目次
危険な10年をいかに乗り切るか
監修
地政学とグローバルな課題の衝突
中露の対米にある地政学のリスクが、気候変動、パンデミック、核拡散など、複雑で新しい課題と衝突しています。
ヨーロッパとインド太平洋における大国間戦争リスク上昇、イランが中東を不安定化させるリスクの拡大、第二次世界大戦後もっとも危険な瞬間が作りだされています。
古い地政学と新しい課題をうまく制御し、アレンジメントや制度を構築していくことでなければなりません。
気候変動と核問題
グローバルな課題の大業は、グローバルヘルスです。COVID-19が起こしたパンデミックは、世界保健機関の限界と、先進国の対応が不十分だったことを露呈させました。
エネルギーを確保しようとする各国では、気候変動対策よりもエネルギー安全保障をいかに実現するかが重視されているようです。
核保有国は依然として9か国に留まっていて、核開発能力をもつ先進工業国の多くが、核を開発しないことを選択しています。第二次世界大戦後は核兵器を使用した国やテロ集団はいません。
しかし、核兵器を放棄したことにより、ウクライナは2度にわたってロシアに侵略されています。今後、核の放棄は国の安全を低下させると考えられるようにもなりかねません。
北朝鮮はミサイルや核開発と進めることで安全を確保しようとしています。ロシアも国防における核兵器の役割をより大きくしているようです。
伝統的秩序と新しい課題
ロシアのエネルギーに、ヨーロッパが依存している問題があります。中国に対して輸出市場としての重要性を低下させ、経済制裁を有効にさせなければならない課題もあるのです。
中国が台湾に対する動きを見せた場合には、アメリカとパートナーは対抗策練らなければなりません。地政学的にリスクのある状況では、アメリカの安全保障に依存していることを見直さなければならなくなります。
台湾が握っている半導体の製造技術をめぐって、世界経済にも深刻な衝撃を与えるかもしれません。
両国の対外的成功をを抑えつつ、対立を回避すれば、いずれ、両国の政治体制への圧力が作りだされ、40年間の封じ込めがソビエトを追い込んだように、望ましい変化が期待できます。
一方で、ワシントンは相手国政府の存続を脅かすような脅威を突きつけるべきではありません。モスクワや北京の強硬派を勢いづけるるだけです。
気候変動への問題は、地政学的に考えると、外交アプローチで改善されるような展開は望めないでしょう。外交よりも、技術的ブレークスルーによって達成される可能性のが高いのです。
未来を構築する
グローバルな課題が共存する危険な10年と今後を乗り切るには、世界を改変したい、無視したい、単独で動く、皆で動く、そんな両極端を避けた複雑な外交が必要になります。
アメリカのために働く政策決定者と外交官には多くのことが求められるでしょう。外交に関わる人の政治スキルと手腕に未来が左右されます。
ヒジャブとイランの反体制運動
監修
行き場のない怒り
22歳の女性マフサ・アミニが、いわゆる風紀警察で拘束中に死亡したことをきっかけに起きた講義運動は、大きな変革につながっていく可能性があります。
国の取り締まりに屈することなく、ヒジャブ(ヘッドスカーフ)を脱ぎました。逮捕させる危険性があっても、抵抗を続ける彼女たちの抗議行動は長期化すると思われます。
女性たちのヒジャブは、現体制に対する象徴的な武器となり、国際社会の支持を喚起するツールとなっているのです。
ヒジャブの政治的意味合い
イランは改革派大統領を誕生させる一方で、宗教的に取り仕切る構造は手付かずのまま残されてきました。
2021年8月に強硬派のライシが大統領に就任します。これは保守体制が望ましい結果になるように選挙を操作し、投票率が記録的な低さとなって穏健な保守派と改革派が一掃されたからです。
ライシは大統領就任前、社会への締め付けをある程度緩和すると約束していました。風紀警察を宗教的規範のためではなく、汚職追放に活用するのが1つです。女性はヒジャブ着用義務を緩和するのが1つでした。支持基盤を拡大しようとしていたのでしょう。
イランの女性の約70%が国による服装規定を厳密に守っていません。黒いチャイルを着た女性は少数派です。
ヒジャブ着用義務の支持派と反対派の衝突や、アミニの死など事件が相次いだ結果、ライシ政権が現体制と社会との緊張関係を無視できる状況ではなくなりました。
「女性が身なりについて決定権を持つことを否定するのは侮辱であり、この姿勢が社会のあらゆるレベルで女性に対する暴力を助長してきた」と主張して、逮捕されるを繰り返しています。
革命への序章
ヒジャブ着用は、イスラム国家であるイランのアイデンティティーでありシンボルでした。女性たちがヒジャブを脱ぐことを認めれば、聖職者による支配構造が弱体化し、最終的には崩壊する恐れがあります。
聖職者支配の終焉を向かえないために、服装規定を維持することは現体制にとって重要な問題なのです。
法改正はせずに、ヒジャブの着用義務を一部緩和する新しい社会政策を採用すれば、デモ抗議などの衝突を一時的に凍結できるかもしれません。
しかし、かつて反対派のシャーを中心に武力闘争を起こした時期に似ている警告がでています。マルクス主義者たちが踏襲した道です。アメリカの後押しを受けたシャーが暴力を抑えたものの、1979年のイラン革命の道筋が開かれました。
外圧と国内政治
イラン政治は選挙が力を失っています。国家と民衆で二分されている状況で、歴史ある国の内破を懸念する声もあるのです。
外部の国は、イスラム体制がデモ参加を取り締まる口実に利用されないようにするひつよがあります。特にアメリカは慎重になる必要があるのです。アメリカは現状でイランに追加制裁を課すことは控えるべきでしょう。
領土「併合」とプーチンの賭け
監修
領土併合の戦略的意図
ハルキウ州で停滞軍事敗北を喫したため、約30万人のマンパワーのギャップを埋めることをプーチンの領土併合戦略的では目的にしています。
ロシアは4つの州を併合するとして、作戦を強行しているのです。
集めた予備薬兵士を教育して前線に配備するには時間がかかるとされているが、ロシアは長期戦を想定しています。
そして、「ロシアの領土とみなす地域に対して、ウクライナが軍事圧力を強めれば、核を使用する」と脅し、欧米が兵器を大量にウクライナに供給するのを抑止する狙いもあるようです。
ロシア国内におけるプーチンの支持
学生を徴兵の対象にするのかという、極めて微妙なポイントにロシアは苦慮してきました。
最近ではロシア軍の撤退とウクライナ戦争での進展のなさから、強硬派の批判を緩和するために部分的ながらも徴兵の対象を広げなければならなくなっています。今後もこのバランス調整に苦しむことになるでしょう。
欧米は対応すべきか
今回の併合で外交の展望は更に暗くなりました。紛争は消耗戦となり、双方ともに多大な犠牲を出しています。ウクライナ経済は崩壊しかけ、ロシア経済は高いストレスを感じているようです。まだ、双方に余力があるため、ウクライナも軍事と経済支援がある限り、一歩も引かないでしょう。
ヨーロッパのロシアが供給するエネルギー事業を含め、アメリカとともに厳格なロシア体制を維持し、ウクライナの軍事的成功とロシアの決意を揺るがすことを期待しています。
双方が戦場で勝てると過信している現状では、外交は成立しません。
ロシアと欧米間についてプーチンはこう語っています。「欧米はロシアを破壊し、解体しようとしている」と述べているのです。
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