンテナから軍艦まで
中国企業は現在、世界の主要地域で100近くの商業港のターミナルを所有または運営しています。われわれの調査では、海軍船艦が、中国企業が所有・雲煙する数十の外国ターミナルを定期的に利用するパターンが新たに確認されています。
軍事目的ではないことを示すために、外交旗を掲げた海軍船艦への給油や補給、専門的な整備や修理も提供されているようです。シンガポール、タンザニアのダルエスサラーム、ギリシャのピレウスなどの港をその例として指摘できます。
中国の商品貿易の90%以上は海上輸送によるもので、世界平均の80%を大きく上回っています。エネルギー、鉱物、農産品その他の原材料を大規模に輸入する中国にとって、世界の港湾施設は必要不可欠の存在です。近代的コンテナターミナルと巨大コンテナ船は、商品の大規模な輸出を支えています。北京は世界の海運業界において主導的な地位を占めるようになりました。
同時に、主要な市場、資源、航路、チョークポイントに近い港湾の商業的魅力は、海軍力の増強によっとも重要なファクターです。2015年の国家軍事戦略で、中国軍にこうした外国における利益(港湾施設)と貿易の流れを守る「戦略的任務」を課しています。
海運のチョークポイント
ヨーロッパという巨大市場と中国を結び、中東とアフリカからの資源輸入ルートでもある東西の主要なシーレーンを、中国軍や港湾産業のアナリストたちは「海洋の生命線」と呼んでいます。北京は、このルートに沿った供給ラインを確保することを、中国軍が果たすべき「戦略的タスク」と呼んでいますが、長期に及ぶ外洋での軍事活動に必要な軍事基地へのアクセスをもっていません。
中国の外国における港湾プロジェクトの半分以上(57%)は、ホルムズ海峡やマラッカ海峡などの主要な海上交通のチョークポイントに近い場所に位置しています。これらを利用して、中国海軍は世界の主要なシーレーンを結ぶ海運や商業の流れを監視し、その気になれば、遮断することもできるのです。
中国の海運ネットワークは、中国共産党はがその政治経済システムを支配し、内外の中国企業に安全保障上の目的に即した行動をとるように強制できます。国が主要株主で、唯一の株主でもあるため、国有企業は北京の指示には非常に敏感です。
パワープロジェクションのもう1つの道
中国は引き続き、中国の港湾資産をロジスティスクや情報といった非戦闘的機能のために利用するでしょう。
しかし、商業湾を利用して戦力を行使すれば、大きな圧力を受けることになります。同盟国でない国外の法管轄下にある港湾を管理していくのは、戦時や危機という環境下では決して安全ではありません。外国の軍事力にも脆弱なままです。
港湾は固定されたターゲットで、攻撃からの保護はほとんどありません。機雷を敷設し、船を1隻でも沈めれば、港湾全体が機能しなくなるのです。紛争になれば、中国の施設を差し押さえられて国有化されるリスクがあります。
中国は不測の事態に対応するため、今よりも多くの外国基地を確保する努力を間違いなく続けるでしょう。
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