目次
プーチンの最後の抵抗に備えよ
監修
敗北シナリオ
- 停戦合意
- エスカレーションと敗北
- 政権崩壊による敗北
ロシアがウクライナに対する核攻撃を選択した場合、NATOとの直接的な軍事衝突へとエスカレートする可能性も無視できません。モスクワが核を使用すれば、NATOの戦力で反撃され、ロシアの敗北が加速されることでしょう。
プーチンはロシアに政治的安定をもたらしました。ソビエト崩壊後の分裂と混乱から考えれば、優れた成果です。しかし、戦争が全般的欠乏を引き起こせば、民衆は彼を見限りかねません。プーチン政権が崩壊すれば、国内は混乱しロシアは戦争を継続できなくなります。
ロシアの敗北は歓迎すべきことです。他国への侵略は処罰される意識も強化されるでしょう。ベラルーシ、ジョージア、モルドバには新たな機会がもたらされ、欧米はヨーロッパ秩序を自分たちのイメージ通りに形作れるかもしれません。
世界的な混乱にも備えなる必要があります。ロシアとその周辺で、分離主義や新たな紛争などを引き起こす危険もあるのです。それに加えて、核兵器を誰が管理するのかという問題にも発展するでしょう。国際システムに危険な空白を作りだすことになります。
プーチン後
誰が後継を担うかはわかりませんが、1999年の権力ポストへの就任以降初めて、プーチンを支えてきた権力構造、縦の権力構造に、しだいに緩みが生じているのは事実です。
ウクライナ戦争に傭兵を提供してる民間軍事会社「ワグネル・グループ」のエフゲニー・プリゴジン、チェチェン共和国の指導者ラムザン・カディロフといった後継候補がいます。
2人は、戦争の失敗を受けて、すでにロシア軍と国防省の指導者に圧力をかけ、忠実な武装集団の後ろ盾をバックに、その権力基盤を拡大しようとしています。
プーチンが倒れれば、ロシアは内戦に突入する恐れもあるのです。経済的に困窮しているロシアの地域では、多くの少数民族が暮らしています。これらの地域の治安組織から暴力的分離主義勢力が大頭するかもしれないのです。
大国間関係のアナーキー
地域紛争、移民、避難民の流入、経済的不確実性の連鎖が戦争の終結とともに起こるかもしれません。ロシアの空白を埋めるのは不可能です。
米中、中央アジア、南コーカサスへの進出を阻止することはできません。彼らを締め出すのではなくその影響力を活用しようとするのが、現実的なアメリカの戦略となるでしょう。
ベラルーシとウクライナは、ヨーロッパの東面を守ることの難しさを示しています。この2か国は、ロシアが大国への野望を諦める最後の砦なのです。
ロシアの力が後退していけば、その機会を利用して、NATOメンバー、同盟諸国、パートナーをうまく守れる安全保障環境を形成すべきでしょう。
敗れたロシアとて、全てを失うことはあり得ません。いつか力を取り戻し、利益を自らの条件で模索するようになるはずです。そうした、ロシアの敗北と復活の双方に、われわれは政治的、思想的に備えておく必要があります。
防衛力強化に踏込んだ日本
監修
平和主義国家の安全保障構想
戦後の日本の安全保障政策の中枢に据えられてきたのが、軍事的自制路線でした。
しかし、2022年12月16日、日本は数十年にわたる軍事的自制路線を大きく見直すことで、「普通の」世界大国となるための大きな一歩を踏み出したのです。新しい国家安全保障戦略のもと、日本は今後5年間で防衛予算を3150億ドル増額して、軍事予算を倍増させ、敵への報復攻撃を可能にする能力を整備しました。
脅威が高まるにつれて、東京は時間をかけて、防衛的・攻撃的能力についての認識を時折見直してきたのです。北朝鮮がミサイルを発射すれば軍事衛星の獲得に乗り出し、国海域に侵入する国が増えれば、空母や水陸機動団を保有するようになりました。
