目次
大国間競争とインドの立場
監修
UnsplashのCharu Chaturvediが撮影した写真
インドの立場
ロシアのプーチン大統領が「第二次世界大戦以降、もっとも危険な10年になる」と述べています。しかし、離れた世界で二番目の人口規模をもつ国の世界展望は違っているようです。
インドは「普遍的な一体感」を培う一助となることを期待すると指摘し、「一つの地球、一つの家族、一つの未来」をテーマにしています。戦争と対立ではなく、気候変動、テロ、パンデミックに直面しており「共に行動することによってのみ解決できる」との主張です。
したがってニューデリーは、ロシアを孤立させることを呼びかける欧米の求めには応じません。
緊張が高まっていようと、世界中のどの国とも貿易を行い、良好な関係を維持しようとします。
グローバルサウスとインド
1月にインドが主催した「グローバルサウスの声」バーチャル・サミットでの演説で、モディは、この3年間ですべての途上国が燃料、肥料、食料価格の上昇、地政学的緊張の高まりなどの同じ課題に直面していると指摘し、不平等な配分などの問題を起こさない関係を望んでいると表明しています。
インドで成功を収めている電子決済、デジタル、原子力、宇宙などの技術提供を約束し、医療品やコロナワクチンを低所得国98か国に配布してきました。
災害救援、人道支援、教育奨学金などのプログラムも強化しています。
インドとウクライナ戦争
ロシアと米国とでインドは中立の立場をとっているため、西側の印象はあまり良くありません。
けれども、インドが戦いに参加しないのは地政学的思惑があるからではないかと言われています。ロシアが中国と一定の距離を保つことをインドは望んでおり、孤立させればモスクワを北京に接近させると考えているからです。
独自外交
インドはバランスに配慮した動きをみせていますが、この先もそうであり続けることができるかはわかりません。
北京がインドに対してさらに強い圧力をかければ、さすがに反中路線に転じる可能性もあり得ます。今まで以上に、インドに供給しているモスクワの武器が制約されるかもしれません。
ウクライナ戦争が長引けば、中立国に対してアメリカが強く要求することも余儀なくされるでしょう。その際に、米印は対立するかもしれません。
インドの貧困層は貧困のままであり、ワシントンは懸念を示しているが、インド人からすれば自らの民主政治に口出しされることを良しとしないでしょう。
インドは、敵対する国はほとんどなく、世界と渡り合うことを学び、新たに自信をつけています。インドが国際社会で利益を求めるのは当然のことでしょう。
新しいウクライナ戦略
監修
Image by David Mark from Pixabay
2段階戦略
戦争は予想以上にウクライナに有利をもたらしています。2014年のロシアによる侵攻前と比べても、領土のおよそ85%を維持しているのです。
戦争は予断を許しません。人的・経済的損失は膨らんでいくばかりです。ロシア軍の数量的優位が欧米の兵器へのアクセスという対抗バランスになると考えられます。
血まみれの膠着状態になる前に、紛争を外交的に終わらせる声が当然高まります。
ウクライナへの武器供与の流れを強化し、ウクライナの防衛力の強化と攻撃を成功させる必要があるのです。その後、2023年後半に戦闘が下火になったタイミングで交渉のテーブルへと向かわせます。これが欧米の戦略構想です。
膠着状態
ロシアの核兵器の威嚇メッセージは現実味を欠いてきてはいるが、この抑止力を低下させてしまい台湾を攻撃しても大丈夫だと北京に勘違いさせてしまうのは避けたいのです。
欧米は、自制路線を止めて、戦車や長距離ミサイルなどの兵器を提供すべきタイミングにあります。
ヨーロッパ諸国はレオパルト戦車を提供し始め、アメリカが約束しているエイブラムス戦車31両も秋には到着する予定です。
ウクライナ南部におけるロシアの防衛線を突破する軍事力を強化したい狙いがあります。
キーウの状況
すでに10万人以上の支障を出していて、今までと同じことを繰り返しても意味がありません。
経済は30%萎縮し、貧困率も上昇しています。そしてロシア軍はウクライナの重要なインフラに対する攻撃を続けているのです。約800万人のウクライナ人が国外に脱出し、数百万人が国内避難民と化しています。
現実には、キーウへの大がかりな支援を続けることは、広範な戦略リスクを伴います。アメリカはアジアおよび中東での軍事行動にも備えなければなりません。
このような中、2024年の選挙で与党が変われば、ウクライナに対する政策は大きく変わりかねないのです。
大きくコストがかかる以上、支援が持続可能なわけでもありません。ウクライナにとっては領土保全を長期的に回復できるような外交路線を見つけられれば、グッドニュースでしょう。
中国とウクライナ戦争
監修
UnsplashのChristian Lueが撮影した写真
中国の計算
冷戦期を思わせる米中対立においてロシアをつなぎ止める価値を北京は重視しています。プーチンが友好的でない指導者に取って代られることを北京は望んでいません。
ウクライナ戦争をどのように終結させるかについては合意していませんが、ロシアが明確に敗北することは耐え難いという点で意見が一致しています。
戦争が長期化し、インフレや食糧難が解決しなければ、北京はこの紛争を米主導の国際秩序が機能していない証拠として引き合いにだせるのです。
戦後ウクライナにおける影響力を確保したいという狙いも中国にはあります。ロシアとウクライナが戦闘で疲弊することを歓迎し、最終的な和平プロセスや経済については発言権を持ちたいと考えています。
軍事支援のリスク
北京がロシアへ直接的で長期的な軍事支援を表明すれば、それだけで状況は大きく変化することになります。
しかし、中国にとってもリスクが高いのです。ロシアが敗北すれば中国にも余波がきます。肩入れすることで、イランや北朝鮮の仲間入りをしていると思われかないというオマケ付きです。
中国主導の国際秩序の構築をより困難にすることになるでしょう。
ヨーロッパを失う
欧米は、インド太平洋地域における目的を共有するパートナーとともに統一戦線をとる必要もあります。
特にヨーロッパは、ロシアへの査証能力の高い兵器供与を阻止するのが基本的立場です。ウクライナ戦争はヨーロッパ人にとって実存にかかわる脅威であり、中国の介入を阻止することがヨーロッパの基本的利益であることを、繰り返し表明する価値があります。
中国が紛争に介入することは、ヨーロッパを失うことです。
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