「反撃」の能力を獲得したことについて、中国やその他の国の評論家たちは批判するでしょう。しかし、アメリカとそのパートナーからみれば、日本のシン国家安全保障戦略は称賛に値する内容です。巨大な経済・技術資源を持っている平和国家が、地域安全保障への貢献を強めようとしているいつので当然の反応となります。
反撃の内容
日本が敵のミサイルに攻撃された場合に、さらなる攻撃を阻止する目的から、敵のミサイル発射基地や指揮統制サイトに報復攻撃できるようになります。
北朝鮮全域と中国の目標に到達できるトマホークミサイル500発をアメリカに購入申請していて、ワシントンはすでに受注を容認しているようです。
陸上自衛隊も12式地対艦誘導弾の射程延長を試みており、改良型は2026年に配備予定とされています。
歴史的な協力関係強化
韓国と日本は、アメリカとの弾道ミサイル防衛演習の頻度を増やしています。両国が共有する海域を日本海と呼ぶか東海と呼ぶかについてはまだ合意できていませんが、韓国の海軍とともに、海上自衛隊をこの海域に派遣することに合意しています。
透明性のある議論が展開されてきました。けれど、今回のことでパートナーにとって良きニュースであり、アジアの安全に大きく貢献していくことを告げた歴史的なことです。
重要鉱物とサプライチェーン
監修
サイプライチェーン
何十年も温暖化対策に本腰を入れてこなかったアメリカで、いまや気候変動対策に向けた機運が高まっています。2022年8月、米議会は1兆ドル以上の補助金とインセンティブをクリーンエネルギーの生産に向かわれることを意図した法案「インフレ抑制法案」を可決しました。
問題は、温室効果ガス削減の試みに必要な鉱物の調達が立ち行かなくなるかもしれないことです。
リチウム、コバルト、ニッケル、銅などの入手が、EV車バッテリーのコストの多くを占めています。どれも大量に必要ですが、受容が供給を上回ってしまっています。
21世紀のクリーンエネルギーを獲得するには、アメリカ国内での生産と加工に加え、海外の同盟国と敵国ともに、サプライチェーンを確立していく必要があるのです。
インフレ抑制法
重要鉱物の生産は、インドネシアにニッケルの30%、コンゴ民主共和国にコバルトの70%、と一握りの国に集中しています。
これらの重要鉱物の加工と製品の製造は、ほとんどを中国に集中しています。電気自動車用の電池生産能力を世界の3/4以上を独占しているのです。
中国のクリーンエネルギー・サプライチェーンへの依存度を下げるため、インフレ抑制法は、エネルギー転換のための生産・製造への投資を増やす国内産業への補助金を提供する明記しています。
地政学的競争が激化するなかで、クリーンエネルギーへの移行を進めているようです。バイデン政権は中国、ロシア、オーストラリア。カナダ、欧州連合などにうまく対処できる戦略を策定しなければなりません。
鉱物資源の獲得
アメリカは重要な鉱物資源の開発を加速すべきです。そのために採掘能力を拡大するには、新規鉱山開発の許認可プロセスを合理化しなければなりません。
新しい鉱山の運用にもっていくには10年以上かかると言われているほか、国内にはリチウム鉱山が1つしかなく、鉱床を探すために認められたサイトも1万7000ほどしかありません。地域社会にエンゲージしていくことが不可欠になります。
重要鉱物のサプライチェーンを整備し、鉱物資源安全保障パートナーシップと協力していく必要もあるでしょう。
更に、変動しやすい重要鉱物市場を規制するように努力もしなければなりません。2022年初頭、世界のニッケル市場は激しい投機によって、価格が前年比の約3倍にまで急騰しました。各国が需要を満たせるように、価格の高騰がエネルギーシフトを妨げないように努力するべきでしょう。
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